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40代を襲う“得体の知れない”不安

“不惑”ゆえに惑い、気が滅入っていく

2010年9月16日(木)

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 40代というのは、得体の知れない不安に苛まれる“お年頃”のようである。

 「自分探し」とは、ちょっと違う。言葉にすることさえ難しい、内面の奥深くでうごめく得体の知れない自身への問いかけである。

 「長年サラリーマンやってるヤツなら、多かれ少なかれ感じてると思うよ。自分が今の会社の社員ではなくなった時、世間は今と同じように自分を見てくれるだろうか? ってね」

 先日、久しぶりに会った学生時代の男性の友人はこう漏らした。

40代の友人が口にした疑問の真意

 自分はいかほどの人間なのか──?

 “いかほど”を、何で評価するかは難しいことではある。

 ・今と同じだけ稼ぐことができるのか?
 ・今と同じように周りは自分に接してくれるのか?
 といった基準になるのだろうか。

 いずれにしても、「○×会社の山田太郎です」と言えば、「それなり」の扱いを受けられる。社会的に評価されている会社に勤めているがゆえの不安。

 若い頃は疑問を抱くことなどなかったのに、40代になって自分を少しだけ客観的に見られるようになってくると、「○×会社の山田太郎」でしかいられない自分に、無性に気が滅入る。

 転職したいと思っているわけでもないのに、「自分が今の会社を辞めて、転職したら、同じだけ稼ぐことができるのだろうか?」などと考えてしまうのだ。

 こんな話を聞くと、「おいおい、今の世の中、明日をどうやって生きていこうかって人が溢れてんのに、何を甘えたこと言ってるんだ」と怒り出す人もいるだろう。

 だが、本人たちも、そう言われることは分かっている。だから他人に滅多に話すことはない……のだそうだ。

 冒頭の友人もこう言っていた。

 「格好悪いからあんまり言いたくないけど、キミみたいに組織で動いてないヤツらを見ると、かなわないなぁ、なんて思っちゃってさ。ついつい愚痴ってしまった……」

 これまでにも、組織で悩むサラリーマンについて書いたことがあった(関連記事:瀬戸際40代に忍びよる「思秋期の恐怖」“市場価値”を悟ったエリートの悲哀と希望)。これらはいずれも“社内”という限られた空間での話が中心だった。今回のケースは、会社の外、すなわち“社会”あるいは、“世間”における、自分への不安である。

 私自身、20代の時ではあるが、「スチュワーデスでない自分は、いかほどなのか」を確かめたくなって組織から離れた経験を持つ。20代のそれと、40代では内面的な部分で全く同列に扱うことは難しいが、「自分はいかほどの人間なのか?」と悩む気持ちはよく分かる。

 そこで、今回は多少手探りになりそうな気がしなくもないが、サラリーマンであるがゆえの“得体の知れない不安”について、考えてみようと思う。

出世レースが理由ではなかった

 まずは、できる限り正確に、得体の知れない不安の『得体』をくみ取っていただくために、以下に彼とのやりとりを再現する。

 「何というか、どうやったって勝てない気がするんだよなぁ」

 冒頭の友人はこう切り出した。彼は世界的に名が知られている大手電機メーカーに勤務していている。

 「勝てないって、誰に?」

 「つまり、これ一つで勝負してるヤツらに」

 そう言って、彼は右腕を左手でポンポンと叩いた。

 「ん? つまり、サラリーマンじゃなくて、フリーで稼いでる人ってこと?」

 「それもある」

 「“も”ってことは、それ以外は何?」

 「小さな会社でもバリバリやってるヤツとか……、うちの会社の中でも、『この人はどこに行っても同じようにやっていけるだろうなぁ』とか思えちゃう人とか……」

 「それってさ、会社で自分が思っていたほど出世できなかったから?」

 「う~ん、そうじゃないんだな。僕は別にラインのエリートじゃないから、そんなに出世レースで悩むことはないよ。確かに偉くなっていく同期を見ると、嫉妬することもある。でも、それは一過性のもので、大したことじゃないんだよ。だって、出世ってそんなにしたい? そうじゃないでしょ」

 「じゃ、会社辞めて転職したいって思ってるの?」

 彼は“出世”という言葉には反応しなかったが、“転職”という言葉は何か突き刺さるものがあるのか、考え込んだ。

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「40代を襲う“得体の知れない”不安」の著者

河合 薫

河合 薫(かわい・かおる)

健康社会学者(Ph.D.)

東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。産業ストレスやポジティブ心理学など、健康生成論の視点から調査研究を進めている。働く人々のインタビューをフィールドワークとし、その数は600人に迫る。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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