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「お金のために会社にしがみつく」自分に嫌気が差す瞬間

夢や希望を共有できなくなった企業と働く個人のすれ違い

2010年12月9日(木)

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 「情けない話なんですけど、結局、僕はお金のために働いてるんです。いや、お金のために会社にしがみついているって言った方が正確かもしれません。恐らくこれ以上、僕は出世することはないでしょう。だったら人生の後半戦くらい自分のやりたいこと、好きなこと、やりがいを感じられることをやってみたいって気持ちはあります。でもね、今の給料を放棄してまでやる覚悟があるかっていうとないんですよ。夢だの希望だのよりも、現実から離れることができない。ホント情けない話です」

 こうこぼすのは48歳のA氏。大手メーカーに勤める部長の男性である。

 生きるためにはお金が必要である。お金を得るためには働かなくてはいけない。だからお金のために働いて何ら問題はない“はず”である。

 誰だって、心の奥底では、どうせ働くなら、できるだけ稼いでみたいと思う。キンキンキラキラのぜいたくな暮らしである必要はないが、そこそこいい暮らしはしてみたい。おいしいものだって食べたいし、たまには旅行にだって出かけてみたい。趣味にお金をかけてもみたい。そう思うことはある。

 ところが、「お金のためだけに働く」と聞くと、何となくさもしい気持ちになる。

お金のためにだけに、働きたくない?

 今年の初めに成人式を迎える新成人に関する調査結果が発表され、仕事に対して「お金を稼ぐためのもの」とする考えを持つ人が85.4%に達していることが分かった時にも、オトナたちは一斉に、「何だか夢も希望もないなぁ」と嘆いた。また、大企業を希望する学生が多い理由の一つに、「生涯賃金」が挙げられることに関しても、「金がすべてなのか?」と嘆く人もいる。

 そして、自分自身も「お金のため」に働いていると悟った時、誰から責められるわけでもないのに、罪悪感にも似た感情に陥ることがある。恐らくA氏も、そんな気持ちから「情けない」と自己嫌悪に陥っていたのだろう。

 お金のためだけに、働きたくない──。なぜ、私たちはそう思ってしまうのか。

 たかが金。されど金。働く一番の目的はお金なのに、お金のためだけに働くことに私たちは、なぜ、抵抗感を感じてしまうのか?

 「お金がすべて」とか、「金儲けして何が悪い」とか、「お金で買えないものはない」と豪語するような拝金主義者にはなりたくないという気持ちがあるから?

 そもそもお金のためだけに働いたり、お金のために会社にしがみつくことは、「情けない」と落ち込むほど、いけないことなのか?

 そこで今回は、「お金と仕事」について、改めて考えてみようと思う。

本人が一番よく分かっている

 「自分のこれまでのキャリアを振り返ってみると、若いころの方がもっと自由だったような気がするんです。つまり、純粋に自分が仕事をすることで成長していることに、満足感を覚えたし。いろんな人と知り合ったり、新しいプロジェクトに参加できたりするとそれだけでうれしかった。つまり、お金以外のことがモチベーションになっていたんです」

 「ところが、40を過ぎると、仕事もマンネリ化してくる。そんなに目新しいことはないですし、若いころのように成長を実感できるような仕事もない。それで気がつくと、そこそこもらえている自分がいるわけです。確かに昔のようにベースアップはないですし、ボーナスだって下がりました。20代のころに自分が想像していたほど、もらえてはいません。でも、中小企業に比べるとやっぱり大手はいいんですよ」

 「おまけに子供の教育費や家のローンだってある。そうなると、今の会社は絶対に辞められないよな、って思うわけです。するともう一人の自分がたしなめる。金のためにしがみついているなんて、カッコ悪いって。何か自分がすごいせこいヤツになっているみたいで。たまにやるせない気分になることがあるんです」

 こう語るA氏を、“ただ乗り社員”と呼ぶ人もいるだろうし、「何をウダウダぜいたくなこと言ってるんだ。要は一生懸命働いていない自分への言い訳じゃないか」と非難する人もいることだろう。

 でも、恐らく本人が一番そのことを分かっている。だからこそ、何とも言えない情けない気分に苛まれているのだ。

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「「お金のために会社にしがみつく」自分に嫌気が差す瞬間」の著者

河合 薫

河合 薫(かわい・かおる)

健康社会学者(Ph.D.)

東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。産業ストレスやポジティブ心理学など、健康生成論の視点から調査研究を進めている。働く人々のインタビューをフィールドワークとし、その数は600人に迫る。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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川野 幸夫 ヤオコー 会長