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過去の成功体験が衰退招く

プロフェッショナルな経営者を養成せよ

  • 飯山 辰之介

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2010年10月21日(木)

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 着実に成長を続ける会社と絶頂から転げ落ちる会社の違いは何か。このほど発売された『ビジョナリー・カンパニー3 衰退の五段階』(日経BP社刊)の著者、米経営学者ジェームズ・C・コリンズ氏は多くの企業が、以下の5段階を経て衰退すると説いている。

 1.成功から生まれる傲慢

 2.規律なき拡大路線

 3.リスクと問題の否認

 4.一発逆転策の追求

 5.屈服と凡庸な企業への転落か消滅

 日経ビジネス10月4日号では「衰退に抗う不沈企業」と題し、特集記事で日本版「ビジョナリーカンパニー」の条件を探った。

 連動インタビュー第10回では、米系コンサルティング大手、ボストンコンサルティンググループ 日本代表の水越豊氏に日本企業の衰退とその要因について聞いた。

――米国企業の事例分析を通して、コリンズ氏は企業の衰退について一般的な法則を導きだしています。この理論は日本企業にも当てはまるでしょうか。

水越 豊(みずこし・ゆたか)氏
1956年生まれ。79年に東京大学経済学部を卒業後、新日本製鐵に入社。88年スタンフォード大学で経営学修士(MBA)を取得。90年にボストンコンサルティンググループに入社。2005年に同社日本代表に就任。(撮影:都築 雅人、以下同)

水越 私は当てはまると思います。特に日本は20年以上前から、第1段階「成功から生まれる傲慢」や、第2段階「規律なき拡大路線」を繰り返してきたのではないでしょうか。

 1980年代、日本企業は急成長し、大きな成功を経験しました。「ジャパン・アズ・ナンバーワン」とまで言われた時代です。当時私は米スタンフォード大学のビジネススクールで学んでおりました。日本人が発言しようとすると、皆が真剣に耳を傾けてきたものです。

 ですが90年代のバブル崩壊以降、日本のGDP(国内総生産)は伸び悩んでいます。2008年には先進国の中でも下位に位置づけられてしまいました。

 国内市場が飽和、成熟する中、日本企業は事業の多角化によって収益の拡大を目指しました。しかし、新規事業や新市場への進出がうまくいっているとは思えません。日本企業は総じて競争力の低下に苦しんでいます。

「我々は万能なんだ」という思い込みが失敗招く

――なぜ新事業への進出がうまくいかないのでしょうか。

水越 過去の成功が忘れられず、その体験を引きずって戦略なき拡大に突き進んでしまうからでしょう。「我々は優秀なんだ。万能なんだ」といった観念がすり込まれてしまったのです。ですから新規事業に乗り出そうとしても、過去のアナロジーでやろうとする。「我々は万能だ」という思い込みが、「我々が進出すれば必ず成功する」という根拠なき確信を生んでしまうのです。

 進出する領域にしてもそう。過去の成功体験の延長で「進出しやすそうだから」とか、「やりやすそうだから」といった理由で節操なく手を出してしまう。自分たちの存在意義や競争力の見極めができていないのです。

 進出の際は、多くの企業が「強みを生かして出る」と言います。でも新事業で成功するには新たな事業センスやノウハウが必要でしょう。ただ、この点については「勉強する」としか答えられない。結局、「我々が進出すれば必ず成功する」という思い込み以外、進出の根拠がないのです。これはコリンズ氏の指摘する「成功による傲慢」と「規律なき拡大路線」のまさに象徴と言えるでしょう。

 本来ならば、過去の成功体験をまず忘れ、自分たちが目指すべきビジネスモデルをきちんと見極めなければなりません。新しい市場に対し、会社がどのようなポジションにいるのか、そして強みや競争力がどこにあるのかを判断した上で、これまでの商品やブランドを使った方がいいのか、ゼロから要素技術を育てていくべきなのかといった決断を経営者は下さなければなりません。しかし大きな成功体験が仇となって、高慢な発想から抜け出せないのです。

 それは国の動きとも合致するのかもしれませんね。いわゆる「失われた20年」の間、日本政府は競争力を強化するよりも「ばら撒き」を繰り返してしまったわけですから。

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