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「出稼ぎ」から「移住」が示唆する中国の変化

働き手のメンタリティは企業や社会にどんな影響をもたらすか

2010年10月1日(金)

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「経営レンズ箱」はこちら(2006年6月29日~2009年7月31日まで連載)

 さて、前回(「メガシティだけを見ていてはいけない」)に続いて、“中国×「ALWAYS三丁目の夕日」”的な話。

 先般の香港での会議の際、様々な話を伺った中で、最も興味深かったのは、本土政府とも非常に近い、ある大実業家の話だった。

 「将来、振り返ってみれば、今年起こったフォックスコンの事件が、中国にとって“時代の変換点”となったということが、はっきり分かるだろう」

 これが、彼のメインの主張だ。

 つい先だってまで、何度も大きく報道されていたので、ご記憶の方も多いだろうが、世界最大級のEMS(電子機器などの受託生産会社)であるフォックスコンの深セン工場で、労働者の自殺が相次いだ。同時期に多発した外資系企業の工場でのストライキと相まって、賃金の大幅上昇のきっかけとなったとも言われている。

出稼ぎに来て、都市に残る人が増えた

 私なりに、彼の主張を解釈すると、この事件の重要性は、賃金の上昇という点に留まらない。中国の経済成長モデル、それを支える雇用モデル、さらにその裏側にある社会システム、これらすべてが大きく変わり始めるのを象徴的に示している事件である。そして、その最大の原動力は、働き手自身のメンタリティの変化にある、ということのようだ。

 ここ10年以上にわたって中国の高い経済成長を牽引してきたのは、沿海部での工業の発展だ。特に、受託生産のような「組み立て加工業」は、低廉な人件費に支えられて、高い競争力を維持してきた。この経済成長モデルが、内陸部から沿海部への大量の出稼ぎ労働者を雇用することで成り立ってきたこともよく知られている。

 この「出稼ぎ型」雇用モデルと、それを支えてきた労働者のメンタリティに、じわじわと、しかし不可逆的な変化が生じている。もともとの典型的なパターンは、内陸部出身の若年女性労働者が沿海部の工場で3年なり6年なりの雇用契約期間中は出稼ぎ労働者として働くというもの。この間、彼女たちは、企業の寮に住み、賃金の一部を仕送りし、かつ自分のために一定程度蓄えていく。

 雇用期間中は、(香港実業家氏によれば、フォックスコンは、労働条件、寮の居住条件とも、多くの中小企業の工場と比べると、かなり良いレベルを維持してきていたらしいが、)寮と工場の往復がほとんどの、我々から見ると、相当きつい生活を強いられることになる。あくまで、一定期間だけ合宿生活を送り、その後、故郷に帰って結婚し家庭を持つというのが基本モデルであり、その背景には「出稼ぎで家族を支え、自分の将来にも備える」という内陸部出身者のメンタリティがあった。

 しかし、ここ何年かの間に、彼女たちの多くが、それ以前の世代と異なった感覚を持つようになってきたという。

 まず、雇用期間中も、「寮での合宿」生活だけではなく、外の世界とも関わりを持つことが普通のことになってきた。「家族と自分の将来のための、人生の一定期間の我慢」というメンタリティではなく、「人生のどの期間においても、いつも自分らしい人生を送りたい。そのためには、『社会とつながる』のは当たり前」ということだろうか。ネットを通じて、外部とのつながりを維持し、広げていく。リアルの世界でも、出稼ぎ先の地域で、会社の外で友人を作る。可能ならば寮から出て、自活することを目指す。

 さらに、当初の雇用契約期間が終わった後も、都市部に残ることを選択する人たちも増えてくる。「家族と自分のための出稼ぎ」だったものが、「いつでもどこでも自己実現が大事」であり「都市への(場合によってはパーマネントな)移住」という色彩に変わってきているということだ。

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「「出稼ぎ」から「移住」が示唆する中国の変化」の著者

御立 尚資

御立 尚資(みたち・たかし)

BCGシニア・パートナー

京都大学文学部卒。米ハーバード大学経営学修士。日本航空を経て現在に至る。事業戦略、グループ経営、M&Aなどの戦略策定・実行支援、経営人材育成、組織能力向上などのプロジェクトを手がける。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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