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復活するトヨタ、私が見る1つの懸念

大切なことは“生きた言葉”で伝えたい

  • 武田 斉紀

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[1/5ページ]

2011年2月21日(月)

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今回のトヨタたたきは、トヨタにとって何だったのか

 先週のコラムでも最後のページで触れたが、トヨタ自動車の安全神話が、事の発端となったアメリカで回復された(毎日新聞2月9日)。

 トヨタが1年にわたって主張し続けてきた、「急加速事故は電子制御システムの欠陥ではない」ことが公式に認められたのだ。米国運輸省が「電子制御システムの欠陥は発見できなかった」とする最終報告をまとめ、2月8日に発表した。

 1年前に「トヨタ車に乗らないように」と訴えたラフード米運輸長官は会見で、「娘からトヨタのミニバン・シエナの購入について相談された。それに対して、私は買うべきだと答えた」と話し、娘さんは購入したそうだ。思わず苦笑してしまった日本人は少なくないだろうが、トヨタ関係者はこの1年の苦しみを思えば、苦笑では済まされなかっただろう。

 日本人の一人としても、次の瞬間には「この1年のトヨタたたきはいったい何だったのだろう」と怒りもこみ上げてくる。トヨタの名誉回復は、勤勉でコツコツとモノ作りをしてきた日本人にとっての名誉回復のようにも思える。高度成長期から21世紀に至る経済成長期をリードした日本人らしい愚直さの象徴がトヨタだった。

 トヨタたたきは、日米貿易摩擦が激しくなった1995年当時にもあった。急進的な一部のアメリカ人は、昨年の尖閣諸島沖の漁船衝突事件の際の中国人と同じように、国の尊厳である日本の国旗に火を放った。さらに彼らは日本車に乗り上げ、大きなハンマーで力任せに壊していった。あの時の彼らの表情は、勧善懲悪を果たした満足感に満ちているように見えた。

 そして今回。トヨタたたきは、トヨタがアメリカ発展の象徴である自動車産業において、ビッグスリーを抜いて世界一になった時期と重なった。電子制御システムへの疑惑報道に、「前回の日本たたきと同じだ、単なる“でっち上げ”だ」と感じていた日本人も少なくないだろう。いつまでたってもシロとならないことにトヨタの安全神話は揺らぎかけていた。そうした中での勝利だった。

 立場が逆なら、トヨタに該当するアメリカ企業側は、日本政府を訴えていたのではないか。アメリカ人は自国の政府が訴えられることを心の底では望まないだろうが、トヨタが訴えても、恐らく人々は受け入れてくれたのではないかと思う。疑惑によっていったん傷つけられたブランドや、この1年間の販売損失を考えれば至極当然のことだからだ。

 私は、少なくともクロ疑惑がなぜ発生したのか、黒幕を突き詰めて対応することは必要だろうと考える。日本人はもちろん、正義感にあふれるアメリカ国民も望むだろう。だが現在のところ、トヨタがアメリカ政府を訴える気配はない。最低限の損害賠償程度は請求しても、「名誉が回復されたのだから良しとする」のだろうか。

 背景には、これ以上アメリカ市場で目立つことで自動車大国アメリカの心を傷つけることは、お互いにとってメリットにならないという判断があるだろう。日米貿易摩擦で得た教訓でもある。しかしトヨタは次のようにも考えているのではないかと想像する。

 電子制御システムに欠陥がないことは信じていたし、自信もあった。けれども、それは絶対の自信だったかというとそうではなかった。好調で売れに売れたことで、いけいけどんどんで2008年度にGM(ゼネラルモーターズ)を抜いて世界一になったが、その陰で忘れてきたものもあった。この1年はそれを再び取り返し、今後へつなぐチャンスの時間だった。我々は失ったのではなく、多くのものを得た。だからもういいではないか。

コメント16件コメント/レビュー

 米国が優れているとコメントした者ですが,こんな心配もあります:「NASAが「ブラックボックス」の中身をどうして解明できたのか不思議ですが 恐らくトヨタはNASAと秘密保持契約を結んだ上でブラックボックスの中身を開示したのだと思います。フェールセーフについてNASAから価値あるお墨付きを貰えた意味はありますが その代償として NASAが解明した高度の企業秘密であるトヨタのハイブリッドシステムを含む電子制御システムの詳細が米国のGMやフォードに流れないのかと トヨタOBの私は 余計な心配をしています。」http://hakuzou.at.webry.info/201102/article_7.htmlより抜粋. トヨタのハイブリッドシステムを含む電子制御システムの詳細が米国の手中に落ちたのであれば,また,最初からそれが目的であったならば,何と狡猾なことか! しかし,日本が戦後の繁栄と安定を享受できたと思うのも,この米国のやり方なればこそなのかもしれない.隣の大国であれば,どうなることか?!(2011/02/25)

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 米国が優れているとコメントした者ですが,こんな心配もあります:「NASAが「ブラックボックス」の中身をどうして解明できたのか不思議ですが 恐らくトヨタはNASAと秘密保持契約を結んだ上でブラックボックスの中身を開示したのだと思います。フェールセーフについてNASAから価値あるお墨付きを貰えた意味はありますが その代償として NASAが解明した高度の企業秘密であるトヨタのハイブリッドシステムを含む電子制御システムの詳細が米国のGMやフォードに流れないのかと トヨタOBの私は 余計な心配をしています。」http://hakuzou.at.webry.info/201102/article_7.htmlより抜粋. トヨタのハイブリッドシステムを含む電子制御システムの詳細が米国の手中に落ちたのであれば,また,最初からそれが目的であったならば,何と狡猾なことか! しかし,日本が戦後の繁栄と安定を享受できたと思うのも,この米国のやり方なればこそなのかもしれない.隣の大国であれば,どうなることか?!(2011/02/25)

日本らしさが出ている大変ためになるお話でした。組織としての理念の大切さ。どこかの政党にも早くわかってほしいですが(2011/02/23)

 おそらく,現社長にとっては,O氏は反面教師であろう.米国が優れているのは,NASAの結果報告が出た段階で,自分達の過ちを公式に認めたことである.(たとえ,種々の政治的配慮があったにせよ.)これは,隣の大国の政府や,日本のマスコミには全くあり得ない公平かつ誠実な態度である. なお,トヨタが対応を誤ったことと,米国の行動とは独立に考えるべきである.(2011/02/23)

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