「ハイ・サービスの世紀へ」

行政サービスも生産性革命へ! ――公共図書館運営の「リブネット」

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2010年11月22日(月)

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 これまでのコラムや最近出版した書籍『「最強のサービス」の教科書』の中で、サービス産業界における生産性向上の取り組みを詳しく紹介してきた。そして、事例として紹介した企業のすべてが、単に効率性だけを追求するのではなく、顧客にとっての満足も同時に高めていることを明らかにした。

 つまり、確実に成果を得るためにいずれかの一兎だけを追うのではなく、常に顧客満足と業務効率の二兎を並行して追いかけている。そして、両方を同時に実現するサービスの提供方法を現場で発見するとともに、効率的に高い顧客満足を得続けることのできる仕組みをサービスの提供現場に導入しているのである(詳しくは、第2回「顧客満足と業務効率化、二兎追うものは二兎を得る!」を参照)。

行政に生産性向上を期待できるのか

 市場の中で激しく競争している民間企業にとって、生産性を高めることは非常に重要である。生産性が高い企業は、より少ない資源で、より品質の高いサービスをより多く提供でき、市場の中で優位なポジションを得る。その結果、企業として大きく成長できるだけでなく、雇用を維持し、社会貢献もできる。

 ところで、このような民間企業ではなく、市場原理の外で地方自治体などを通じて提供されている行政サービスは、社会の中の非常に大きな存在であり、重要な役割を持っている。しかし、行政サービスは一般に効率的ではなく、ムダが多いと言われる。

 提供者側の視点から、画一的に市民にサービスが提供される。時としてその品質も十分なレベルに達していなく、それに対するクレームを数多く見聞きする。このことは、これまで紹介してきた多くのハイ・サービス企業において先進的に取り組まれているように、行政サービスも業務効率と品質追求の二兎を追う生産性の向上が必要であることを意味している。

 しかし、この行政サービス部門において、民間企業が生産性を向上に取り組み原動力の基礎となっている市場競争が一般に働いていない。市場の中で安定的に提供できないから、行政機関がそれを独占しているとも言える。これまでも様々な改革が行われ、この競争原理を何とかして行政部門に導入し、サービスの品質や提供の効率性を改善しようとしてきたが、いまだ大きな効果が出ているように見えない。

 このようなことから、行政セクターで提供されているサービスの生産性を向上することは難しいだけでなく、そもそもそれができるのかという疑問を多くの人が持つ。そんな中で、三重県明和町の小さな公共図書館の地道な取り組みによって挙げられている成果は特筆すべきである。

図書館運営を受託するリブネット

 三重県にある明和町ふるさと会館には、小さな図書館が併設されている。蔵書は10万冊、敷地面積は約800平方メートルで、多くの図書館の中では小ぶりな公共図書館といえる。この図書館の運営を2006年から受託しているのが指定管理者リブネット・イセット共同事業体である。

 このリブネットがこの図書館運営に携わるようになってから、登録者数、利用者数、貸出冊数が増加に転じ、利用客の満足度を見るために実施しているアンケート調査でも、高い支持を得ている。

 このような成果から、今回と次回で、このリブネットが公共図書館の運営を通じて、これまで何を考え、どのような図書館を作ろうとし、この小さな図書館で具体的に何をやってきたのかを紹介する。

 ここで紹介しようとしているリブネットは2002年に三重県伊勢市で設立され、人の生活にとって読書が非常に重要であると考え、使いやすい学校図書館を運営するとともに、地域コミュニティの核となって地域に役立つ公共図書館の実現を目指している。そして、公立小中学校の図書館業務のサポートを中核に、地域の公共図書館の運営や基本計画策定のコンサルティングを請け負う事業を展開している。

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著者プロフィール

内藤 耕(ないとう・こう)

工学博士、独立行政法人産業技術総合研究所サービス工学研究センター副センター長。サービス産業生産性協議会業務革新フォーラム推進委員会委員、日本小売業協会流通業サービス生産性研究会コーディネーター等を務める。主な著書に、『サービス工学入門』(編著、東京大学出版会)、『江戸・キューバに学ぶ“真”の持続型社会:資源制約を環境サービスで乗り越えろ!』(共著、日刊工業新聞社)、『サービス産業進化論』(共著、生産性出版)、『サービス産業生産性向上入門−実例でよくわかる!』(日刊工業新聞社)、『「最強のサービス」の教科書』(講談社)など。



このコラムについて

ハイ・サービスの世紀へ

産業活動の主役が製造業からサービス産業に移り、日本経済を支える大きな役割を持ち始めた。しかし、このサービス産業は、日々の生活を支える非常に重要な産業であるにもかかわらず、その生産性の伸び率は製造業に比べ著しく低い。これから本格化する人口減少の社会において、顧客満足の高いサービスを、より効率的に提供できる生産性向上が、産業界が直面するもっとも重要な経営課題となり始めるだけでなく、ここにきて多くのサービス企業がそれに向け経営の舵をきり始めた。
この動きがいよいよ顕著になり始めたことから、2010年が「サービス産業飛躍元年」になると、筆者は確信する。なぜ確信しているか、そして飛躍元年になる道筋とは。このコラムでは、サービス産業をよりよいものにしていくために、大きな成果を挙げているサービス企業の取り組みを分かりやすく紹介するだけでなく、それを幅広く横展開できるよう、その方法論の一般化にも努めていく。

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