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「女は家庭」、中山大臣政務官の不適切発言で考えた男女の“距離”の今

男も女も生きにくい“男社会”はどこへ行く

2010年10月7日(木)

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 また、やってしまった。どうして政治家というのは、場をわきまえるってことを知らないのだろうか。

 10月1日、アジア太平洋経済協力会議(APEC)中小企業大臣会合の関連会議として「女性起業家サミット」が岐阜市で開かれた。その昼食会でのことだ。

 「日本の女性は家庭で働くことを喜びとしている。日本女性が家庭で働くことは日本の文化だ」という発言が飛び出した。

 発言の主は経済産業大臣政務官の中山義活氏。さらに同氏は「日本の奥さんは力がある。デパートに行けば、初めに子どものもの、次に奥さんのもの、その次がペットのもの。4番目にご主人のものを買う」などと続けたという。

 当然ながら会場ではブーイングがわき起こり、ネットでは女性たちの批判が集中した。

 全く……。今どきの小学生だって、あの場でそんなことは言わないだろう。

 だって、会議のネーミングを見れば、その目的は一目瞭然。実際、この国際会議には、21カ国から150人の女性起業家たちが、“女性”の社会的地位の向上のために参加した。

 「女は家庭、男は仕事」といった“性差別”からの解放を目指す女性たちの前で、しかも、ホスト国政府の公式なスピーチの中で、「女は家庭」と言いきったのだから、よほどの勇気の持ち主か、それともよほどの○○か──。あるいは有能な女性たちを目の前にして、「男たちのテリトリー(領域)をあまり侵食しないでくれ~」と防衛本能が働いたとでもいうのか。

 いずれにしても、「女は家庭でしっかりやってよ。仕事はさ、男に任せておけばいいんだよ」というのが、彼の本音であることは間違いない。

 だが、実はこれ、中山氏だけでなく、多くの男性たちの“本音”なのではあるまいか。

デキる女性に脅威を感じる男性たち

 「最近は男性よりも女性の方が優秀なんだよ。一昔前までは、ある特定の業務に限定されていたんだけど、最近は何をやらせても女性の方が優秀」

 「優秀な人を昇進させることを徹底したら、女性の方が圧倒的に多く昇進してしまった。さすがに役員や部長はまだ男性だけだが、課長は数年前までは1割程度しか女性がいなかったのに、今じゃ女性が4割」

 「気がついたら、小学校の校長の半数以上が女性。現場もほとんどが女性で、小学校には力のある男性教員がもっといてほしいんだけど、ダメだね。採用試験を受ける人数は女性の方が多いし、合格する確率も女性の方が高い。女性の方が優秀なんだよね」

 「だいたい男の方が弱いね。女性はね、どんな手を使ってでも期限内にしっかり仕上げてくる。ところが、男性はできなくなると、会社に来なくなっちゃうんだよ」

 これらはこの数カ月で耳にした言葉である。

 “女性の強さ”に感動しているのか、“男性のか弱さ”を嘆いているのかよく分からないが、女性たちへの敗北感をにじませたような意見を耳にすることがめっきりと増えた。

“逆差別”を訴える男性の声も

 さらに「女性の方が恵まれている」「女ばかりを優遇するのは逆差別だ!」と反発する男性たちを紹介する記事を目にするようにもなった。

 ただし、“逆差別”に関していえば、私自身はまだ、「逆差別だ!」と怒り心頭の男性に出会ったことない。だから、いつものメディアの先走りじゃないかと思っている。

 「女の人はいいよなぁ~。産休や育児休暇があったり、女性専用電車があったり、女性限定割引みたいなのがあるから~。オヤジ割引なんてないし、育児休暇を男だって取れるといったって、それは一部の恵まれた大企業や公務員の話でしょ」などといった愚痴を聞くことはある。

 でも、それはあくまでも愚痴でしかなく、逆差別論者ってほど、反発を強めているわけではない。

 とはいえ、明らかに男性たちは、“デキる女性”を目の当たりにして、ざわめいている。決して軽々と「女は家庭」と口にすることはないし、そこまで言いきるほどでもないにせよ、女性たちに対して少しばかりおののいている。その一方で、「男社会って結構しんどいんだよね」と疲れているようにも見える。

 「女性たちって、本当に出世したいって思っているんですかね? 出世したって、一つもいいことないんですけどね」。つい先日もこう嘆く男性に出会った。

 確かに。ついつい働く女性といえば、「ガラスの天井」だの、「女性差別」だのという角度ばかりから論じてきて、「出世に関する女の気持ち」について、真正面から考えてみたことがなかった。

 そこで、今回は、「出世」を働く女性の目線でとらえることで、男社会の今後の行方を探ってみようと思う。

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「「女は家庭」、中山大臣政務官の不適切発言で考えた男女の“距離”の今」の著者

河合 薫

河合 薫(かわい・かおる)

健康社会学者(Ph.D.)

東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。産業ストレスやポジティブ心理学など、健康生成論の視点から調査研究を進めている。働く人々のインタビューをフィールドワークとし、その数は600人に迫る。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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