「障害者が輝く組織が強い」

不況もなんのその、最高益を見込む「障害者雇用の最先進モデル」

エフピコ≪前編≫

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2010年11月29日(月)

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 障害のある人たちの働く場をどのようにして広げていくか。障害者雇用は、「ダイバーシティ経営」を推進するうえで最も喫緊の課題の1つである。筆者は今年4〜9月の半年間にわたって『障害者が輝く組織が強い』を連載し、主に民間企業における障害者雇用の取り組みを追った。

 連載終了後の10月末、厚生労働省は今年6月1日現在の障害者の法定雇用率を公表した。それによると、障害者雇用促進法が「1.8%以上」と定める民間企業(従業員数56人以上)の法定雇用率は1.68%で、前年比0.05ポイント増となった。ここ数年、着実に改善を見せ、過去最高となったものの、それでもなお対象企業全体の達成率は47.0%に留まっている。

 そこで今一度、雇用拡大に向けた課題を考えるために、多くの関係者が「障害者雇用の最先進モデル」としてその名を挙げる企業を訪ねた。広島県福山市に本社を置く食品トレーの最大手、エフピコである。2009年に厚労省の「障害者雇用優良企業」に認定された同社は9月末現在、事業提携先を含むグループ全体で321人の障害者を雇用しており、その9割以上が重度の知的障害者だという。法定雇用率に換算すると実に20%近い水準となり、他の追随を許さない実績を上げているのだ。

 エフピコの創業者である小松安弘会長兼CEO(最高経営責任者)は「企業は法で定められたことは守らなければならない。だが、それは企業にとって負荷になるものとは限らない。そこからむしろ、新たな成長の種が芽生え、育つからだ」と豪語する。エフピコの取り組みを、福山市の本社と周辺工場を取材した。

 エフピコは食品トレーの最大手で、50%を超える国内シェアを誇る。食品トレーとは、スーパーの店頭などでおなじみの、肉や魚、総菜、寿司や弁当などの販売用に使われる発泡スチロール製の簡易包装容器のこと。

エフピコが生産している多種多様な食品トレー(画像提供:エフピコ)

 高い商品開発力とコスト競争力、リサイクル事業への積極的な取り組みなどを原動力として、エフピコは1962年の創業以来ほぼ一貫して右肩上がりの成長を続けている。2011年3月期連結決算予想も、売上高1430億円(前期比14.5%増)、経常利益140億円(同14.6%増)と2ケタの増収増益を達成し、過去最高を更新する見通しだ。

リサイクルシステムの確立を先導

 特に環境対策では、早くから先進的な取り組みを続けてきたことで知られる。容器リサイクル法施行のはるか以前の1980年代後半から主力商品である食品トレーの回収・リサイクル事業を開始。全国に独自の回収ネットワークを築き、回収したトレーを再び破砕して原料に加えた「エコトレー」(再生トレー)を商品化、現在の主力商品の1つに育て上げた。多くのスーパーの入り口で見かけるトレーやPET(ポリエチレンテレフタレート)ボトル、牛乳パックなどの容器別の回収ボックスは、エフピコが主導して設置を進めてきたものだ。

 こうして集められた使用済みトレーは、全国数カ所にあるエフピコのリサイクル工場で選別・洗浄・破砕され、再生用原料となる。世界で初めてエフピコが実現した、リサイクルシステム「トレーtoトレー」と呼ばれる独自の再生工程だ。ここで重要な役割を担っているのが、障害のある社員たちである。

 詳しくは後述するが、エフピコの生産システムの最大の特徴を一言で表現するならば、「ハイテクと人手の融合」ということになるだろう。

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著者プロフィール

高嶋 健夫(たかしま・たけお)
フリーランス・ジャーナリスト

1956年東京都生まれ。79年早稲田大学政治経済学部卒業後、日本経済新聞社に入社。宇都宮支局、東京本社編集局産業部、日経ベンチャー編集(現・日経トップリーダー、日経BP)、出版局編集部次長兼日経文庫編集長などを経て、99年からフリーランス・ジャーナリスト。1989年に眼病を患い、視覚障害者(軽度の弱視)になる。その体験も踏まえて財団法人共用品推進機構に参加。99年4月〜2011年5月まで機関誌「インクル」編集長を務める。専門分野は高齢者・障害者ビジネス、中小・ベンチャー企業経営。昨年4月から日経ビジネスオンラインで「障害者が輝く組織が強い」を連載し、同11月に『障害者が輝く組織』(日本経済新聞出版社)として刊行。『R60マーケティング』(共著、日本経済新聞出版社)、『クリスマス・エクスプレスの頃』(共編著、日経BP企画)、『共用品白書』(共編著、ぎょうせい)など著編書多数。



このコラムについて

障害者が輝く組織が強い

障害者を「戦力化」できている企業は稀なのが現状だ。多くの企業経営者や人事担当者にとって、障害者雇用は「渋々ながら取り組んでいる義務」あるいは「やむを得ず支払っている社会コスト」というのが本音であろう。だが、「障害のある社員」が生産や販売、顧客対応、さらには商品企画・開発の現場で、「即戦力」として企業に貢献しているケースは少なくない。「なぜ、彼らはうまくやっているのか?」。本コラムでは、障害者雇用の最前線の取材を通じて、「企業におけるダイバーシティ=人材力を最大限に発揮する経営」の真髄を探っていく。

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