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第2講 知を創造する「賢慮型」リーダーの条件

清濁併せのむ“政治力”が世界に誇る名車を生み出した

2010年12月8日(水)

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 暗黙知と形式知の相互作用による知の創造プロセスをモデル化し、ナレッジマネジメント(知識経営)の世界的第一人者として知られる野中郁次郎・一橋大学名誉教授──。

 その野中氏が、本来持っていたイノベーションのDNAを失い、国際的な競争力を低下させ続けている日本企業の現状を憂慮。イノベーションの創出力を取り戻すための方策を緊急に説く。

 野中氏による緊急特別講義を、同氏とともにイノベーションの事例研究に取り組み、『イノベーションの知恵』(日経BP社)などの共著を世に送り出してきたジャーナリストの勝見明氏が書き下ろしでお届けする。

 第2講に当たる今回は、知の創造が企業の競争力を左右する現代において、求められるリーダー像とその条件について説く。

 知識創造が企業の競争力を左右する知識経営の時代には、組織は常に新たな知を創出し続けなければならない。新たな知は個人の暗黙知に源泉があり、暗黙知から形式知へ、形式知から暗黙知へと相互に変換していくプロセスにより生み出されていく。

 知識創造理論では、暗黙知と形式知の相互変換プロセスを共同化表出化連結化内面化の4つのモードでとらえ、それぞれの頭文字を取って、SECIモデル(セキモデル)と呼ぶと、前回に解説した。

 そして、リーダーの役割は自ら率いるチームにおいて、SECIプロセスを絶えずスパイラル状に回し続け、創造性と効率性とを両立させ、新たな知を生み出していくことにあると説いた。

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 では、SECIプロセスを回す時、リーダーにはどのような能力が求められるのだろうか。

 知識時代のリーダーの条件として、我々は「フロネシス(Phronesis)」という概念を提起している。フロネシスは「賢慮」ないしは「実践知」と訳される。それは、次の6つの能力で構成される。

■知識時代のリーダーに求められる6つの能力

(1)「善い目的」をつくる能力

(2)場づくりができる能力

(3)現場で本質を直観する能力

(4)直観した本質を概念化し表現する能力

(5)概念を実現する政治力

(6)賢慮を伝承・育成し、組織に埋め込む能力

 優れたリーダーは善悪の判断基準を明確に持ち、「善い目的」を設定し、メンバーや関係者たちと思いや目的を共有する場づくりができなければならない。

 リーダー自ら現場に立ち、個別具体のミクロの出来事の奥にある本質的な意味合いを直観的に見抜くことが求められる。直観はそのままでは伝わらないので、マクロの普遍的な概念に結びつけて表現し、周りに伝えなければならない。

 目的を実現するには困難を伴い、反対にも遭う。それでも、あらゆる手段を駆使し、時には清濁併せのむ政治力を発揮して実現する。そして、一連のプロセスを通じて自らの実践知をメンバーに伝承し、組織的に育成する。これが賢慮型の実践知リーダーのあり方だ。

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「野中郁次郎の緊急特別講義 日本発イノベーションモデルを取り戻せ!」のバックナンバー

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「第2講 知を創造する「賢慮型」リーダーの条件」の著者

野中 郁次郎

野中 郁次郎(のなか・いくじろう)

一橋大学名誉教授

1935年生まれ。富士電機製造を経て72年、米カリフォルニア大学バークレー校経営大学院から博士号(Ph.D.)取得。「知識創造経営」の生みの親として知られ、世界的に影響力のある経営学者。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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