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「もう無理」と言い残して“逃げた”45歳の本音

現代を生き抜くために必要なアントノフスキーのSOC理論

2011年2月17日(木)

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 「もう、無理」――。

 そう言って逃げ出したくなるほど追い詰められることは誰にでもある。だが、“普通”は、逃げ出したくても逃げ出さず、何とか耐える。

 だって、逃げればその仕事を誰かが代わってやることになるし、周りに迷惑をかけることになる。それ以上に、逃げた後、のことを考えたら、そうそう逃げることはできない、からだ。

 ところが、“彼”は、逃げ出した。すべてを放り出して……。

 「もう、僕には無理です」と言い残して、家に帰ってしまったのである。

締め切り直前に自ら逃げ出した業界誌記者

 これまでインタビューさせていただいた中で、幾度となく、「いつも通りに会社に行こうと思ったのに、行けなくなってしまった」経験を持つ方に出会ったことはあった。

・朝、家を出ようとしたら、原因不明の吐き気に襲われ、それ以来、出社できなくなった
・いつも通りに通勤電車に乗っていたが、突然、息苦しくなって行けなくなった
・会社まで数百メートルというところで、激しい目まいを覚え、会社に向かおうとすればするほど、どうしようもなくなってしまった
 といった具合だ。

 こういった経験を持つ人の多くはメンタル不全と診断され、休職を余儀なくされる。中には、今なお病気と闘っている方もいた。

 また、会社サイドの方からも、

・納期が近くなった途端に、突然、来なくなったシステムエンジニア(SE)
・顧客にクレームを言われ続けて、突然、来なくなった銀行員
・入社後わずか1カ月で、突然、来なくなり、数日後、「自律神経失調症」と書かれた診断書を送りつけてきた新入社員

 など、突然、会社に来なくなった社員に関する話を聞くことはたびたびあった。

 だが、今回の“彼”は、自分から、自分の意思で、仕事中に逃げた。

 某業界誌の記者だった彼は、数時間後の締め切りを前に、みんながいる目の前から逃げ出したのだ。

 突然、逃げられて後始末をしなくてはならない残された人たちにとっては、「ふざけるな!」という話だし、逃げることは決して褒められる行為ではない。また、仕事を放り出して逃げ出したくなることと、本当に逃げ出す、ことの間には雲泥の差がある。

 でも、「逃げた」経験をあからさまに話してくれた彼の話には、考えさせられることも多かった。

 そこで今回は、「逃げる」をテーマに考えてみようと思う。

かつては快感のもとだった締め切りが恐怖の対象に

 彼こと、A氏は45歳。某業界誌の記者をやっていた人物である。事件は1年前に起きたそうだ。

 「自分でもなぜ、あんなふうに逃げてしまったのかよく分からないんです。気がついた時には自宅に向かう電車の中でした。締め切り時間が刻々と迫る中、パソコンに向かって必死に原稿をまとめようとしていたんですが、頭が真っ白になってしまって。『もう、私にはできません。無理です』と上司に言い放って、逃げ出していました」

 「当時のことを冷静に思い出してみると、逃げる数年前から、オーバーワークになっていたように思います。昔は上司からせき立てられながらも、締め切りギリギリまで記事を書いて仕上げるのが、快感だったんですね。最善を尽くした感っていうんですかね。追い詰められれば、追い詰められるほど、アドレナリンが出る。締め切り間際に原稿を上げた時の解放感と達成感って、ものすごいわけです。ところが、ある時から締め切り時間が恐怖に変わった」

コメント119件コメント/レビュー

「逃げる」は許されない行為と糾弾している方や、逃げずに済む対処をすべき、という主張をされている方がいるが、それらは当事者の立場を創造することすらししない、「評論家」的コメントですね。(産科の例こそ、まさに評論家的)筆者も<「「逃げるな」と言われたところで、「逃げて」しまうこともある。・・・「1人で抱え込むな」と諭されても、それができないから抱え込むわけで。分かっちゃいるけど、どうにもできないから、人間は悩み、傷つき、もがくのだ。>と書かれている通り、そんなべき論で片付かない現実を改めて紹介したのが今回の記事でしょう。会社は、社会全体は、一人の人間が壊れてしまう直前まで追い込んでよいのか。そして壊れる寸前まで追い込まれてしまったら、個人はどうすれが良いのか、という提起でしょう。良い記事でした(2011/03/09)

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「「もう無理」と言い残して“逃げた”45歳の本音」の著者

河合 薫

河合 薫(かわい・かおる)

健康社会学者(Ph.D.)

東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。産業ストレスやポジティブ心理学など、健康生成論の視点から調査研究を進めている。働く人々のインタビューをフィールドワークとし、その数は600人に迫る。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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「逃げる」は許されない行為と糾弾している方や、逃げずに済む対処をすべき、という主張をされている方がいるが、それらは当事者の立場を創造することすらししない、「評論家」的コメントですね。(産科の例こそ、まさに評論家的)筆者も<「「逃げるな」と言われたところで、「逃げて」しまうこともある。・・・「1人で抱え込むな」と諭されても、それができないから抱え込むわけで。分かっちゃいるけど、どうにもできないから、人間は悩み、傷つき、もがくのだ。>と書かれている通り、そんなべき論で片付かない現実を改めて紹介したのが今回の記事でしょう。会社は、社会全体は、一人の人間が壊れてしまう直前まで追い込んでよいのか。そして壊れる寸前まで追い込まれてしまったら、個人はどうすれが良いのか、という提起でしょう。良い記事でした(2011/03/09)

肯定的な「逃げ」を、「他人に頼る」「何もしないをする」って意味で使っているんじゃないんですかね?押してダメなら引くという柔軟な選択肢を持つことで、土壇場でドロンするハタ迷惑な逃げではなく、戦略的撤退(逃げ)を考える余裕が生まれるということではないでしょうか。(2011/03/05)

近頃、仕事に関する自分の責務がどんどん増え、また、それに伴い責任も増す一方で、にも関わらず、常に体が重く、やる気が起きないため、効率的に仕事に取り組めずに、自己嫌悪に陥る、という悪循環が続いています。「死」にばかり魅力を感じている日々です。(別に自殺しようとは思ってませんが)この記事を読んだとき、思わず涙が出ました。「何かを学んだ」とか、「自分も逃げてみよう」とか思ったわけではありませんが、この記事を読んだことで、気持ちがちょっと救われた気がしました。本当にありがとうございました。(2011/03/05)

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