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“転地”で失敗しないための3つの法則

改めて噛みしめるべきマイケル・ポーターの教え

2010年9月28日(火)

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 攻めるどころか、守ることに汲々としている──。

 日本企業の現状を見ると、こうした思いを抱かざるを得ない。経済のグローバル化が進み、有望な市場が新興国で次々と立ち上がっている。チャンスが広がっているはずなのに、新興国で大きく業績を伸ばしている日本企業の話はほとんど聞かない。

 もっとも無理からぬ面もある。新興国に市場ができるということはチャンスである半面、新興国のプレーヤーも参入してきて、競争が激しくなるというデメリットもあるからだ。

 日本企業同士の比較的秩序立った競争とは異なり、新たなプレーヤーたちは奇襲を仕掛けてくる。時には「反則技」と言いたくなるような手に打って出てくることもある。単にプレーヤーの数が増えるだけでなく、競争の中身も大きく変わる。そこで勝ち抜くことは至難の業だ。

儲けられなくなった日本企業に最も必要なもの

 このコラムの初回で、会社には寿命はないが、事業には寿命があると指摘した。そして事業に寿命がある理由についてこう説明した。

 「ある事業が儲かっていることが明らかになると『自分も分け前にあずかりたい』と思う人が参入してくる。事業を始めて数年は競争相手も限られていたが、30年もたてばプレーヤーの数は膨れ上がり、まさに『猫も杓子も』といった状況が生まれる」

 「必然的に起きるのは、際限のない価格競争である。事業そのものがなくなるわけではなく、市場も消滅せずに残っている。だが、そこで店を開いて商売を続けても、一向に儲からない」

 このようにプレーヤーの数が膨れ上がって儲からないという状況が、グローバル化によって国境を越えて広がっている。そう見ることもできるだろう。

 こう考えると、日本企業はある能力を獲得しないと、新たな発展のステージに入っていくことはできないという思いが一段と強まる。それは、主力事業の入れ替え、私が編み出した言葉を使えば、事業立地を更新する能力だ。

 競争相手がまだほとんどいなくて大きな利益を上げることができる。そんな“手付かず”の新しい事業立地を開拓する。私が転地と呼ぶそうした取り組みが今、主力事業で儲けられなくなった日本企業に最も必要とされているものである。

 そこで「日本企業改造論」と題したこのコラムでも転地の必要性に焦点を当て、転地を実際に成し遂げた人物の共通点を抽出し、転地を任せるべき人の要件を探ってきた。転地の成功例を分析すると、どういう人に委ねるかが成功の最大のカギになっているからである。

 この点については前回までで論じ尽くしたと思う。今回は、論点を「誰が転地するのか」から「どこへ転地するのか」にシフトし、転地先の事業をどのように選べばよいのかについて論じてみよう。

転地の第1の法則は、“人に迷惑をかけるな”

 ここで改めて断っておくが、転地のパターンは1つだけではない。過去の成功例を見ても、実にいろいろなパターンがある。その中から、典型的な成功パターンを分類して、類型化することは無意味だ。

 だが、過去の失敗例などに基づいて、「これをしたら失敗するから、やってはいけない」という経験則を示すことには意味がある。今回は、私が1000社を超える日本企業の戦略を研究した結果から導き出した3つの法則を提示する。

 第1の法則は、人に迷惑をかけるなだ。具体的には、既に市場が確立されている事業に後発で参入するのは得策ではないことを指す。過去の事例に照らしてみても、他人の足跡がほとんどついていない新しい事業立地を開拓した方がいい。

 実際、このコラムで既に取り上げた転地の成功例も、新たな事業立地を切り開いている。

 例えばセブン&アイ・ホールディングス。会長兼CEO(最高経営責任者)の鈴木敏文氏は、日本には存在していなかったコンビニエンスストアという業態を米国から持ち込み、日本流に進化させた。

 コンビニエンスストアを一言で言えば、いわゆるよろずやである。それ自体は昔からあったが、統一のフォーマットで全国展開した点に“創造”があった。明らかに新しい事業立地をクリエートした事例と言える。

 一方、生地の染色加工業者から自動車内装材のメーカーへと変貌を遂げたセーレン。そのきっかけは、現社長の川田達男氏が主導した自動車シート用布地の製品化だった。

 従来は塩化ビニール製のシートが主流だったが、それを布製に完全に置き換えた。これは、クリエーションではなくリプレースメント(代替)によって新しい事業立地を開拓した事例と言えよう。

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「“転地”で失敗しないための3つの法則」の著者

三品 和広

三品 和広(みしな・かずひろ)

神戸大学大学院経営学研究科教授

専攻は経営戦略・経営者論。1989年米ハーバード大学文理大学院企業経済学博士課程修了、同大学経営大学院助教授に就任。北陸先端科学技術大学院大学助教授などを経て、2004年から現職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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