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地元の女性が殺到する旅館「鶴雅グループ 森の謌」

2011年1月17日(月)

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 オープン直後から、地元の女性客が押し寄せて、満室が続く――。

 北海道の「定山渓鶴雅リゾートスパ 森の謌」は、昨年10月に開館してから、驚異の集客力を発揮している。前回のコラム「あえてビュッフェでおいしさを実現する旅館『鶴雅グループ 森の謌』」で見たように、一見すると、老舗旅館の逆を行くような戦略をとっている。部屋食をやめて、ビュッフェ形式で食事を提供しているのは、その象徴だと言える。

女性客から支持を集める「定山渓鶴雅リゾートスパ 森の謌」のビュッフェ

 前回は、このビュッフェ戦略が、コスト削減という発想で取り入れられたわけではないことを解説した。部屋食は、実は食べたくもない料理まで部屋に持ち込まれる危険が高いのだ。しかも、男性客まで満足させるため、女性には多すぎる量を作ってしまいがちだ。つまり、部屋食では、ムダなコストを宿泊客が負担することになってしまう。

 「料理の質と満足度(付加価値)を、極限まで高める」。これが、ビュッフェ戦略の深意である。

 では、どうやって「チープなサービス」と見られがちなビュッフェで、老舗旅館に匹敵する満足度を達成したのか。その秘訣を知るために旅館の裏側を見ていこう。そこには、サービス業の概念を超えた仕組みがあった。

旅館に「カンバン方式」

 ビュッフェでよく見る、大量に作り置きされた大皿料理。下から加熱することで、温かさこそ保っているものの、時間がたってしまった料理は新鮮さを失っている…。寿司のネタは乾燥していることすらある。

 ところが、森の謌のビュッフェは、この「効率化」の図式を否定する。皿は、なぜか小さな皿で陳列されている。それは、客が食べるスピードに合わせて小まめに補充するためだ。常に新鮮な料理を作る、という品質重視のビュッフェなのである。

 人気のある料理が、常にフレッシュな状態で提供できる。だから、結果として食事の満足度が高まる。

 「そんなことをしていたら、調理作業に時間がかかるし、ムダが膨らむじゃないか」という指摘もあるだろう。確かに多品種少量だから、調理場にかかる負荷が高い調理オペレーションになっている。だが、一方で大きなコスト削減が実現していることには、人々はなかなか気付かない。

 実は、客が食べる速度で料理を作るという作業は、食品残渣(食べ残し)を極小化する。人気のある料理はすぐにビュッフェの皿が空になり、それが厨房に下げられ、料理が新たに作られて客の前に並べられる。実は、この皿はトヨタ生産方式で言う「カンバン」に当たる役割を果たしているのだ。「厨房のカンバン方式」とでも言おうか。

 これが実現したことで、厨房に革命が起こった。トヨタ自動車の「顧客がクルマを買うスピードで、工場がその分だけ生産する」という基本理念が、旅館の調理場で実現しているのだ。つまり、森の謌では、料理を食べるという「消費」と、料理を作るという「生産」が、同時に起きる。皿が調理場とレストランを往復してグルグル回り、カンバンの役割である「補充の指示書」になっているわけだ。

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「地元の女性が殺到する旅館「鶴雅グループ 森の謌」」の著者

内藤 耕

内藤 耕(ないとう・こう)

サービス産業革新推進機構代表理事

世界銀行グループ、独立行政法人産業技術総合研究所サービス工学研究センターを経て現職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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