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「優勝劣敗」をいかに実現するか

秋山真之と『孫子』に学ぶ戦略と戦術〈5〉

2011年2月16日(水)

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 秋山真之は、海軍で同期生だった森山慶三郎(日露戦争では第二艦隊参謀)に対して、学ぶべきお勧めの兵書を手紙で送ったことがあります。その詳細は以下の通りでした。

“On War” by Clausewitz (『戦争論』クラウゼヴィッツ 岩波、中公文庫に全訳)
“Art of War” by Jomini (ただし一般的には、“Summary of the Art of War” 『戦争概論』ジョミニ 中公文庫に全訳)
“Operations of War” by Hamley (『戦争の作戦』ハムレー)
“Reflections on the Art of War” by Hart  (『兵法随想』ハート)
“Treaties of Naval Tactics” by Macaroff  (『海軍戦術論』マカロフ 日露戦争時のロシア太平洋艦隊司令長官)
“The Nation in Arms” by von der Goltz(『国民皆兵論』ゴルツ)
“The Conduct of War”   〃    (『戦争の指揮』同上)

 筆頭は、『孫子』と並び称されるクラウゼヴィッツの『戦争論』。いかに真之が高く評価していたのかがわかります。そして、これが明治という時代の面白さなのですが、当時『戦争論』の邦訳に一役買っていたのが、文豪・森鴎外(本名、林太郎)だったのです。しかもこの鴎外と、真之の兄である好古は同じ陸軍の親しい間柄でもありました。文学者との組み合わせという意味では、真之と正岡子規というコンビがよく知られていますが、明治の偉人の人物模様、なかなかに奥深いのです。

『戦争論』を翻訳した森鴎外

 小説『舞姫』でも知られているように、森鴎外は19歳で軍医となり、22歳でドイツに留学しました。そしてその間、450冊を超える本を読んだそうです。そこで『戦争論』に出会い、

 「クラウゼヰツツは兵事哲学者とも謂う可き人なり。其文旨深遂、独逸留学の日本将校等能く之を解すること莫し」『独逸日記』

 と自ら日記にも記しています。また、その難しい内容を他の将校から講義するように頼まれ、第一篇のほとんどを、このときに翻訳したそうです。

 帰国後、周囲からの勧めもあってこの『戦争論』を全訳に着手し、彼はドイツ語版をもとに二編まで完成させます。ところが同じような翻訳を陸軍士官学校も行っていて、第三篇以降を、フランス語版をもとに訳し終わったことを知ると、全訳をあきらめて、二つを合わせる形に同意しました。『大戦原理』という題名でこれは頒布されました。

 そして、この森鴎外と仲が良かったのが、先ほども触れた真之の兄である秋山好古。真之は好古を経由する形で、おそらく鴎外や『戦争論』の知見を早くから知り得たのではないか、といわれています。

 実は真之の思想を考える上で、この『戦争論』には見逃せないいくつかの指摘があります。

 《敵よりも兵数が優勢であるという事は、戦術そして戦略においても、勝利の最も一般的な原理である》『超要点解説とキーワードでわかる・使えるクラウゼヴィッツの戦略』守屋淳著 ベニエ守屋そよ訳 ソフトバンククリエイティブ

 この言葉、「勝負師は「応用の才気」で勝負する」で取り上げた真之の「兵理」、つまり「戦いの原理原則」の指摘とまさしく重なり合うものです。その大意だけを、もう一度掲げておきましょう。

 「戦いには、兵理、つまり戦いのことわりがあり、これに則して戦えば勝てるし、そうでなければ負ける。この兵理はどんな場合もかわることがなく、一言でいえば優勝劣敗、つまり優れたものが勝ち、劣った者が負けるということだ」

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