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第5話 過大な内部留保が経済の成長を妨げる

  • 草野 耕一

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2010年12月17日(金)

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配当政策の他律性

 株主: 「今年の業績を考えると1株10円の配当はいかにも少ない。せめて、あと2円増やして1株12円の配当にしてはどうか」
 社長: 「我が社はこれまで長年にわたり1株10円の安定配当を続けてきた。業績不振な年には積立金を取り崩して10円の配当を維持した。是非この長期方針を御理解いただき、本年についても1株10円の会社提案に御賛同願いたい」

 これは日本の株主総会でよく耳にする経営者と株主間の問答の一コマである。しかしながら、この問答に登場するお二人はいずれも配当政策の基本原理を誤解しておられるようだ。なぜならば、

(1) 単に配当金を増やしても株主は何ら得をしない。配当金と残りの株主価値の合計額は原則として不変であり(5円配当を支払えば株価は5円下がる)、配当金に対する課税を考慮すれば、配当の増加はむしろ合計額の減少を招く。
(2) 毎年の配当金を同額にしても何ら付加価値は生まれない。配当金と残りの株主価値の和が不変である以上、配当金だけを固定しても株式投資全体の収益(=配当金+キャピタル・ゲイン)の不確実性は変わらない。

からである。

 しからば、あるべき配当政策とは何か。例外となる事由は後で述べることとし、まずは原則論を述べよう。配当政策は投資政策と資本政策を決めることによって自動的に定まるものであり、それ以上の独自性を配当政策に求めることは誤りである。以下、その意味を説明する。

 投資政策については3話で述べた。確認すると、その基本原理は、「純現在価値(NPV)がプラスの投資は行い、マイナスの投資は行わない。既存の事業についてもこれを資産の再投資と考えてそのNPVをチェックし、NPVがマイナスであってしかも改善の見込みがない場合には速やかに当該事業を終了させる」というものであった。一方、資本政策とは企業の金融資本の構成を決める政策のことであり、その中心課題は1株あたりの株主価値を最大化するためには株主資本と負債との構成比率をいくらとすることが最適かを求めることである。詳しくは7話で論じるが、ここでは議論を簡単にするために、「金融資本の構成は100%を株主資本とすることが最善である」という資本政策が決定済みであると仮定する。

 投資政策と資本政策が定まれば自動的に配当政策も定まる。たとえば、ある企業(以下、「A社」という)が来年度の投資政策を上記の原理に則って決定したところ新規投資または再投資にあてるべき資産以外の資産が時価ベースで20億円分あったと仮定しよう。この場合、A社にとってはこの20億円相当の資産を(現金以外の資産については売却したうえで)全て配当にあてることが最善の配当政策である。なぜならば、

(1) 上記未満の配当しかしないとすれば、分配しない資産をNPVがマイナスの投資に回さざるを得ない。よって株主価値はそのマイナス分だけ減少する。
(2) 上記以上の配当をしようとすれば、正のNPVのプロジェクトの実施を断念するか、新たに資金を調達してこれを実施するかいずれかの道を選択しなければならない。前者を選べば、断念したプロジェクトのNPV分だけ株主価値の上昇は妨げられる。後者の道を選ぶためには、必要資金を借入金で調達するか株主資本で調達するかしなければならならいが、借入金を増やせば最適な資本構成(ここではそれが100%株主資本であると仮定している)が維持できなくなるし、新規の株主資本を調達すれば結果は増配しなかった場合と同じであるが、株式発行費用として少なからぬ金額が支出された分だけ株主価値の低下は避けられない(※1)

からである。

※1 配当に対する投資家レベルでの課税を考えれば株主の利得はさらに減少している。

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