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人類学の知見から考えた企業の変化適応力の高め方

文化を創出する人間本来の能力を生かす

2011年1月14日(金)

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「経営レンズ箱」はこちら(2006年6月29日~2009年7月31日まで連載)

 学問の進歩というのはなかなかのもので、自分が学校教育を受けた時には全く習わなかったようなことが、(こちらが知らないだけなのだが)いつの間にか定説となっているという事態にたびたび出くわす。

 分子生物学を活用した人類学の新しい知見もその1つだ。ここ20年ほどの間に、DNA分析の手法が進化し、遺跡から発掘された人骨のミトコンドリアDNAを解析することが可能になった。この結果を、これまでの考古学や形態的人類学の研究成果と合わせることで、以下のように、実に興味深いことが明らかになってきている。

―  現生人類(人類学の分野では「新人」と呼ばれる)全員が、共通の祖先を持っている。
―  具体的には、アフリカに生きていたたった1人の女性が、地球上に生きている我々全員の祖先であり、彼女の持っていたタイプのミトコンドリアDNAを我々は引き継いでいる(他のタイプのDNAを持つグループも存在しただろうが、現在まで生き残っているのは、この1つのタイプから変異したDNAを持つ人間だけである)。
―  我々の祖先のグループの一部は、5万~7万年前ごろ、アフリカを出て、その後、世界各地に広がっていった。
―  気候や食料の状況など、さまざまな環境要因に適応するため、異なった地域に定住したグループは、それぞれ肌の色や身体の大きさといった形質的な違いを有するようになった。従って、現時点での違いは、出アフリカ以降の(ミトコンドリアDNA以外のさまざまな遺伝子にかかわる)変化の結果であり、共通の祖先から生まれていることと矛盾しないし、我々はいまだに生物学的には同一種である。
―  日本には、(恐らく)3万~4万年前に我々の祖先のグループが到達し、その後に大陸から稲作と金属器文化を持って移住してきたグループとの混血によって、現代の「日本人」が形成された。

 こちらの不勉強を取り戻すべく、この分野の本をいろいろ読んでみたのだが、本当に面白い。いくつか例を挙げると、『人類の足跡10万年全史』(スティーヴン・オッペンハイマー著、草思社)、『5万年前―このとき人類の壮大な旅が始まった』(ニコラス・ウェイド著、イースト・プレス)、『日本人になった祖先たち』(篠田謙一著、NHKブックス)などだ。

人類の拡散を加速したのは文化の力

 最近読んだ中で興味深かったのは、『人類がたどってきた道:“文化の多様化”の起源を探る』(海部陽介著、NHKブックス)という本だ。

 国立科学博物館所属の研究者である著者は、ホモ・サピエンス(新人)の世界各地への拡散を踏まえたうえで、ホモ・サピエンスは他の生物と異なり、「自然環境の異なる新しい土地に進出するに当たって、身体構造の生物学的進化を待たずに、文化的手段をもって適応できた」と述べる。

 形質的変化も一定程度あったとはいえ、生物の歴史の尺度で言えば速いスピードで世界各地に拡散できたのは、「文化の力」があったからだというのだ。外観・風貌の違いにかかわらず、ホモ・サピエンスは、「世代を超えて知識を蓄積し、祖先から受け継いできた文化を創造的に発展させていく能力」を共通して持っている。

 この能力を出アフリカ以前に獲得したこと、そして、その力を使って、新しい環境に即した文化を作り上げてきたことが、我々が世界各地で生き抜いてこられた最大の理由だという主張である。

 考えてみれば当たり前のことなのだけれど、産業革命以降の生産性の爆発的向上は、生物学的・遺伝的進化によってなされたものではない。

 文化という言葉を広い意味でとらえ、
―  先達の得た知識を学習したうえで、
―  さらに、新しい環境に適応していくため、あるいは、より豊かな生活を可能ならしめるために、新たな知識を創造し、文化的基盤として作り上げていくことを繰り返していく、
 ことこそ、我々のいわば存在基盤であるということだろう。

 やや皮肉なことに、グローバルにヒト・モノ・カネが行き来する時代になり、この「それぞれの環境に応じた文化構築」の結果として生まれた「文化の多様性」自体が、「文化摩擦」という言葉に代表される異文化間のコンフリクトを生んでいるのも事実だが……。

コメント1件コメント/レビュー

社会的ダーウィニズムの焼き直し?なんとなく母性賛美な感動を取っ掛かりにしつつダーウィニズムの話しと企業に結びつけようとしているように感じるが、生き残るの種は強いものではなく適用力とスピードが大きいものってことで言い尽くされ済みと思う。因みに人間という種の中で女系で最も遡れたのがミトコンドリアイブ(ラッキーマザー)という話しであり、イブの旦那(アダム相当)の母は、DNAマップ的に辿られないかも知れないが存在しており、子孫を残していると思われ。ラッキーなイブと違い、他の女系は娘に恵まれず廃れたという話しでもある。結果1系のみ残った訳だが、「たった1人の女性が」という感嘆が沸くほどの話しでもないように感じる。(2011/01/14)

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「人類学の知見から考えた企業の変化適応力の高め方」の著者

御立 尚資

御立 尚資(みたち・たかし)

BCG シニア・アドバイザー

京都大学文学部卒。米ハーバード大学経営学修士。日本航空を経てボストン コンサルティング グループ(BCG)に入社。BCG日本代表、グローバル経営会議メンバー等を歴任。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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社会的ダーウィニズムの焼き直し?なんとなく母性賛美な感動を取っ掛かりにしつつダーウィニズムの話しと企業に結びつけようとしているように感じるが、生き残るの種は強いものではなく適用力とスピードが大きいものってことで言い尽くされ済みと思う。因みに人間という種の中で女系で最も遡れたのがミトコンドリアイブ(ラッキーマザー)という話しであり、イブの旦那(アダム相当)の母は、DNAマップ的に辿られないかも知れないが存在しており、子孫を残していると思われ。ラッキーなイブと違い、他の女系は娘に恵まれず廃れたという話しでもある。結果1系のみ残った訳だが、「たった1人の女性が」という感嘆が沸くほどの話しでもないように感じる。(2011/01/14)

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