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リーグを挙げて“箱ものビジネス”をアップグレード

MLBの成長戦略を支えた“共有サービス”の思想

2010年11月25日(木)

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 横浜ベイスターズ移転騒動について書いた前回のコラムは非常に多くの皆様に読んで頂いたようです。この場を借りて御礼申し上げます。プロ野球が多くの日本国民にとっての高い関心事であることを改めて痛感しました。

 ベイスターズの移転騒動を通じて、球団経営=箱モノビジネスであることが改めて周知・確認されたのではないかと思います。スタジアムの使い勝手(使用権)や収益分配条件(営業権)が悪ければ、いくら経営努力を重ねても収支を好転することが難しいのです。程度の差こそあれ、ベイスターズは日本のプロ野球が置かれている球団経営の実態を象徴している事例だったと言えるのかもしれません。

 ここに端的な例を挙げましょう。以下は、横浜ベイスターズと米メジャーリーグ(MLB)のワシントン・ナショナルズそれぞれが、スタジアムを保有している地元自治体と結んでいる球場リース契約の条件の対比です。

比較項目 横浜ベイスターズ ワシントン・ナショナルズ
球場使用料 約7億5000万円
(チケット収入の25%)
550万ドル
(約4億4000万ドル)
広告収入 (株)横浜スタジアム(*)が100% チームが100%
物販収入 (株)横浜スタジアムが100% チームが100%
チケット収入 チームが75%、
(株)横浜スタジアムが25%
チームが100%
スイートボックス収入 なし チームが100%
クラブシート収入 なし チームが100%

*:横浜市などが出資する第三セクターのスタジアム運営会社
出所:Team Marketing Report、夕刊フジ「横浜スタジアム社長が渡辺会長に反論」など

 ベイスターズはチケット収入の25%を球場使用料として支払った上に、球場における広告や物販からの収入は全く球団の懐には入らない契約になっています。一方、ナショナルズは550万ドルの使用料を支払う見返りに、球場から発生するほとんど全ての収入を手にする契約を結んでいます。

 以前、「チームと都市のパワーゲーム」でも解説しましたが、ナショナルズはもともとモントリオール・エクスポズというカナダにフランチャイズを置く弱小球団がワシントンDCに移転して出来たチームです。エクスポズの最後のシーズン(2001年)の営業収入はMLB最低の3417万ドル(約27億円)で、これはトップのヤンキースの2億4220万ドル(当時)の7分の1にも満たない額です。球団収支は、3852万ドル(約30億円)の赤字というありさまでした。これは日本のプロ野球球団の収支に近い(あるいは、それより悪い)数字です。

 しかし、こうしたエクスポズのようなチームでも球団移転という交渉のカードを切ることで、6億ドル(約480億円)を超える最新鋭のスタジアムをタダで手に入れた上、前述のような球団に有利な収益分配契約を手にすることができたのです。

 前回のコラムで、日米の球団経営の大きな違いの1つとして、米国では営利目的での球団所有がリーグ機構から求められる点を指摘しました。そのため、オーナーも球団経営で赤字が続くなど必要に迫られれば移転という交渉のカードを使ってでも収支を好転させようとします。これは例えば日本の製造業が1980年代から日本国内の工場城下町を捨て、安い人件費を求めて中国や東南アジアに進出して行ったのと同じ発想でしょう。

 実際、MLBでは1991年から2010年までの20年間で全30球団中21球団が新スタジアムを手にしています。平均すれば、毎年1つずつ新球場が建設された計算です。これら全てで球団移転があったわけではありませんが、移転をちらつかせながら球団経営の要諦であるスタジアムを新設・改築することで、MLBは大きくその収益性を向上させて行きました。

 過去15年間でMLBはその売り上げを5倍に増やしています。今回のコラムではMLBが大きく収益を伸ばしてきた経緯やその背景に見られるスタジアムを起点とした“共有の思想"について解説しようと思います。

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「リーグを挙げて“箱ものビジネス”をアップグレード」の著者

鈴木 友也

鈴木 友也(すずき・ともや)

トランスインサイト代表

ニューヨークに拠点を置くスポーツマーケティング会社、「トランスインサイト」代表。一橋大学法学部卒、アンダーセン・コンサルティング(現アクセンチュア)出身。スポーツ経営学修士。中央大学非常勤講師

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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