あけましておめでとうございます。
昨年10月20日からスタートした本連載ですが、「ローカリゼーションって、海外市場向けだけでなく、国内や人の関係でも言えることですね」と読者の方からメールを頂くことがあります。そういう声が嬉しいです。
なぜなら、意識の変化を促し、新たな視点を持ってもらうことが、ローカリゼーションについて書く、もう一つの目的としてあるからです。今年もいろいろなアングルからローカリゼーションを語ってみます。そこから何らかのヒントを得ていただければ幸いです。
さて、ここからいつもの調子へ。今回のテーマは、アートです。
西洋美術の文脈を読み込んだ
現代美術家の村上隆の展覧会が、パリ郊外のヴェルサイユ宮殿で昨年9月から3カ月間にわたって開催されたのをご存じだろうか?
ヴェルサイユ宮殿には現代美術の展覧会を10年もの間、継続的に毎年開催するというプログラムがある。村上隆は3年目、つまり3人目のアーティストに選ばれた。
17世紀のバロック様式の建物の中に、村上隆のポップな作品が展示された。「フランスと言えば、豪華絢爛たるヴェルサイユ宮殿」と思い描く、現代美術に全く関心のない観光客の目にも村上隆の作品が触れた。「誰? タカシ・ムラカミって?」というところから始まっている。
2003年、フランスのルイ・ヴィトンとのコラボレーションでポップなバッグをデザインしたことが、日本で村上隆の名前が一般的に知られた契機だったろう。そもそもは2001年から始まった米国での『スーパーフラット展』の巡廻で大きな反響を集めたことが、海外市場においてアーティストとして地位を確立した。
その後の活躍の詳細は省くが、作品の市場価値は世界でトップクラスである。1作品に、数億円の値がつくことも珍しくない。日本の美術市場で売買される日本人の大家の作品と比較すると、ゼロの数が1つもしくは2つは多い。
村上隆は日本美術とそのサブカルチャーを自ら解釈し、その特徴を「スーパーフラット」と名づけた。二次元的な表現について日本のアートやマンガを包括した概念と言ってよい。それを西洋美術史の文脈にうまく乗せきった。
すなわち、まず西洋美術市場のコンテクストとロジックにマッチする日本文化の見せ方を考え、そのうえで自分の作品をフィットさせた。自身の著書である『芸術起業論』(幻冬舎、2006年)に、その辺りの事情が記してある。
これを私はローカリゼーションの成功事例として考えた。拙著『ヨーロッパの目 日本の目――文化のリアリティを読み解く』(日本評論社、2008年)の冒頭で、村上隆の事例を引用し、「こうした文脈の読み込みについて(日本の)メーカーは案外フォローしきれていません。日本についてその重要性を分かっても、外国での要求については忘れがちなのです。あるいは気が回りません」と書いた。今から2年以上前のことだ。
2010年12月初め、みぞれが降る中、私はヴェルサイユ宮殿に向かった。「村上隆のローカリゼーション、その後」を実際に見ておこうと思ったのだ。
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1958年横浜市出身。上智大学文学部仏文科卒業。日本の自動車メーカーに勤務後、イタリアでビジネスプランナーとして独立。現在、ミラノ在住。デザイン、食品、文化論などを活動領域とする。著書に『
1965年東京出身。デザイナー、デザインディレクター。桑沢デザイン研究所卒業後、建築設計と工業デザインを手掛ける黒川雅之建築設計事務所に入社。プロダクトデザインを担当し10年目に退社後、1997年テツタロウデザイン開設。文具、日用雑貨から住宅設備機器などのデザイン、中小企業へのデザインディレクションも行う。社団法人日本インダストリアルデザイナー協会正会員。日本大学芸術学部デザイン学科非常勤講師。Twitterは

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