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正しいシナリオプランニングが企業の生存可能性を高める

強い思いが、自らに好ましい将来をもたらす

2010年10月15日(金)

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「経営レンズ箱」はこちら(2006年6月29日~2009年7月31日まで連載)

 新興国の経済成長と米国一極集中の陰り、IT(情報技術)とネットワークの猛スピードの変化による情報流通の経済性変化、あるいは、日本に代表される高齢化の進展と経済活力の低下。どれも、確実に進行していることなのだが、「その結果、何が起こるのか」「社会の、あるいは自分の属する産業の将来像は、どのようなものか」については、確実な答えはない。

 様々な人が、こういう時期こそ歴史を振り返れ、というメッセージを出しておられる。もちろん、その価値は大きいのだが、単に「過去にも、いろんな大変動があったのだな」とか「結局、人間の思考と行動はあまり変わっていないな」ということを再認識するだけでは、もったいない。

 歴史を振り返りつつも、その中身を読み解くことで、可能な限り、不確実な未来への道標を見出していくという、難しいけれど、未来志向の読み方をしたいものだ、とかねがね思い、かつ苦戦してきている。

 最近、少し前に出た本を、きちんと読み直してみる機会があり、「未来志向で歴史を読む」という意味で多くのヒントを得ることができた。また、その延長線上で、企業経営の将来を考える手法について、自分自身の課題認識をクリアーにすることにもつながったので、今回は、そのご紹介をしてみたい。

 ほぼ、つん読状態だったところを引っ張りだし読み直したのは、『21世紀の歴史』(ジャック・アタリ著、作品社)という本である。フランスでの原著の出版は2006年。日本語訳が出た2008年には、書評でけっこう取り上げられた。昨年も「リーマンショックをこの本の中で予測していた」という切り口で、NHKでロングインタビューが2回にわたって放送されていたので、お読みになった方もたくさんいらっしゃるかと思う。

 著者のジャック・アタリ氏は経済学者・思想家だが、30代の時に、フランスのフランソワ・ミッテランの大統領特別補佐官を務め、その後、ヨーロッパ復興開発銀行の初代総裁にもなった。ニコラ・サルコジ政権に対しても、「アタリ政策委員会」という、21世紀のフランスにとっての重要政策を提言する諮問委員会を率い、強い影響力を有している。政治に近い場にいることで、様々な毀誉褒貶にさらされる一方、「プラネットファイナンス」というNPO(非営利組織)を率いて途上国でのマイクロファイナンスを積極的に実践してもいる。知性的・思索的であるが、強烈な信念と行動力の持ち主でもあり、いかにも欧州らしい多面的な人物である。

 くだんのNHKのインタビューは、2010年10月現在、NHKオンデマンドでも見ることができる。どういう感じの人かご興味あれば、ご覧いただければと思う(個人的には、「リーマンショックの予測」という点よりも、これからの世界についての彼の見方に興味があったので、シリーズの内、2回目のインタビューのほうが面白かった。ご参考まで)。

21世紀に訪れる「3つの波」

 この本、まだお読みになっていない方もいらっしゃるだろうから、簡単に中身について触れておこう。もともとの仏語原題は、“Une Breve Histoire De L’Avenir”、英語版のタイトルも“A Brief History of the Future”。直訳すると、「簡潔なる未来の歴史」という感じだろうか。

 大きく2部構成になっていて、前半が、人類誕生以降の歴史を振り返り、人間の歴史を形作ってきた本質的な力(アタリ氏自身の表現を借りれば、「歴史の法則」)を抽出し、これまでの歴史を再構築してみるというパート。後半は、未来の歴史を語るという本来不可能なことを実現するため、前半で示された本質的な力をベースに、21世紀の歴史を「3つの波」というシナリオで示してみるというパートになっている。

 これまでの書評でも、この前半部分を高く評価する声が多く、私自身もアタリ氏の独自のモノの見方について、感心させられる部分が多かった。

 彼は、まず、歴史を形作るものとして、宗教・軍事・市場という3種類の「秩序を生む」力を挙げる。さらに、人間の「自由を求める」性質が重要な役割を果たしてきたと説き、紀元前10世紀頃から、民主主義と資本主義の組み合わせからなる「市場の秩序」が歴史の大枠を型どってきたと考える。一方、移動の「自由」を持つ「ノマド」を人類史進化の大きな要因と位置づけ、モバイル機器を使いこなし、世界中を移動する現代版ノマドに至るまで、彼らの行動が歴史に大きな影響を与えてきたと述べる。

 市場、自由、ノマドというキーコンセプトを示したうえで、彼は、資本主義の中核となる「中心都市」という概念を提示し、その変遷を示していく。

 ちなみに、アタリ氏が挙げる歴史上の「中心都市」は、13世紀のベルギー・ブルージュから始まり、イタリア・ベネチア、ベルギー・アントワープ、イタリア・ジェノバ、オランダ・アムステルダム、イギリス・ロンドン、アメリカ・ボストン、アメリカ・ニューヨーク、アメリカ・ロサンゼルスに至る9都市である。自国の都市が「なぜ中心都市の位置を占め得なかったのか」あるいは「今後占め得る可能性はあるのか」ということは、誰しも気になるものらしく、この本を読んで自国の都市と「中心都市」とを比較して将来に思いを致すという論考も数多く見受けられるようだ。

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「正しいシナリオプランニングが企業の生存可能性を高める」の著者

御立 尚資

御立 尚資(みたち・たかし)

BCGシニア・パートナー

京都大学文学部卒。米ハーバード大学経営学修士。日本航空を経て現在に至る。事業戦略、グループ経営、M&Aなどの戦略策定・実行支援、経営人材育成、組織能力向上などのプロジェクトを手がける。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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