• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

≪最終回≫「期待」の達成度をいかにして定量的に測るか

【オノマトペと期待編その4】言葉や行動に見る「期待」の評価方法

2010年11月2日(火)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

 「使ってみたい、使いやすそう、使えるかも」

 友人の唐君が台湾から訪ねて来た。彼が持参した新聞には、手作りで改良した住まいの写真が大きく掲載されていた。唐君は生まれつき重度の障害を持っており、車いすに乗った人生である。彼は何の本も読まず、インテリアデザインの勉強もせずに、ただただ彼の暮らしの実態を冷静に見つめ直して、何年もかかって少しずつ小さな部屋を改良した。

 それまで彼は実に多くの建築の専門家やインテリアデザインのプロにこうした改良を頼んできたが、一向に埒(らち)が明かなかったという。彼に言わせると、「専門の職業とは何か、使い手と視点を異にする専門家との答えの出し方とは一体どう処すべきなのだろうか、と考えさせられる仕事ぶりであった」そうだ。

 そして、唐君と、障害を持つ人と健常な人の間の相互理解の方法について、しばし話し合った。話題は終始、デザインの評価に関する障害者と健常者の相違点について、であった。

「つるつる」と「ザラザラ」、どちらが上質?

 「エクスぺクトロジー(期待学)」を研究し始めてからずっと気にかけていることは、使い手の「期待値」や「期待感」における達成度をいかにして定量的に測るかということだ。今までのように単に数値的なデータでは不十分であるという感じがしていたものの、この件に対してながらく、なかなか分かりやすい妙案が浮かばなかった。

 そこにはこうした評価に対して、一つの観点について研究する際には多くの場合、焦点となる一つの軸を基盤に全体の状況を評価しようという方法論にも問題があるのでは・・・ということにある日、気づいた。そのきっかけとなったのが、この数年、余暇時間をすべてと言っていいほど使って取り組んできたクラフトのデザイン開発の経験であった。その中で、僕が食器のデザイン表現についてアイデアを提案させていただいた陶器があった。その試作品の仕上がりと風合いを検証する会議で、手触り感の評価の話になった。

 話題の中心は、「ツルツル」のほうが「ザラザラ」より上質な感じがするかどうか、ということであった。討議が進む中で、「じゃあ、『サラサラ』はどういった評価の位置づけになるのだろう」といった話も飛び出した。そもそも、我が国ではこうした擬態語(オノマトペ)を日常的に頻繁に、何ら特別な意識を持たずに使っているという背景がある。普段から使い込んで来た言葉なのだが、それらに対する相対的な評価ができているかというと、怪しい部分もある。

 「ザラザラ」と「サラサラ」、そして「ツルツル」といったこの3つの表現の質感に対する位置づけが規定されているかと言えば、曖昧な気もする。一見、日常的で簡単そうなこの自問に簡単には答えられない自分がいた。もちろん、一般的には「ツルツル」に磨いた廊下といった具合に綿密に人の手がかかっている感じや十分な配慮が感じられる感覚を醸し出しているほうが上質な感じを否めない。対して、「ザラザラ」なモノには少し人間の手が加えられておらずに素材のむき出しな自然感が漂っているといった感覚も持てそうだ。

 そうであっても、ザラザラなモノにも、上質感を感じさせないモノがある一方で、十分に上質さを演出できているモノもあるかもしれない。そうなってくると、こうした言葉による評価法や評価基準をどう見定めておけば、初期の目的である定量的な評価が可能になるだろうか。

 そう考えていくと、モノの醸し出す表情にも、ひょっとして上質感を感じさせないモノとそうではなくて十分上質さを演出できている表情もあるかもしれない。そうなってくると、こうした言葉による評価法や評価基準を見定めておけば、ある程度初期の目的である予測感性の定量的な評価が可能になるかもしれないと思った。

 そこでこうした実態に注目して実際に表面の表現が異なる3種類の光沢や手触りを持つ皿を製作し、見た目と触っている感覚をそれぞれの言葉で比較しながら評価してもらった。

画像のクリックで拡大表示
画像のクリックで拡大表示
画像のクリックで拡大表示

 一般的には、摩擦係数が低めの皿のほうが仕上がりも上質で良く制御された技術の表現と考えやすいことが想定できる。

 例えば、ここで言葉に注目した使い手の印象を分析するに当たって、オントロジーと呼ばれる言語分析の手法の考え方を導入して、実際に被験者が得た手触り感の印象評価を考えてみることにした。そのためには基盤となる言葉での印象評価をきちんと採集し、整理する必要がある。そのうえで、オノマトペや形容詞などの修飾語を主軸に、仮説的な評価軸を作成しておいて、特定の製品の表面の仕上げに関して使い手がどういった態度や反応を示し、その結果を言葉に託して自由に印象や、自らが得られた感覚を語ってもらうこととした。

画像のクリックで拡大表示

コメント0

「エクスペクトロジー(期待学)が生む上質なモノづくり」のバックナンバー

一覧

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント投稿機能は会員の方のみご利用いただけます

レビューを投稿する

この記事は参考になりましたか?
この記事をお薦めしますか?
読者レビューを見る

コメントを書く

コメント入力

コメント(0件)

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

「絶対これしかありません」というプランが出てきたら、通しません。

鈴木 純 帝人社長