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アフリカで見た教育への希望とそれが失われた日本

認識ギャップを埋めない限り、「就職難」は解消しない

2011年1月28日(金)

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 以前、ケニアに行く機会を得た。国連のWFP(世界食糧計画)のお手伝いをしている関係で、食糧援助の現場に行くことになり、ソマリアとの国境にある難民キャンプ、干ばつが続いて家畜を失った遊牧民の仮居住地、そして首都ナイロビにある世界最大のスラム、キベラの3カ所を回った。

 その際に感じたエイズをはじめとする感染症の問題については、一度このコラムの前身(関連記事:アフリカで見たもの)でも触れたので、ご記憶の方もいらっしゃるかもしれない。

 今回は、今振り返ってみても、ケニアで見聞きしたことの中で一番ガツンと衝撃を受けたことについて書いてみたい。極度の貧困や生命の危機に囲まれた状況での、「次世代の将来をつくるもの」への熱情ということについてである。

援助物資よりも教育を望んだケニアの人々

 ケニアで回った3カ所それぞれで、同じ質問をしてみた。食糧援助の現場なので、「食糧以外に、どのような援助を期待しますか」という内容だ。

 日本人からのこういう質問に対して、もし読者の皆さんが次のような立場に置かれていたら、どういう答えをすると思われるだろうか。

内戦で国を追われ、数百キロメートルにもわたる距離を、ゲリラや強盗の襲撃の恐怖に襲われながら逃げてきた難民
生活の糧であり、さまざまな文化の中核でもある家畜たちを相次ぐ干ばつですべて失ってしまった遊牧民
エイズで両親をなくし、思春期の10代から小学生までの4人だけで、段ボールとほんの少しの板切れを組み合わせたスラム街の家で暮らす子供たち

 その場にいた私は、大変恥ずかしながら、「衣類や医薬を欲しがるかな、あるいは日本人ということで、何か家電製品が欲しいと言うのだろうか」と浅薄なことを考えていた。

 ところが、返ってきた答えは、3カ所とも同じ。何と「教育を援助してほしい」というのだ。

 難民キャンプでは、次のような答えが返ってきた。

 「自分たちの国は、自分たちの世代ではきっと復興に至らないだろう。ただ、ここにいる子供たち、ここでこれから生まれてくる子供たちの世代が、平和になった国に帰れるようになった際に、ソマリアの復興に役に立ち、かつ暮らし向きの良い生活ができるようにしたい」

 「ついては、難民キャンプの中での初等教育だけでは不足なので、中学、高校を作る、あるいは外の学校に優秀な子だけでも行けるように奨学金制度を作る、といったことを、是非お願いしたい」

 自らは読み書きのできない遊牧民は、次のように語った。

 「遊牧をしている限りは、学問というのはあまり意味があるとは思えない。(部族のしきたりや遊牧の中での伝承を通じて)必要なことは自然と覚えられるから。ただ、村に定住するとなると、子供たちは、村の子供たち同様に、読み書きができ、数字を操れるようにならないと、対等に暮らしていくことができない。仮住まいの定住地ではあるが、何とか、小学校の教育を提供してもらえるよう助けてもらえないか」

 スラムに住む4人兄弟の2番目の男の子は、中学レベルの学校で優秀な成績を上げているらしいのだが、自分もエイズに感染しており、既に腹水がたまって大きくお腹がふくれている。

 そういう状況で、「自分は勉強が好きなので、上の学校に行きたい。そして、キベラ(スラム地区)に住んでいる、自分と同じような境遇の子供たちを教える教師になりたい」と夢を語り、はにかみながら、それを助けてもらえるとうれしいと答えた。

 正直なところ、私自身には、とても考えが及ばなかったような答えが、3回続けて返ってきた。

 「今現在の飢餓すれすれの状況から抜け出すのに、食糧を援助してくださって本当にありがとう。でも、これからのことを考えると、『教育』を助けてもらえることが、もっともありがたい」

 要約してしまえば、こういうことだろうが、同様の問いを先進国で貧困に苦しんでおられる方に投げかけてみたら、どういうふうに返ってくるだろう。逆に、さまざまな支援活動に携わる側に聞いてみたら、どうだろうか。

 就業訓練の話はきっと出てくるような気がするし、何人かの方は「子供たちの教育」に触れられるだろう。ただ、ケニアで聞いたような「初等・中等教育さえきちんと受けられれば、子供たちの将来は、きっと今より良いものになるはずだ」という、未来に向けた強い気持ち、教育に対する深い信念と熱意、というものは、同じレベルでは返ってこないような気がしてならない。

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「アフリカで見た教育への希望とそれが失われた日本」の著者

御立 尚資

御立 尚資(みたち・たかし)

BCGシニア・パートナー

京都大学文学部卒。米ハーバード大学経営学修士。日本航空を経て現在に至る。事業戦略、グループ経営、M&Aなどの戦略策定・実行支援、経営人材育成、組織能力向上などのプロジェクトを手がける。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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