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第11話「それには50億円も運転資金が必要になる。うちの会社にはそんなカネはない」

2010年12月22日(水)

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前回までのあらすじ

 団達也と細谷真理は沢口萌にMTCで一緒に働こうと誘った。萌は達也の前ではすぐにその誘いを断った。間中隆三にそそのかされたとはいえ、自分はジェピーで不正を働いていた。そんな自分が、達也と真理とまた働くなんて考えられなかったからだ。

 真理は萌を食事に誘い、萌の力を貸してほしいと言い、萌は真理の思いに引き込まれていく自分を感じていた。

 シンガポールのMTCラボでは金子順平が発明した電池部品「K01」の生産が順調に進み、世界中から注文が入っていた。その規模は、1日3億円以上のペース、1カ月で100億円にもなることが確実だった。

 ところが、達也はこれ以上注文を受けないように金子に指示していた。

萌の逡巡

 自宅のワンルームマンションに戻ると、萌はそのままベッドに横たわった。
 思いのほか疲れていた。

 萌は横向きになり、文庫本がぎっしり並べられた本棚に目をやった。そのすべてのストーリーを覚えている。声に出して説明もできる。何度も読み返したからだ。子供の頃から、本だけが友達だった。いやなことがあっても、本はすべてを忘れさせてくれた。

 その中でもで数冊だけサイズの大きな本があった。税理士試験用のテキストだった。

 ジェピーで働いていた頃、税理士になるんだ、と希望に燃えていた真理がうらやましいと思えてならなかった。自分も真理と同じように何か目標を持ちたいと思って予備校に通い出した。会計や税務の勉強は意外と自分に合っていると思った。時間を忘れて勉強に没頭し、窓の外が明るくなっていたこともあった。そんな時は、始発の電車に乗って、丸の内のジェピー本社に出社した。

 今となれば、懐かしい思い出だ。
 だが、一度も試験を受けることはなかった。

 (真理ちゃんがうらやましい)

 と、萌は思っている。はっきりと自分の意見を言うし、仕事もきちんとこなす。中でも一番うらやましいのは、達也に信頼されていることだ。ジェピーにいた時も、ヒノハラに移った後も、そして今のMTCでも真理は達也と一緒だ。

 以前、萌は間中や班目と一緒になって、二人の間を勘ぐったことがあった。だが、そうではなかった。達也は真理に全幅の信頼を置いていたのだ。だが、自分がしてきたことといえば、達也と真理への裏切りの連続だった。

 なのに、真理はそんなことはおくびにも出さずに、「あなたの気概を見せてほしい」とだけ言った。

 思い起こせば、達也から批判されたことは一度もない。達也は、銀座の店にやってきて、小遣では払えないほどの飲食代を使い、会社の交際費で落としているようなエリートサラリーマンとは違っていた。偉ぶることもなく、いつも自分をリスペクトしてくれていた。

「熱血!会計物語 ~社長、団達也が行くseason2」のバックナンバー

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「第11話「それには50億円も運転資金が必要になる。うちの会社にはそんなカネはない」」の著者

林 總

林 總(はやし・あつむ)

公認会計士

外資系会計事務所、監査法人勤務を経て開業。国内外でビジネスコンサル、管理会計システム導入コンサルのほか、大学で実践管理会計の講義を行っている。また管理会計の草の根活動として、団達也会を主宰。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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