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真面目が“バカ”を見る?! 日本社会の未成熟

“当たり前”をこなす人を大切にしない会社に未来はない

2010年12月2日(木)

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 私は工場(あるいは生産現場)に行くと、無性に感動する。取材の時だけでなく、講演会などに呼んでいただいた時も、可能な限り工場を見学させてもらうのだが、現場に足を踏み入れると決まって胸が熱くなるのだ。つい先日も、ある電力会社の発電所を取材させていただいたのだが、やはり同じだった。

 恐らく工場で働く人たちの実直なまでの真面目さに、心が揺さぶられるのだと思う。

 ひたすら頑固なまでに、彼らは決まった仕事を決まった時間に繰り返す。何事も起こらないように働くことが、彼らに課せられた最大の使命だ。だから、彼らは決められたことを、ミスのないように、徹底的に真面目にやる。彼らからは、「上司に評価してもらおう」とか、「いいところを見せよう」とか、「他人をおとしめてやろう」といった、卑しさや野心を微塵も感じることがない。

 「日本という国は、こういう人たちに支えられているんだよなぁ」とつくづく感じるのだ。

 多くの現場では、ちょっとした気の緩みが大きな事故につながることがある。つまり、彼らにとって真面目であることは生命線でもあるわけだ。だから余計に、彼らはひたすら真面目に、腹の底から真面目に働くのである。

真面目より不真面目がもてはやされる不思議

 ところが、世間では真面目であることは、必ずしも評価されない。「真面目だよね」と言われると、からかわれているような気分にさえなることがある。

 真面目すぎて、つまらない。
 真面目すぎて、融通が利かない。
 真面目すぎて、息が詰まる。

 そんな決してポジティブとは言えない言葉が続く。不良がモテ始める中学生くらいだろうか。真面目な人はバカにされ、相手にされなくなる。真面目さより、不真面目さ。真面目さより、テキトーさ。真面目はダサい、悪いのはカッコいい。真面目だった青年が、無理やり不真面目に振舞うようになることだってある。

 また、社会に出ると、「真面目さ」は、物事がうまくいかなかった時や、何か問題が生じた時の都合のいい言い訳になることがある。

 上司から評価されないのは真面目すぎるから、同僚に好かれないのは真面目すぎるから、組織で出世できないのは真面目すぎるから───。「僕が真面目すぎるのですよね」などと、自分を納得させるための手段に使う人もいる。

 でも、きっとそういう人は、本当は真面目なんかじゃないのだと思う。

 だって、本当に腹の底から真面目な人は、言い訳なんかしないし、真面目でいることは当たり前のことだから、わざわざアピールしたりしない。

 それに本気の真面目さは、人を感動させるエネルギーを持っている。だから、うまくいかないことの理由などにはならないはずだ。工場に行くたびに、私がひたすら感動するように、人の心を揺さぶる力が、真の真面目さ、にはある。

 そこで今回は、真面目であること、について考えてみようと思う。

真面目は真剣勝負の証なのに…

 「発電所の方たちは、停電を起こさないように、ひたすら毎日働きます。でも、そのことはなかなか評価されないんですよね」

 これは発電所内を案内してくださった方が語っていたことだ。

 日本の1世帯あたりの年間停電時間は10分未満で、これは世界的にもダントツに低い。それを支えているのが、高い技術力と、日々真面目にミスをすることなく、寡黙に働く工場の人々の努力だ。

 「真面目とは、真剣勝負である」との名言を残したのは文豪の夏目漱石だが、彼らの仕事はまさしく真剣勝負。

 「停電を起こさない」ためには、決められたことを真剣にミスなくやり続けるだけでなく、先を読む力、それに伴う行動力が必要となる。ロボットのように決められたことをやるだけでは、安定的に電力を家庭に供給することはできない。だから、ただひたすら「停電させない」ためだけに、真剣勝負を続けるのだ。

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「河合薫の新・リーダー術 上司と部下の力学」のバックナンバー

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「真面目が“バカ”を見る?! 日本社会の未成熟」の著者

河合 薫

河合 薫(かわい・かおる)

健康社会学者(Ph.D.)

東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。産業ストレスやポジティブ心理学など、健康生成論の視点から調査研究を進めている。働く人々のインタビューをフィールドワークとし、その数は600人に迫る。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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