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“使えない上司”を生むイマドキの事情

人間ゆえの思い込みが、ギャップを拡大させる

2010年12月16日(木)

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 あの上司さえいなければ……。日々そう願う部下は少なくない。

 会社を選ぶことはできても、上司を選ぶことはできない。気に入らない部下を飛ばすことはできても、気に入らない上司を飛ばすことはできない。だから、上司・部下関係で被害を受けるのは部下──。

 確かに、「上司との折り合いが悪く」会社を辞めたという人の話はよく聞くが、「部下との折り合いが悪く」会社を辞めたという上司には、いまだに出会ったことはない。

 もちろん、たまたま私が出会っていない、あるいは、本当はそうであったとしても、「部下が原因で辞めた」など、そうそう打ち明けられることではないので、実態が把握できていないだけかもしれないけれど。

 いずれにしても、「どんな上司を持つか」は、部下たちにとって最大の関心事である。「仕事がすべてじゃない」といったところで、1日の3分の1以上の時間を仕事に費やすのだから、パートナーとの関係よりも大きな問題になることだってある。

 特に中小企業の場合は、“使えない上司”と運悪く出会うと最悪である。大企業なら、定期的な異動があるため、それに望みを託すことができる。「2年間だけ我慢しよう」と決め込み、何とか我慢する。しかしながら、中小企業ではそうはいかない。何らかの理由がない限り、永遠に上司・部下であり続ける。その上司が辞めるか、自分が辞めるかまで関係性が続いてしまうのだ。

 だから余計に部下たちは、「ダメ上司はたまったもんじゃない」と不満を募らし、ストレスの雨にびしょ濡れになる。

上司だけが悪者なのか?

 だが、最近は上司たちの方も、かなり大変そうなのだ。

 「おい、結局は若者批判かよ。本当に使えない上司も、アホ上司もいるし、部下たちは困ってるんだぞ!」などとしかられそうではあるが、それでもやはり上司は上司たちで、気の毒になるほど大変な世の中になったと思えてならない。

 「部下たちがウツになりでもしたら大変だから、扱い方には十分に気をつけるように」とトップからくぎを刺され、やすやすと怒ることすらできない。

 ちょっとでも感情的になってしまうとパワハラだの、「上司のせいでウツ病になった」などと診断書を突きつけられることもある。

 明らかに上司に問題があるケースは別として、第三者からすると、ちょっとしたコミュニケーションミスや行き違いで大きな問題と化していたり、さほど問題のないようなケースでも、上司に批判の矛先が向けられることがある。  

 「上司は悪くて、部下は正しい」といった、世の中に蔓延するイデオロギーが悪いのか。はたまた、自分の権利ばかりを主張する風潮が悪いのか。

 いずれにしても、一昔、いやいや、二昔前なら、「上司は偉い。上司は正しい」で通ったのだろうが、時代は上司オリエンテッドから、部下オリエンテッドへと、パラダイムシフトらしきものが起こっている。

“部下志向”の風潮を批判する気はないが……

 当然ながら、昔から部下たちにとって上司は煙たい存在であり、批判もすれば、ケチだってつけた。ただ、かつては、そんな不満をガス抜きできる“場”があったから何とかなった。

 例えば、「今日は無礼講で行くぞ~」なんて酒の席が頻繁にある時代なら、酒の勢いを借りて上司にからむこともできた。同期がたくさんいた時代には、ダメ上司や使えない上司の愚痴を酒のつまみにすることもあった。

 ところが、「無礼講」なんて死語と化しているし、同期も少なきゃ、後輩だって入ってこない。ガス抜きできなきゃ、不満はたまる。使えない上司のおかげで、仕事がちっともはかどらない。気分だって落ち込み、やる気だって失せる。

 酒で紛らわしていた時代なんかより、部下がもの言う今の世の中の方がよほど健康的だし、基本的には上司は強者で、部下は弱者なのだから、部下オリエンテッドの世の中を、批判する気は毛頭ない。

 しかしながら、上から理不尽に怒られることに慣れてはいても、下から攻められることに慣れていない中間管理職たちが、部下からの攻撃に自信喪失している姿を目の当たりにすると、少しばかり気の毒になることもあるわけで。

 先日も、役員から「部下たちが不満を募らせている」ことを知らされ、かなりへこんでいた中小企業に勤める男性に会った。部下たちは、「あの上司の下では働けない」と、役員に直談判したのだという。

 そこで、今回は、昨今の上司・部下関係について、考えてみようと思う。

 「正直落ち込みました。自分がそこまで部下たちから、ヒンシュクを買っているとは思ってもいなかったですから。部下たちは、“何もやらない”って僕のことを批判したそうです。僕は僕なりにしっかりやっているつもりなんですけど、ね」

 「部下からすると、何もやっていないと。それで僕を飛び越えて、上に“仕事の意識が低すぎる。無責任で、やる気がない。あんな上司の下ではこれ以上、働きたくない”って言ったそうです。何とも……、トホホ、ですね」

 40代半ばだというこの男性は、「部下に批判されたくらいでひるむな!」と自分を鼓舞する一方で、「部下に批判されるほどどうしようもない上司だったのか?」と落ち込み、情けないやら頭にくるやら、どうにもこうにも、やるせない気分に陥っていた。

 しかも、彼にとって部下たちの批判の中身は、「そんなことで?」と思えてしまうことだったのである。

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「“使えない上司”を生むイマドキの事情」の著者

河合 薫

河合 薫(かわい・かおる)

健康社会学者(Ph.D.)

東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。産業ストレスやポジティブ心理学など、健康生成論の視点から調査研究を進めている。働く人々のインタビューをフィールドワークとし、その数は600人に迫る。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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檜山 敦 東京大学先端科学技術研究センター 講師