「『ビジョナリー・カンパニー』から学ぶ衰退に抗う」

創業者の執務室を残すワケ

「自分の代はつつがなく」を打破せよ

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2010年10月15日(金)

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 着実に成長を続ける会社と絶頂から転げ落ちる会社の違いは何か。衰退する企業には一定の法則が見いだせるのではないか。『ビジョナリー・カンパニー3 衰退の五段階』(日経BP社刊)の著者、米経営学者ジェームズ・C・コリンズ氏は、多くの企業が以下の5段階を経て衰退すると説いている。

 1.成功から生まれる傲慢

 2.規律なき拡大路線

 3.リスクと問題の否認

 4.一発逆転策の追求

 5.屈服と凡庸な企業への転落か消滅

 日経ビジネス10月4日号では「衰退に抗う不沈企業」と題し、特集記事で日本版「ビジョナリーカンパニー」の条件を探った。
 連動インタビュー第7回に登場するのは、大和ハウス工業会長兼CEO(最高経営責任者)の樋口武男氏。創業者である故・石橋信夫氏の経営理念を徹底して社員に伝えることを重視してきた樋口氏に、企業理念と会社の永続性について聞いた。

樋口武男(ひぐち・たけお)氏
大和ハウス工業会長

1938年兵庫県生まれ。72歳。61年関西学院大学法学部卒業。63年8月大和ハウス工業入社、2001年4月大和ハウス工業社長、2004年4月から会長兼CEO。著書に『熱湯経営』『先の先を読め』(いずれも文春新書)がある。(写真:山田 哲也、以下同)

――創業者である故・石橋信夫氏の執務室を役員フロアに残してあるそうですね。

樋口 1955年に「パイプハウス」を発売し、国鉄(現JR)や日本電電公社(現NTT)に売り込んだり、59年に日本で初めてプレハブ住宅「ミゼットハウス」を売り出したりするなど、先見の明があった創業者の考えや経営哲学を常に意識していてほしいと思っています。

 私自身、何か決断が必要な時には創業者の執務室に来ます。「石橋さんならどうするか」。1人で静かに考えるのです。当社は2003年3月期には“大掃除”をしました。固定資産の評価損など2100億円もの損失を一括処理し、創業以来初の赤字決算を決めたのです。その決断をしたのもあの部屋でした。

 他の役員に「(創業者の執務室に)行け」とは言ってません。それは人それぞれですから強制はできません。ただし、新任の役員と支店長には「(創業者に)あいさつに行ったか」と言っています。そこで何を感じるかはその人次第でしょう。

創業者の石橋氏が生み出した「パイプハウス」(左)と「ミゼットハウス」

――石橋氏の下で働いてきた経験について2冊の著書にまとめています。

樋口 あれは僕のことを書いたのではありません。創業者の考え方や思いを伝えたいと考えて本にしたのです。大和ハウスのグループ全体で働く人たちにも自分の経験を通じて伝えたいと思いました。

 僕は36年間、創業者と一緒に働いてきましたが、本当に近くで創業者の考えに接したのは、亡くなる前の最後の4年間でした。商売に大切なことは何か、社員をどう見極めていくか、いろんなことを学びました。その語り部となるのが自分の大きな仕事だと考えています。幸い社内だけでなく、社外から講演依頼がたくさん舞い込むなど、幅広く関心を持っていただいています。

社長は最低8年はやるべき

――創業者の存在と会社の永続性についてどう考えていますか。

樋口 一般に企業の寿命は30年と言われます。聞いた話では、50年続くのが4割、100年続くのはわずか3%だという。

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著者プロフィール

細田 孝宏(ほそだ・たかひろ)

日経BP社入社後、経済誌「日経ビジネス」を振り出しに、建築誌「日経アーキテクチュア」、日本経済新聞証券部(株式相場担当)で記者活動に従事。「日経ビジネス」では主に自動車、流通、商社などの各業界を担当し、現在、米国特派員として、ニューヨークに駐在している。



このコラムについて

『ビジョナリー・カンパニー』から学ぶ衰退に抗う

 米経営学者ジェームズ・C・コリンズ氏の『ビジョナリー・カンパニー』第1巻を日経BP社が発行したのは1995年のことでした。それから日本経済は混迷を極め、強い逆風を受けた企業も少なくありません。その後シリーズ化されたこの書籍は、各国で高い評価を集めました。日本のリーダーは、この名著から何を学んできたのでしょうか。
 このほど発売された第3巻では、企業が衰退に至る道筋が分析されています。そこから読み解くべきは、衰退に抗う道です。着実に成長を続ける会社と、絶頂から転げ落ちる会社。あなたの会社はどちらに近いでしょうか。この連載から改めて考えてみてください。
コラム看板の写真:中西 昭

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