これまでのコラムや最近出版した書籍『「最強のサービス」の教科書』の中で、サービス産業界における生産性向上の取り組みを詳しく紹介してきた。そして、事例として紹介した企業のすべてが、単に効率性だけを追求するのではなく、顧客にとっての満足も同時に高めていることを明らかにした。
つまり、確実に成果を得るためにいずれかの一兎だけを追うのではなく、常に顧客満足と業務効率の二兎を並行して追いかけている。そして、両方を同時に実現するサービスの提供方法を現場で発見するとともに、効率的に高い顧客満足を得続けることのできる仕組みをサービスの提供現場に導入しているのである(詳しくは、第2回「顧客満足と業務効率化、二兎追うものは二兎を得る!」を参照)。
行政に生産性向上を期待できるのか
市場の中で激しく競争している民間企業にとって、生産性を高めることは非常に重要である。生産性が高い企業は、より少ない資源で、より品質の高いサービスをより多く提供でき、市場の中で優位なポジションを得る。その結果、企業として大きく成長できるだけでなく、雇用を維持し、社会貢献もできる。
ところで、このような民間企業ではなく、市場原理の外で地方自治体などを通じて提供されている行政サービスは、社会の中の非常に大きな存在であり、重要な役割を持っている。しかし、行政サービスは一般に効率的ではなく、ムダが多いと言われる。
提供者側の視点から、画一的に市民にサービスが提供される。時としてその品質も十分なレベルに達していなく、それに対するクレームを数多く見聞きする。このことは、これまで紹介してきた多くのハイ・サービス企業において先進的に取り組まれているように、行政サービスも業務効率と品質追求の二兎を追う生産性の向上が必要であることを意味している。
しかし、この行政サービス部門において、民間企業が生産性を向上に取り組み原動力の基礎となっている市場競争が一般に働いていない。市場の中で安定的に提供できないから、行政機関がそれを独占しているとも言える。これまでも様々な改革が行われ、この競争原理を何とかして行政部門に導入し、サービスの品質や提供の効率性を改善しようとしてきたが、いまだ大きな効果が出ているように見えない。
このようなことから、行政セクターで提供されているサービスの生産性を向上することは難しいだけでなく、そもそもそれができるのかという疑問を多くの人が持つ。そんな中で、三重県明和町の小さな公共図書館の地道な取り組みによって挙げられている成果は特筆すべきである。
図書館運営を受託するリブネット
三重県にある明和町ふるさと会館には、小さな図書館が併設されている。蔵書は10万冊、敷地面積は約800平方メートルで、多くの図書館の中では小ぶりな公共図書館といえる。この図書館の運営を2006年から受託しているのが指定管理者リブネット・イセット共同事業体である。
このリブネットがこの図書館運営に携わるようになってから、登録者数、利用者数、貸出冊数が増加に転じ、利用客の満足度を見るために実施しているアンケート調査でも、高い支持を得ている。
このような成果から、今回と次回で、このリブネットが公共図書館の運営を通じて、これまで何を考え、どのような図書館を作ろうとし、この小さな図書館で具体的に何をやってきたのかを紹介する。
ここで紹介しようとしているリブネットは2002年に三重県伊勢市で設立され、人の生活にとって読書が非常に重要であると考え、使いやすい学校図書館を運営するとともに、地域コミュニティの核となって地域に役立つ公共図書館の実現を目指している。そして、公立小中学校の図書館業務のサポートを中核に、地域の公共図書館の運営や基本計画策定のコンサルティングを請け負う事業を展開している。
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