「鈴木友也の「米国スポーツビジネス最前線」」

マイナー球団経営の旨みを生かす秘密の“レシピ”

楽しいことは良いことだ(下)

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2010年9月9日(木)

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 前回のコラムでは、独立リーグ球団セントポール・セインツが実施している掟破りな球団経営の一端についてご紹介しました。

 「楽しいことは良いことだ」(Fun Is Good)

 セインツの破天荒なプロモーションはとにかく枚挙に暇がありません。面白いアイデアであれば野球に関係なくてもどんどん笑いのネタとして採用していきます。セインツは重複しないように毎試合違ったプロモーションを実施しているので、ご紹介していくときりがないのですが、例えば今シーズンはこんなバカバカしい? ゲームデー・プロモーション(試合毎にテーマを設定して盛り上げる)を実施しています。

・「最少観客動員試合(観客動員数ゼロ)の記録達成を祝う日」(試合が成立する5回の裏終了時まで、ファンは球場の外でBBQパーティーを実施して待つ)

・「マリオブラザーズの日(3月10日)」(3月10日の英語表記「MAR10」が「MARIO」に似ているというタダそれだけの理由)

・「水洗トイレ発明100周年を祝う日」

・「子供の日」(文字通り大人は入場禁止となる)

・「コンパス(羅針盤)の日」(飛行機型のコンパスを入場者先着2500名に無料配布)

 特に最後の「コンパスの日」は、教えてもらった私も笑いが止まらなかったのですが、昨年、球場近郊のミネアポリス・セントポール国際空港に到着する予定だったノースウエスト航空(当時)188便が交信を絶ち、空港を行き過ぎて240kmも飛行を続けた事件受け(飛行機は引き返して無事着陸した)、飛行機が行き先を間違わないようにとシャレをきかせたものです。

 配布されたコンパスの針は飛行機に、4つの方角表示は全て北西(=ノースウエスト)を示しており、行き過ぎた飛行機が旋回したウィスコンシン州の観光局がプロモーションに協賛するという徹底ぶりで、ファンの中から1名に抽選で飛行機が上空で折り返したとされる同州オー・クレア市までの旅行がプレゼントされたということです。シャレもここまで極めれば天晴れです。

 また、後述するようにセインツはこのノウハウを複数のグループ球団で横展開して収益性を最大化しているほか、他のマイナー球団や野球以外のスポーツ、ひいてはスポーツとは関係のない他業種の企業へのコンサルティングにも乗り出しています。つまり、「楽しいことは良いことだ」は単なるスポーツ球団のプロモーション技術という範疇を超え、1つの業界横断的な経営手法として確固たる地位を築いているのです。

 今回のコラムでは、球団のDNAとも言うべきこの「楽しいことは良いことだ」という哲学を持つセインツが目指している姿や、そのフィロソフィーが生まれた背景などについて皆さんにご紹介しようと思います。

ファンを楽しませるにはまず社員から

 スポーツはエンターテイメント産業でありサービス業ですから、ファンに球場に足を運んで頂く数時間を心から楽しんでもらい、最高の笑顔で帰途に着いて頂けるような体験を提供することがプロスポーツ球団としての使命ということになるでしょう。

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著者プロフィール

鈴木 友也 (すずき・ともや)

鈴木 友也 ニューヨークに拠点を置くスポーツマーケティング会社、「トランスインサイト」代表。1973年東京都生まれ。一橋大学法学部卒、アンダーセン・コンサルティング(現アクセンチュア)を経て、マサチューセッツ州立大学アムハースト校スポーツ経営大学院に留学(スポーツ経営学修士)。世界中に眠る現場の“知(インサイト)”を発掘し、日本のスポーツビジネス発展のために“提供(トランス)”する――。そんな理念で会社を設立し、日本のスポーツ組織、民間企業、メディア、自治体などに対してコンサルティング活動を展開している。ほかにも講演、執筆でも活躍中。著書に『スポーツ経営学ガイドBOOK』(ベースボール・マガジン社、2003年)、訳書に『60億を投資できるMLBのからくり』(同、2006年)がある。中央大学商学部非常勤講師(スポーツマネジメント)。ブログ『スポーツビジネス from NY』も好評連載中。Twitterのアカウントはtomoyasuzuki

(写真 丸本 孝彦)



このコラムについて

鈴木友也の「米国スポーツビジネス最前線」

「スポーツビジネス先進国」と言われる米国。その市場規模や人気などで日本を凌駕する。そこでは、日本にいては思いつきもしない先進経営が繰り広げられている。だが、進みすぎたが故の問題も内包する。米在住のスポーツマーケティングコンサルタントが、米国スポーツビジネスの現場を歩き、最新トレンドを解説していく。
果たして、米国は日本スポーツ界の「模範解答」となるのだろうか?

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