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西欧の「殺敵主義」と和漢の「屈敵主義」の悩ましい関係

秋山真之と『孫子』に学ぶ戦略と戦術〈3〉

2010年11月24日(水)

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 秋山真之は、古今東西の軍事戦略書を二つに分類し、次のように整理しました。この分類が、『孫子』の状況認識の特異性にそのまま直結している切り口なので、まずはご紹介したいと思います。

 《泰西兵家の諸説は敵に最大の損害を与へ、或は為し得れば之を殲滅せんとするが如き、全く其敵を殺して無き者にせんとする殺敵主義にして、敵を殺傷するは此主義の目的とする処なり、又和漢兵家の説は敵の意思を屈して我に服従せしめんとする屈敵主義にして、敵を殺傷することあるも、そは唯だ敵を屈するの手段として用ゆるものなり。

 即ち前者は殺敵を目的とし後者は殺敵を手段とせり。今単純なる一例を以て此を対比せんに、茲に相格闘する二兵ありと仮定せよ、殺敵主義にては飽く迄も対手の生命を絶つを目的とし、之がため敵の致命部を斬り終に咽喉を衝かんとし、敵も亦同一の意思を以て之に対抗するが故に其格闘惨烈にして、敵を倒し得るも我も亦大傷して起つ能はざるの被害に苦まざるを得ず。何となれば人を傷くるものは必ず又己も傷くべきものなればなり。

 之に反し屈敵主義にては為し得る限り敵を殺傷するを避け、単に之を屈服せしむるの手段として或は之を疲労せしめ或は其武器を奪ひ或は其手足を傷つけ、以て敵が最後迄抵抗するにあらざれば其生命を絶つことなし。即ち屈敵主義の最後の手段を尽くしたる結果は殺敵主義の目的を達したるものと一致す。故に此主義にては常に多くの時間を要するを免れざるなり》

 大意を訳すと、次のようになります。

 「ヨーロッパの戦略家たちの考え方では、敵に最大限の損害を与え、できれば殲滅しようとする。これは敵に損害を与えて、完全に無き者にしようとする『殺敵主義』であり、敵の殺傷がこの考え方の〈目的〉なのだ。

 一方、日本や中国の兵法家の考え方は、敵の意思を挫いて、自分に服従させようとする『屈敵主義』で、敵を殺傷することがあっても、それはただ敵を屈服させる〈手段〉として用いるだけに過ぎない。

 つまり、前者は『殺敵――敵への殺傷』を〈目的〉とし、後者は『殺敵』を〈手段〉としている。これを、さらに単純な例をつかって対比してみよう。

 たとえば、二人の兵士が格闘しているとする。『殺敵主義』では、あくまでも相手の命を奪うことを目的とし、このために急所に斬りつけ、ついには咽喉をかき切ろうとする。敵も同じ考えで対抗しようとするから、その格闘はとても惨たらしいものとなり、たとえ敵を倒すことが出来たとしても、自分も大怪我をして、立ち上がれないような被害に苦しまざるを得なくなる。なぜなら、相手を傷つけようとするものは、自分もまた傷つけられてしまうからだ。

 これに対して、『屈敵主義』では、出来る限り敵を殺傷することを避け、単に相手を屈服させるための手段としている。敵を疲労させたり、その武器を奪ったり、手足を傷つけたりして、敵が最後まで抵抗しないのであれば、生命まで奪うことはない。ただし『屈敵主義』でも、最後の手段まで尽くせば、その結果は『殺敵主義』の目的と同じになる。つまり『屈敵主義』というのは、どうしても目的達成に時間がかからざるを得ないのだ」

「殺敵主義」と「屈敵主義」はなぜ生まれたのか

 ここで対比されている泰西の兵家(ヨーロッパの戦略家)と和漢の古兵家(日本や中国の昔の兵法家)とは、煎じつめれば前回ご紹介したクラウゼヴィッツと孫子のことに他なりません。

 実際、『戦争論』と『孫子』には次のような指摘があります。

コメント6

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