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スウェーデンに見る医療制度の未来像

患者にとっての価値を高める「VBHC」という考え方

2011年2月18日(金)

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 費用対効果、コスト・パフォーマンス、投資収益率──。

 どれだけの「コスト、投資」(分母)をかけて、どれだけの「リターン、効果」(分子)を得るのか。ビジネスの世界では、この分母・分子の両面を見て、モノを決めていくことが当然だし、それをきちんと把握し、経営に活用していけるかどうかが、企業競争の成否を握る。

 ところが、ビジネスの世界を少し離れると、分子・分母のどちらかだけにフォーカスした議論がなされ、政策的な意思決定がなされていく、ということが、意外に数多く見受けられる。

 あるいは、両方を見ようとしても、きちんとしたデータに基づく議論にならず、立場の違いから水掛け論になってしまう、という例も多い。その代表例の1つが、医療サービスにかかわる規制の流れだろう。

「分子重視」と「分母重視」がせめぎ合ってきた医療の世界

 医療の世界では、長らく、新しい薬、あるいは医療器具といった「イノベーション」をどう広く普及させていくか、ということが重視されてきた。

 新薬が出れば、それを保険制度の枠内で使えるようにし、製薬会社のマーケティング・セールス活動を通じて、多くの医師に使ってもらえるようにしていく。新しい手術器具が登場すれば、同様に医療器具メーカー、医師、保険制度の担い手、の3者が協力して、その普及を担っていく。

 重要なのは、「有効性(efficacy)と安全性(safety)という分子の側である」という思想に裏打ちされている。だから、「分子側重視パラダイム」と呼んでもいいだろう。

 このパラダイムは、医療サービスを提供するシステムと、それを支える保険などの保障・給付システムが整った先進諸国において、平均寿命の伸びといった形で、人々の生活に大きなメリットを与えてきた。

 しかし一方では、高齢化に伴う社会保障コストの増加、医療費そのものの高騰といった形で、多くの国で財政負担を大きく高める事態をもたらした。そのため、ご承知の通り、次のパラダイムへの移行が進んだ。すなわち、コスト効率(efficiency)を重視する「分母側重視のパラダイム」である。

 薬価の引き下げ、ジェネリック医薬品の利用促進、あるいは、疾病ごとの保険からの払い戻し額一律化(包括支払い)や診療報酬削減。こういった政策決定は、分母側をコントロールして、医療サービスの財政インパクトを減らしていこうということにほかならない。

 この2つのパラダイムのベースとなる考え方は、現在でも並存しており、「有効性・安全性(分子)」重視の立場と「コスト効率(分母)」重視の立場との間で、常に緊張関係が続いている。ただ、先進国の大部分では、財政悪化から、どちらかと言えば、後者が優勢な状況となっていることは間違いないだろう。

欧州で起き始めた新たなパラダイムシフト

 一方で、この分子重視対分母重視の議論から抜け出て、もう一歩先のパラダイムを目指そうとする動きが、欧州を中心に始まっている。「Value Based Health Care(VBHC)」と呼ばれる、「患者にとっての価値」、すなわち医療サービスの結果とそのコストの両方を見よう、という考え方だ。

 VBHCの基本コンセプトには、2つの柱がある。

 まず、分子の側の見方を従来のパラダイムから変えるということだ。

 これまでは、実際の患者治療の結果ではなく、臨床試験の結果に基づき、新薬や新しい医療器具の導入が決められてきた。言い換えれば、分子側の主語は、科学者であり、製薬メーカー・医療器具メーカーになりがちで、患者を主語として結果を判断することとは、必ずしもイコールではなかった。

 また、「新しいもの=良いもの」という暗黙の了解があり、これまた必ずしも「(新旧にかかわらず)治療結果の高いもの=良いもの」ということにはならない。こういった課題を乗り越えるために、「患者にとっての治療結果が上がるか否か」を、分子を見る中核に据えるというのが第1の柱だ。

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「スウェーデンに見る医療制度の未来像」の著者

御立 尚資

御立 尚資(みたち・たかし)

BCGシニア・パートナー

京都大学文学部卒。米ハーバード大学経営学修士。日本航空を経て現在に至る。事業戦略、グループ経営、M&Aなどの戦略策定・実行支援、経営人材育成、組織能力向上などのプロジェクトを手がける。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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