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漂流し続ける“氷河期”世代の就職難民

「遠距離付き合い」が彼らに機会をもたらす

2010年9月30日(木)

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 「何が一番怖いかって……、いつか“給料泥棒”と言われるんじゃないかってことなんです。毎日、暇で仕事が全くない状態が続いています」

 これは就職氷河期と呼ばれた2003年に、新卒社会人を対象に行ったインタビュー調査で、某大手旅行代理店に就職した入社3年目の男性が語っていたことだ。

 この男性は入社してすぐに新規プロジェクトのメンバーに選ばれた。厳しい就職戦線を勝ち抜いて入社した彼に、企業も期待したのだろう。

 ところが、である。何と発足してから1カ月後にプロジェクトはあえなく解散となった。

 2003年といえばイラク戦争が勃発し、SARS(重症急性呼吸器症候群)が流行した年だ。そのあおりを受けた旅行業界は一段と厳しい状況に追い込まれる。彼の勤務先である大手旅行代理店も直撃を免れることはできず、プロジェクトはおろか、通常の勤務でさえも時間を持て余す状態になってしまった。

 「最初は、先輩たちに『プロジェクトが再開した時のために、しっかり充電しておけよ』と言われたこともあって、同じように暇になっちゃった同期3人とIT(情報技術)の知識を深めたり、英語を勉強したり、仕事に役立ちそうなスキルを高めるべく勉強していたんです」

 「でも、どれだけ勉強したところで、それを社内で活かす機会がない。もちろん電話取りやファイリングや雑用も率先してやりました。でも、その仕事をメーンとしているアルバイトもいるから、徐々に邪魔者扱いされるようになって。そうこうするうちに、僕に対する視線も厳しくなってきたんです」

 「暇なのは、僕に仕事を自ら作り出す能力がないからだ。そう陰口を言われました。『空いた時間に勉強でもして、資格でも取って、他社へ行ってくれると助かる』といったような話を耳にすることもありました。きっと『お給料もらって勉強やって、いい御身分だ』と思われていたんでしょう」

 「でも、このご時世です。他の会社に行けるかといったら、無理だと思うんです。だから針のむしろでも耐えるしかない。そう思うんですけど、だんだんと『自分たちに期待されていることは何なのか? いったい何のために会社にいるんだろう』と思う気持ちが強くなってきて、どうすることもできない自分がイヤで仕方がありません。でも絶対に自分の今の状況、学生時代の仲間には言えません。仕事がなくて干されているなんて口にした途端、“負け組”になっちゃいますから」

 インタビューでこう語った男性はその1年後、会社を辞めた。

 「頑張りが足りない」「視野が狭すぎる」「甘えている」……。そんな自己責任論に翻弄され、彼は自信と存在意義を失い、会社に行き続けることができなくなってしまったのだ。

3年以内は新卒って?

 「給料もらえてるんだから、いいじゃないか」
 「そのうちどうせコキ使われるから、今のうちに好きなことやっておけばいいよ」

 慰めてるんだか何だか分からないことを言って、お気楽バブル世代の先輩社員は引き止めたそうだ。

 でも、彼は次の当てもないまま辞めた。それしか自らの存在意義を確認する術が見当たらなかったのだろう。

 そして、彼と同じように暇を持て余していた同期も、会社を休みがちになり、ついには家に引きこもるようになったという。

 あれから7年。彼らはいったいどうしているのだろうか。

 今回、彼らのことを取り上げようと考えたのは、先日、政府の「新卒者雇用・特命チーム」(リーダー:寺田学首相補佐官)が打ち出した政府支援策に盛り込まれた「卒業後、3年以内は新卒」という文言に違和感を覚えたからである。

 別に新卒採用枠を広げること自体に異議を唱えるつもりはない。だが、「3年」という期限は企業にはびこる新卒至上主義を打破する施策でもなければ、「働きたくても雇ってもらえない」人を支援するものでもない。

 3年という期限を設けたってことは、3年以内に就職できなければ、冒頭の男性が周りから浴びせられたような冷ややかな視線にさらされる可能性が高い。

 「努力が足りないんじゃないか」「甘えてるんじゃないか」「だって3年に広げたんだからさ」といった具合に。

 就職氷河期に入社を勝ち取りながらも、自分の存在意義を見失うほど彼らを追い詰めた“自己責任論”による被害者が、新たに輩出されそうな気がしてならない。

コメント29件コメント/レビュー

自己責任という言葉はあくまでも「自分」が「自分」に向けて言う言葉です。「自分」が「他人」に言う言葉ではないし、「他人」が「自分」に言われる言葉でもありません。それらは他者に自分の責任を押し付けているすぎません。「自己責任」と「他者」に向けて言いたがる人は、自分の立場を正当化したいか、本来自分の責任範囲にあるものを他人に押し付けたいかのいずれの隠させた欲求、醜い欲求を持っています。使うときは自分の性根が出てきます。注意しましょう。(2010/10/03)

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「漂流し続ける“氷河期”世代の就職難民」の著者

河合 薫

河合 薫(かわい・かおる)

健康社会学者(Ph.D.)

東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。産業ストレスやポジティブ心理学など、健康生成論の視点から調査研究を進めている。働く人々のインタビューをフィールドワークとし、その数は600人に迫る。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

自己責任という言葉はあくまでも「自分」が「自分」に向けて言う言葉です。「自分」が「他人」に言う言葉ではないし、「他人」が「自分」に言われる言葉でもありません。それらは他者に自分の責任を押し付けているすぎません。「自己責任」と「他者」に向けて言いたがる人は、自分の立場を正当化したいか、本来自分の責任範囲にあるものを他人に押し付けたいかのいずれの隠させた欲求、醜い欲求を持っています。使うときは自分の性根が出てきます。注意しましょう。(2010/10/03)

>あれから7年。彼らはいったいどうしているのだろうか。7年経った現状の彼らが何をしているか、をレポートしていただけると、説得力が増す気がします。いかがでしょうか。(2010/10/01)

安全なところに身を置いている人は、自己責任とか、簡単に就職が決まる人はいる、と簡単に言うのでしょうね。勝ち組さまの発想なのかもしれません。(2010/10/01)

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