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第1講 ミドルを軸にイノベーションを起こす

プリウスとインサイトの開発に見る「SECIモデル」の神髄

  • 野中 郁次郎,勝見 明

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2010年11月24日(水)

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 暗黙知と形式知の相互作用による知の創造プロセスをモデル化し、ナレッジマネジメント(知識経営)の世界的第一人者として知られる野中郁次郎・一橋大学名誉教授──。

 2008年に米経済紙ウォール・ストリート・ジャーナルの「世界で最も影響力のあるビジネス思想家トップ20」に選ばれるなど、今なお世界の経営論壇で強い存在感を放っている。

 その野中氏が、本来持っていたイノベーションのDNAを失い、国際的な競争力を低下させ続けている日本企業の現状を憂慮。イノベーションの創出力を取り戻すための方策を緊急に説く。

 野中氏によるこの緊急特別講義を、同氏とともにイノベーションの事例研究に取り組み、『イノベーションの知恵』(日経BP社)などの共著を世に送り出してきたジャーナリストの勝見明氏が書き下ろしでお届けする。

 企業のミドルのリーダーシップが大きく変わろうとしている。

 ミドルのリーダーシップといえば、従来はチームの前面に出て引っ張っていく牽引型リーダーシップのイメージが強かった。それは環境変化がさほど激しくなく、市場分析によって進むべき道筋が見えた時代には通用した。

 しかし、環境の不確実性が増すにつれ、市場や競合、そして自社をも対象化して分析し、自社が取るべきポジションを決める分析的経営の限界が、欧米でも指摘されるようになってきた。それに伴って、求められるミドルのリーダー像も様変わりしてきているのだ。

 チームの前面に出てぐいぐい引っ張っていく牽引力でもなければ、自分が中心となる求心力でもない。いわばチームの「芯」、あるいは「心棒」となって支え、吸引力を持ちながら、全体と個のバランスを絶えずモニタリングし、メンバーの自律性を喚起していく。

 初めに理論やモデルありきで論理的にブレークダウンし、それに現実を合わせるのではなく、現実のただ中でその時々の文脈に応じて最善の判断を下し、チームで新しい価値を生み出していく。そのような実践的な知恵、すなわち、「実践知」のリーダーが強く求められるようになっている。

 それは企業のあり方の根本的な変化と軌を一にする。米国の経営学者、ピーター・ドラッカーは、1993年に出版した著書『ポスト資本主義社会』(ダイヤモンド社)の中で、「21世紀は知識が唯一の意義ある経営資源となる」と予想した。今まさにその知識社会が立ち現れている。

 知識とは単なるデータや情報の集積ではない。思索や実践を通じて自分の中に取り込まれ、血肉化された知であり、その源泉には人間としての信念や思いがある。

 組織のメンバーが培った知識が、製品やサービス、事業、ビジネスモデルの新たな価値へと結実する。この知識創造のプロセスを組み込み、イノベーションを不断に起こしていくことのできる組織のみが不確実な時代を生き残る。

暗黙知と形式知の相互変換をスパイラル状に回す

 では、知識創造はどのように行われるのか。

 知識には、暗黙知形式知がある。

 暗黙知は言葉や文章で表現することが難しい主観的な知であり、個人が経験に基づいて暗黙のうちに持つ。思いや信念、身体に染み込んだ熟練やノウハウなどは典型的な暗黙知である。

 一方、言葉や文章、データなどで表現できる明示的で客観的な知が形式知だ。

 米国流の分析的経営では、形式知を重視する傾向が強かった。しかし、環境が不確実性を増すにつれ、再び重視されるようになったのは「現場の知」であり、それはたいてい、暗黙知として存在する。

 ただし、暗黙知のままでは何も生まれない。暗黙知を形式知へ、そしてまた、形式知を暗黙知へと相互に変換していくプロセスの中で知識創造は行われる。我々が提唱する知識創造理論ではこの相互変換のプロセスを4つのモードでとらえ、各モードの呼び名の頭文字を取って、SECIモデル(セキモデル)と呼ぶ。

 それは次のようなプロセスを取る。

(1) 共同化(S=Socialization)=現場で個人が獲得した暗黙知(思い、イメージなど)を、共体験などを通じて互いに共有し、組織の暗黙知にする。
(2) 表出化(E=Externalization)=暗黙知を言葉や図などで表現し、形式知(コンセプトなど)へ転換する。
(3) 連結化(C=Combination)=形式知とほかの形式知を組み合わせ、1つの体系としての新たな形式知をつくり出す。コンセプトを具体化する設計や製品づくりが該当する。
(4) 内面化(I=Internalization)=新たな形式知をつくり出す経験を通じて、各自が新たな暗黙知を吸収し、血肉化していく。
画像のクリックで拡大表示

 知識社会におけるリーダーの役割は、チームの中でSECIプロセスをスパイラル状に回し続け、新たな知を創発し、イノベーションを起こす。そして、その実践知を組織の中に埋め込んでいくことにある。

 その際、SECIプロセスをどのように回していけばいいのか。具体的な事例を挙げながら説明しよう。

 最初の事例は、JR東日本のエキナカ商業空間のイノベーションに成功した「エキュート」の立ち上げプロセスだ。

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