僕は仕事バカだと思います。高度成長期のモーレツ社員にものすごく共感する、そんな価値観を持った人間です。サイボウズが手掛けているグループウエアで世界一になるためならどんなことでも我慢する覚悟でいるし、職場で仕事をしながら力尽きて死ぬのが一番美しい死に方だと心から思っています。
会社に行って働くのが僕は好きで、だから育休で2週間も休むのはなあ…と正直思っていたんです。それに創業以来、これほど長く休んだことがなかったので、不安がありました。僕の席がなくなるんじゃないかって。一応、社長なんですけどね。
そんな僕が育児休を取った。理由はいくつかあります。
まず自分が率先してやってみよう
一つには、サイボウズでは2006年から育児休業が最長6年取れる制度を導入していますが、男性でそれを活用したのはまだ1人しかいないことです。だからこそ社長である僕が率先して育休を取ろうと、子供が生まれる前から考えていました。

僕自身は仕事人間ですが、そうではない人を認めないのではありません。仕事や家庭に対する考え方は時代とともに変わり、多様化しています。価値観が違うと受け入れないのではなく、変わってきていることを理解しないといけない。格好いいことを言うようですが、それにはまず自分がやってみようと思ったんです。
もう一つには、近くに両親もおらず子育てが大変そうな妻の姿を見ていて、自分にも何かできたらと思っていたからです。
また、きっと話題になるだろうから、会社の宣伝にも使えるかなという下心がありました(笑)。サイボウズのようなベンチャー企業は目立ってなんぼです。僕の場合は、育休が自分の仕事につながっていたから、それを免罪符に「これはサイボウズのためでもあるんだ」と自分を納得させて休めたというところがあります。
育休を取得すると発表してからの反響の大きさは予想以上でした。
この短期間で「育休」。そして、社長…本人も仰っているように、宣伝・看板効果でしかないと思いました。単発のイベントとしてではなく、もっと日常の一部として育児に関わって欲しい。それも決定権を持つ社長ではなく、一般の雇用者レベルに根付いてこそ「イクメン」誕生だと思います。ともあれ、看板でもないよりはマシなので、青野さんには感謝します。(2010/10/22)