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まずは実績、「クイックウィン」を作れ

第5ステップ:チームを前に動かすための動機づけ

  • 今北 純一

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2010年12月14日(火)

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 いざプロジェクトが始動したら、時間をかけて大きな成功を収めようとするよりも、まずは実績を示すための「クイックウィン(素早い成果)」を作ることが重要です。

 どんなに理屈を並べ立てても、またいくら綺麗ごとを訴え続けても、具体的な実績がなければ、他人に対しての説得力はありません。しかし、何をするにも必ず「初め」というものがありますから、何が何でも実績だけが、信用・信頼のための唯一の判断基準だとする考え方には偏りがあり過ぎます。

 私が日本の組織の行き過ぎた“実績至上主義"を痛感したのは、1999年に、現在のCVA(コーポレート・バリュー・アソシエイツ)東京オフィスを立ち上げた時でした。CVAと言えば、欧州では経営戦略に特化したコンサルティング会社としてその存在を知られていますが、当時の日本ではまったく無名でした。そんなブランド力がゼロからのスタートで日本企業にアプローチをしていくと、必ず聞かれることがありました。

 一番多かったのが、「日本での実績はお持ちですか?」という質問です。日本にオフィスを開設したばかりで、これからコンサルティング事業を展開していくのですから、「実績を築きあげていくのはこれからです」、私がそう答えると、打ち合わせをした相手の人たちの多くは、それだけで心理的に後ずさりをしたようでした。そして次の瞬間、彼らは、私の側からのコンサルティング提案について、(実績がないのであれば)検討の余地はない、という意思表示をしました。

 また、同根の質問として、「(打ち合わせをしている相手の会社にとっての)同業他社でのプロジェクト経験はおありですか?」とか、「日本でのプロジェクト契約の売り上げはどれくらいですか?」といったこともよく聞かれました。そして、このような質問を聞いているうちに、私は、不思議な気持ちになってきました。

 仮に私のほうに同業他社でのプロジェクト実績があったところで、そのこと自体が、そう質問している会社にとって一体何になるのか、これがよく分からない。ライバル会社の物まねをしたいというのなら話は別だけれども、企業の経営戦略というものは、独自に設計すべきものだから、ライバル会社の後追いではなく、先取りこそすべきなのではないのか。だったら、私の提案内容を検討するにあたって、同業他社でのプロジェクト実績のあるなしを前提とする、というアプローチは的外れなのではないか。そのようにも思いました。

 そして私が理解したことは、このような質問をしてくる人たちは、自己保身的なマインドセットを共通項として持っているということでした。プロジェクト契約を発注するという行為において、委託先のコンサルティング会社のブランドが著名であれば、そのプロジェクト結果に関しての評価が社内でかんばしくないといった状況になったとしても、発注した人間の責任は問われない。

 ところが、ブランド的にはよく知られていないコンサルティング会社に発注した場合、成果物についての評価の責任は発注者であるその人間に集中する。だから、慎重の上にも慎重を期し、「実績」を担保として取っておきたいという心理になる。自己保身的なマインドセットと表現しましたが、こういったアプローチを選択する人たちは、実際にはたくさんいるということが私にとっての1つの発見でもありました。

小さくてもいい。実績を早く作る

 このような「実績主義」に直面して、私は2つのアクションを実行、実現していくことを自分に課しました。

 会社の規模とかブランド、あるいは役職・肩書きで人を信用したりしなかったりする人間ではなく、個人に帰属するビジネスの実践経験や知見、それと個人としてのパッションとコミットメントなどをベースに信用して、プロジェクトを発注するという器量と戦略的なマインドを兼ね備えた人たちとの出会いに優先順位をシフトすることがまず1つ。そしてもう1つは、クイックウィン(素早い成果)を作ることです。実績だけを見て人を判断することには問題がありますが、実績を作らないことにはいつまでたってもゼロのままで、ビジネスにはならないからです。

 こういう背景から着目したのが、当時の通商産業省(現経済産業省)でした。通産省では、日本企業が行う輸出入や海外投資・融資といった対外取引に伴うリスクを填補する貿易保険を管轄していましたが、中央省庁の再編に伴って、2001年に独立行政法人日本貿易保険(NEXI)が設立され、引受などの実務を担うことになっていました。通産省から独立行政法人へと運営母体が変わるために、人事考課制度や給与体系など様々なシステムが変更されることになると予測できたことから、海外における貿易保険がどのような組織やシステムで運営されているかといったことをベンチマークしてはどうかと考えたのです。

 貿易保険を独立行政法人が管轄するのは日本で初めてのことですから、前例はありません。そこで、日本が参考にできそうなカナダ、英国、ドイツ、フランスの4カ国で貿易保険に関する調査を実施することを、独立行政法人への移行準備を進めていた通産省に提案しました。そして、この時、ヨーロッパを出自とするCVAの付加価値を持たせるべく、ある工夫を凝らしました。資料を調査して分析するというだけでは、その分析の緻密さや提言の中身と質を度外視すれば、表面的には有意差は出ません。私は、資料の事前調査に加えて、4カ国それぞれの機関について、実務担当者やマネジメントの責任者という立場の人たちに対して、直接インタビューを実行するプログラムを提案の中に入れました。

 また、クイックウィンには「スタートスモール」を原則として機敏に動けるプロジェクトチームが重要です。

 私はこのプロジェクトのメンバーに、オーストラリア人のダイアンとドイツ人のアンケという女性のコンサルタント2人を選抜しました。英語を母国語とするダイアンにはカナダと英国を分担させ、フランス語でも仕事ができるアンケには、ドイツとフランスを分担させました。

 こうして、4カ国それぞれの国で、それぞれの国のコトバでのインタビューを実行できるチーム作りが出来上がりました。そして、短期間のうちに、生きたデータと情報を一気呵成に取得し、これを資料の調査分析結果とつき合わせたレポートを作成することができました。総括的な内容のチェックと、政策的な提言部分については、私が責任をもってあたりました。

会社のブランドが神通力にならない状況は、個人が仕事で成長するチャンス
クイックウィンは、対外的な信用と、自分自身への自信をもたらす

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