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何が日本の若者を俯かせてしまうのか?

――ブエノスアイレスから見た不思議の国・日本

2010年9月28日(火)

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 仕事でアルゼンチン、ブエノスアイレスを訪れました。南米大陸は私にとって未踏の大地で、今まで一度もその土を踏んだことがなかったのです。

 初めて知るラテンアメリカの現実は、いろいろな意味でたいへん興味深いものでした。

 現地では、小さな学会で数回話したのと、アルゼンチン国立コロンブス劇場(テアトロ・コロン)での演奏の研究録音、ブエノスアイレス大司教座聖堂カテドラール・メトロポリターナでの同様の演奏・録音など行いました。

 たくさんの学生たちと一緒の仕事で、とても元気づけられました。

なぜか元気なラテンの若者

 何が違うといって、現地の若者たちは日本とやる気が全然違うのです。

 まあ、僕が一緒に演奏した学生たちがたまたま意欲に満ち溢れていただけかもしれません。遠来の僕らが珍しかったというのもあるでしょう。

 でも、普段から付き合っている先生たちとの人間関係を見ていても、日本のそれとは随分と違っているのが印象的でした。

 今まで関わってきた日本でも欧州でも北米でも考えられない元気なノリで、たいへんにびっくりしました。

 何でも自分から考え、自分で行動し、質問があれば積極的に突っ込んでくる。僕の言いたいことの本質をしっかりつかもうとしてくれる。こういう学生たちと一緒に仕事できれば本当に幸せです。

 また、食事など共にする中で、学生たちの身の上や生活の実態を聞いてからは、いろいろ深く考えざるを得ない思いを持ちました。というのも、彼らは日本の標準から見て、決して恵まれた環境にいるとは思えない。しかし明らかに、彼らのほうが多くの日本人学生たちより「幸せ」を実感しているように思われたからなのです。

自分の幸せを実感できない日本の若者

 これは帰りの飛行機の中でのことでしたが、たまたま日本からアルゼンチンに移民された方が隣の席になりました。1963(昭和38)年、アルゼンチンに行かれたとのことで、現地での様々なご苦労の体験を伺ったのですが、お子さんが日本におられ、東京大学の大学院に進まれたということで、少し現実的なご相談にも乗ることができました。

 アルゼンチンや北米の大学で学ばれたお子さんたちには、日本の大学のシステムは当初、全く理解できなかったそうです。

 なぜ、入学試験にこんなにたくさん、細かな条件がつくのか? 普通どこの国でも、入試は極めて簡単なもので、大学の中で勉強し始めてから、ぎゅうぎゅうと絞られて厳しいセレクションで上に進ませてもらえないのがグローバル・スタンダードなわけですが、入試がやたら細かく、たいへん当惑されたとのこと。そこで

 「日本の大学、大学院というのは、入試を一見厳しそうにしておいて、中に入ってからはまともなことはほとんど教えないケースが少なくないんですよ」

 とお話すると、本当にびっくりしておられました。こう書くと読者から「そんなことはない!」という声を頂くかもしれませんから、一応僕の書いている根拠を記しておきますと、例えば東大教養学部のようなところで、必修の授業を担当する時、ほかの先生と比較して著しく熱のこもった教育を実施しようとすると「周りの影響もありますから・・・」とか「ほかの先生が迷惑されますから・・・」といった言葉で、暗に「手を抜け」という圧力をかけられる実態が存在しますので、ここは経験者が語っているもの、とご理解ください。

 日本の大学では「教育」でいくら努力しても、それを教師の評価に反映するシステムがありません。そのため、みんな「研究」サイドで汗を流す必要があり、建前として「みんな同じ内容を学ぶ」はずの必修で、誰か一人だけ一生懸命な先生がいると「あの・・・迷惑なんですけど・・・」とやられる現実があります。学生も父兄の皆さんも知っていて損にならない話と思います。

 今お話ししたのは「大学教養課程」のことで、学部の専門はまた状況が違います。これはこれでまた別の機会にご紹介するとして、飛行機の中でお話したのは「大学院」のことです。

 どこかの雑誌で「学歴ロンダリング」という話が取り上げられているのだそうで、そういう表現は知りませんでしたが「はあぁん」と納得が行く気がしました。

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