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“人質交渉術”が愛社精神を引き出す

会社を復活に導くリーダーシップとは

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2010年11月5日(金)

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 スイスのビジネススクールIMDの教授陣が伝授する、グローバル化時代のマネジメント術。日経ビジネス本誌10月25日号から4回に渡って掲載してきた最終回は、リーダーシップ担当のジョージ・コールリーザー教授から、部下のパフォーマンスを最大限引き出す極意を学ぶ。

 コールリーザー教授は人質解放のために犯人を説得する人質交渉人を30年以上も務めた経験がある心理学者でもある。日本企業で従業員の愛社精神が衰えていることを懸念し、その背景には経営者が目先の利益やコスト削減に目を奪われ、従業員に安心の拠り所を提供することを怠ってきたこと、つまり、リーダーシップの失敗があると分析する。

(構成:大竹剛=ロンドン支局)

ジョージ・A・コールリーザー
(George A. Kohlrieser)

リーダーシップ研究の第一人者の組織・臨床心理学者。人質交渉人としても活躍。IMDでリーダーシップ・組織行動学の教授を務め、コンサルタントとしてグローバル企業へのアドバイスも行う。IMDが2010年11月7日~12日に香港で開催する「ハイパフォーマンスリーダーシッププログラム」を指揮する。著書はベストセラーとなった『Hostage at the Table: How Leaders Can Overcome Conflict, Influence Others, and Raise Performance』(Jossey Bass刊、2006年)など

 世界経済の危機や企業の経営難のニュースが飛び交う中、従業員の会社離れが深刻な状況に直面している。かつてないほど、多くの人が、会社の経営方針や価値観に共感を持てず、仕事へ愛着を感じなくなり働く意欲を失っている。

 この状況に警鐘を鳴らす統計がある。人事のアウトソーシング企業である米ヒューイット・アソシエイツが最近発表した調査によると、2010年は社員の愛社精神や士気の落ち込みが、調査開始から15年間で最も大きかった。2010年第2四半期の終わりには、調査対象900社のうち約半数で、社員の愛社精神に急降下が見られた。

 日本企業は、特にその傾向が顕著だ。米ギャラップの従業員エンゲージメント調査(2008年)によれば、仕事に愛着があるとする日本人労働者は全体のわずか7%しかおらず、残りの93%は会社に対する愛着を失っているか、もしくはあえて距離を置いている。先に発表された米ケネクサ・リサーチ・インスティチュートの従業員エンゲージメント調査でも、企業愛着度において日本は世界の中で最下位であった。

日本は世界で最も愛社精神のない国

 企業にとって問題なのは、社員の気持ちの問題だけではなく、愛社精神があるかどうかが業績と明白な関連性があるからだ。

 ヒューイット・アソシエイツの分析によれば、社員の愛社精神が高い企業(従業員の65%に愛社精神があるという会社)は、不安定な経済状況の中でも、全体的に株式市場におけるパフォーマンスがほかの会社より優れていた。2009年には、こうした企業の株主利益は、調査対象企業全体の平均を19%上回っていた。

 逆に、社員の愛社精神が低い企業(愛社精神があるという従業員は全体の40%以下の企業)の株主利益は平均より44%も下回っていた。顧客満足から生産性、離職率から病欠まで(従業員の愛社精神の低い企業では、社員の病欠がより多く見られる)、企業の利益は社員の愛社精神に大きく影響されるのである。

世界の変化が企業への忠誠心に影響

 日本で、企業への愛着度が極めて低いのはどうしてだろうか。その理由として、企業が置かれている外部環境が急速に変化していることが考えられる。

 今日、世界は絶え間なく変化している。特に日本は、技術やイノベーションに重点を置いた産業を持つだけに、そのスピードは極めて速い。最近では海外市場への依存度も急速に高まってきた。企業は生き残りをかけて、海外の経営環境や顧客ニーズへの対応に迫られている。

 こうした変化は、従業員と会社の関係に大きな影響を及ぼす。例えば、美徳とされてきた企業への忠誠心が、大きな危機に立たされているといってもよい。実際、終身雇用という考え方が、実績に基づいた短期雇用へと変化してきている。

日本の潜在力、愛社精神があってこそ生かされる

 環境が変化すれば、企業構造も柔軟で適応力のあるものに変わる必要がある。社員はぬるま湯から出て、自らリスクを負わなければならない。

 日本には非常に優れた人材がいるが、急速に事業環境が変化する中で好業績を維持するには、優れた人材を抱えているだけでは不十分だ。彼らが、愛社精神を持ち、意欲的に仕事に取り組むことが極めて重要になるのである。愛社精神があって初めて、会社のためにその潜在能力を最大限に発揮するようになる。リスクを計算し、積極的にそのリスクを取りに行くようになるのだ。

 だが、はたして今の日本企業は、そのような優れた人材の能力を愛社精神で引き出しているだろうか。激しいグローバル競争の中で日本は再び浮上し始めているように見えるが、日本企業はその代償として、愛社精神を犠牲にしてはいないだろうか。

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