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メガシティだけを見ていてはいけない

新興国で求められる「中規模・小規模都市戦略」

2010年9月17日(金)

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「経営レンズ箱」はこちら(2006年6月29日~2009年7月31日まで連載)

 以前、映画「ALWAYS 三丁目の夕日」について少し触れたことがある(「白黒テレビなんて見たことがない20代、分かり合うカギはどこに)。最近は、このDVDを企業の若手人材が新興国市場を理解するための参考資料としてお勧めする機会が増えている。

 ご承知のように、この映画が描いているのは高度成長前期の日本の姿だ。東京タワーができ、オリンピックが東京で開かれて、日本が先進国に一歩近づいてきたことを、国民の多くが信じることができた時代。家の中には、少し前まで存在しなかった洗濯機、冷蔵庫、そしてテレビがやってきて、物質的な「豊さ」を身を持って感じることができた時代。私自身やもう少し先輩の世代にとっては、こういう時代の一種の「熱気」は、今でもありありと思い浮かべることができる。

中流が形成される社会の「雰囲気」

 教育と努力を通じて、昨日より今日、今日より明日がよくなることを、素直に信じられる時代感覚、といってもよいだろう。「三丁目の夕日」の中で、ビビッドに表現されている、この「熱気」あるいは「時代感覚」。これは、現在、経済成長とともに中流層が形成されている多くの新興国で見受けられるものだ。

 一方、これらは、バブル期、あるいはバブル崩壊後に、物心ついた層にとっては、なかなか想像しがたい「感覚」のようでもある。「失われた20年」という経済状況の日本が、自らの実体験の中核なのだから、当然かもしれない。

 これから企業をリードしていく彼らに、最重要市場のひとつである新興国とその消費者について理解してもらうために、まず「三丁目の夕日」を見てもらい、中流が形成されていく社会の「雰囲気」を感じてもらう。そのうえで、様々な市場データや経済指標に触れ、事業戦略を考えてもらうというステップを踏む。これによって、(疑似体験ではあっても)肌感覚に近いものが生まれ、それをベースにすることで、生き生きとした議論ができるようになるのだ。

 さて、「三丁目の夕日」の主人公ろくちゃんのように、日本の高度成長期には、膨大な数の人々が都市へ移動してきた。中国をはじめとして工業社会化が進む多くの新興国では、今も、そしてこれから当面の間、同様の都市への「民族大移動」が続く。日本で起こったこととの違いは、中国やインドといった膨大な人口を擁する国を含め、世界中のあちこちで「民族大移動」が起こるため、そのインパクトがケタ違いであることだ。

 今週前半、中国・天津で行われた世界経済フォーラムの夏季ダボス会議の場で、ボストン コンサルティング グループの仲間が、“Emerging-Market Cities”(新興国「都市」群)についてのレポートを公表した。この内容に従って、このインパクトを少し見ていこう。

 まずは、規模そのものについて。現在でも、26億人もの人々が新興国の都市に居住している(地球の全人口の約37%)。これが、2030年までに、さらに13億人増えるものと予想されている。現在の中国、あるいはインド1国分に相当する人数が、新興国都市に移住する、あるいは、そこで新たに生まれる、ということになる(この間、先進国の都市居住者は1億人しか増えない)。

 このマグニチュードでの新興国の都市化は、都市住民、残された地方住民双方にとって、経済、文化、社会全般に大きな変化をもたらす。特に、新興国都市の新住民の多くは、同時に中流階級の仲間入りを果たすため、消費市場としての新興国都市群の成長とそのビジネスへの影響は、大きなものになる。試算によれば、2015年の段階でも、世界のGDP(国内総生産)成長に占める新興国都市群の割合は、67%に達するとされる。

 さらに、新興国都市群の住宅需要、インフラ需要は、巨大なビジネスチャンスをもたらす。新たに13億人が住居を求め、水道、電気を必要とし、さらに彼らの交通手段を提供することも必要となるわけだ。これも現段階での試算だが、2010年から2030年までの間に、新興国都市群での住宅投資は、累計14兆ドル。水道、電気、交通インフラへの投資は、20兆ドル強にも上ると推定されている。

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「メガシティだけを見ていてはいけない」の著者

御立 尚資

御立 尚資(みたち・たかし)

BCGシニア・パートナー

京都大学文学部卒。米ハーバード大学経営学修士。日本航空を経て現在に至る。事業戦略、グループ経営、M&Aなどの戦略策定・実行支援、経営人材育成、組織能力向上などのプロジェクトを手がける。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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