「すべては倉庫番が知っている」

ビジネスモデルは“後付け”に過ぎない

大事なのは、設計図よりも、完成度

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2010年10月5日(火)

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 破綻した日本振興銀行の前会長で銀行法違反事件で起訴された木村剛氏の『戦略経営の発想法』(2004年、ダイヤモンド社)という著書が、筆者の本棚に収められている。

 本の見返しには、木村氏のサインと「有志創路」という文字が大きく記されている。2004年にインタビューした時にもらったものだ。

 金融のスペシャリストで竹中平蔵元金融・経済財政相のブレーンとして知られた木村氏と、筆者の発行する物流専門誌「月刊ロジスティクス・ビジネス(LOGI-BIZ)」を結びつけたテーマは「ビジネスモデル」だった。

 同著の中で木村氏はビジネスモデルという言葉がいたずらに持て囃され、独り歩きしている世間の風潮を痛烈に批判した。

 「経営コンサルタントや起業家、投資ファンドの戦略家たちが、プレゼンテーションソフトを使って得意気に披露するビジネスモデルは、そのほとんどが机上の空論だ」

 「ビジネスモデルが成功の鍵だとする“常識”も真っ赤な嘘で、実際に経営を成功に導くことができるのは、経営者の執念や使命感などの『はらわた』だ」

 そんな木村氏の小気味よい言説に、零細企業経営者の一人でもある筆者は素直に共感し、そのインタビュー記事を好意的に紹介した・・・。

ビジネスモデルを真似るのは簡単

 SCM(サプライ・チェーン・マネジメント)の実務とは、ビジネスモデルを設計し、それを運用することだと言っていい。

 そしてSCMのうち、モノの動きに焦点を当てた管理がロジスティクスであり、ロジスティクスは物流の6つの諸活動(包装、保管、荷役、輸配送、流通加工、情報)によって構成されている。

 従って物流活動から見ると、ビジネスモデルは前提条件であり、またビジネスモデルはその裏付けとして物流をはじめとしたオペレーションを必要とする、という関係にある。

 この裏付けを欠いたがために、考え抜いたビジネスモデルや理論的には正しいはずの戦略が、無惨な結果に終わるケースをこれまで数多く見聞きしてきた。

 世界中の産業界から賞賛される「トヨタ生産方式」が、日系の他の自動車メーカーには導入されていない。日産自動車をはじめライバルメーカーも「かんばん」の導入を試みたことはあったが、結果的には弊害のほうが大きかった。

 1990年代には世界中のパソコンメーカーが「デルモデル」を後追いした。直販方式で急成長したデルの成功を目の当たりにして、ライバルメーカーもこぞって同じやり方を踏襲した。しかし、これもまた、どこも成功しなかった。

 ビジネスモデルを真似るのは簡単だ。デルと同様の直接販売や受注生産方式に踏み切ることは、その気になれば誰でもできる。部品在庫の管理と所有をサプライヤーに移管する「VMI(Vendor Managed Inventory=ベンダー・マネージド・インベントリー)」も大手メーカーであればゴリ押しが効く。

 ところが、それまで直販以外の販売方法を取ってきたメーカーが、デルモデルの要素技術を導入して直販を始めると、途端にコンフリクトを起こしてしまう。

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著者プロフィール

大矢 昌浩(おおや・まさひろ)氏

1964年、東京生まれ。日本大学芸術学部大学院修了。日経BP社発行「日経ロジスティクス」記者、流通専門誌編集長を経て99年、ライノス・パブリケーションズを設立。2001年4月に「月刊ロジスティクス・ビジネス(LOGI-BIZ)」創刊。同誌の編集発行人として現在に至る。2004年4月〜2007年3月、多摩大学大学院客員教授を兼務。



このコラムについて

すべては倉庫番が知っている

原材料の調達から工場での加工、店舗までの配送と、企業や産業のあらゆる活動を“裏方”として支える物流。ここからは、表層からはうかがい知れない経営や経済の動きが浮かび上がってくる。そこから見えてくる課題は、単なる物流改善に伴うコスト削減にとどまらず、企業に構造改革を促すテーマである。10年以上も物流業界を取材してきた筆者が、“倉庫番”だから知り得る日本企業の実像をリポートする。

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