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看板を失うということ

  • 斉藤 由多加

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2010年9月30日(木)

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 企業を辞めて自分で独立するということは、これまで仕事のよりどころとしてきた会社という「看板を失う」ということです。じゃ、この「看板を失う」ということ、誰もが口にするフレーズなもんだから、なんとなく分かった気持ちになってしまいがちだけど、具体的にどういうことが起きるのだろうか?

今日は意外に知られていないそのあたりをつたない体験談を交えてご紹介しようと思う。

取引先において

 水や空気のように当たり前に存在しすぎていたから、失うまでその貴重さを実感できてない…それが自分が籍をおいている大企業の看板の力、というものだ。

 独立してからというもの、それまで仲良くつき合ってくれていた取引先の態度が急に横柄なものへと豹変したり、あるいは態度が横柄になっていなくても、なぜかそう見えてしまったり、あるいはいくらでも値引いてくれたなじみの業者のサービス度がぐんと下がったり、クライアントの仕事規模がいきなり小さくなったり、融通がぜんぜん効かなくなったり…。夢から覚めた浦島太郎のように、周囲の対応が急に激変する、それが「看板を失った」ときにおきる現象です。

 「看板力」というのはサービスの「信用度」とか「認知度」ととらえてしまいがちだが、実際はもっと切実なもの。簡単にいうと「取引しておくといいことありそうな気配感」とか「敵に回したらどれだけ損をするか」みたいな話です。

 大手広告代理店の下請けで担当者の思惑に振り回されて泣いているプロダクションは多々あれど、じゃ裁判でシロクロはっきりさせようじゃないか、という人は現れないわけで、その理由はこれ。大手の広告代理店を相手どって裁判をしたら、仮にその件では勝訴になったとしても、ほかの仕事で総スカンくらうことになる…それではつぶれちまう、というのが現実的な日本の現状です。

 仕事をたくさん創出している企業体というのは、「敵に回したら悪影響が大きそうだ」という表現もできるし、同時に「取引しておくと後々いい事がありそうだ」という表現も表裏一体で、されるわけ。この度合いが「看板力」の正体だと痛感しているんだな。

 この看板力ってのを如実に反映するのはクライアントとは限らない。銀行からオフィスの大家さんに至るまで、すべての取引先はみな、この「いいことありそうか」の度合いを計って、いろいろな利率を決めてくる。

 オフィスを借りるにも、住宅ローンを申し込むにも、諸条件の利率はこの看板力があるときとないときではおどろくほど違う。その「分の悪さ」にびっくりするのが、「看板を失ったこと」のリアルなショックなのであります。

招かれなくなる

 もう少し具体的に言いますと、看板を失ったことを実感する現象に、「招かれなくなる」というのがあります。招かれる場は、業界の賀詞交換会からカンファレンスのパネリスト、はては結構披露宴に至るまでさまざまですが、要するに「晴れの場」ほど声がかからなくなる。というのも、こういう場は、本当はあなたを呼びたいんじゃない、その後ろにある「看板」を呼びたいというのがおそらく主催者の正直なところと思われ、その傾きの落差にいちいち落ち込んでいたらやっていけないくらいリアルに出てくる。

 大看板の下でのうのうとやってきた輩が、そういう切ない状況に身を置くわけですから、「いつかみてろよ」みたいな、コンプレックスをバネにできる人、ないしはそういうプライドなどもともと持ってない人、が、独立には向いていると思います。もしあなたが前者の場合、「はやく有名になりたい」と思うわけです。世の中面白いもので、そういう経営者には自尊心をくすぐるさまざまなハプニングが降り掛かってくることになります。

有名になりたいという欲求

 世の中には「謎の取材」ってのがあります。例えば、「○×データバンク」という調査企業からの連絡。「○×データバンク」というのも一つの看板です。この会社の調査員の方から「クライアント企業から調査依頼が入りまして」という電話がかかってくることからすべては始まる。中小企業の社長からすると「そのクライアントさんとはいったいどこのどなたですか?」と聞きたくなるわけですが、調査員はいっさい教えてくれない。知らされてないのでしょう。でないとうっかりしゃべっちゃうことも発生するでしょうからね。

 なもんだから、社長としてはますます「どちらの企業さんがうちの会社なんぞに興味を持ってくれてるんだろ?」と、ドキドキものなわです。「大型発注か? 出資案件か? はたまた企業買収か?」なんてね。ですから、調査員の方がお見えになるときは、独立間もない社長は、まるで就職活動のときのようにスーツを着て出社したり、見た目のいい応接室があればそこにお通しして、その調査担当者にお茶をしっかりとお出しして…などという、VIP対応をしてしまうわけですよ。

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