“パ・ワ・ハ・ラ”──。最近、やたらとこの4文字を耳にする。
つい先日もそうだった。
「うちの会社でも、メンタルを損なう社員が増えているんですよ」
「増えている背景には、例えば、残業時間が多いとか、やたらと成果を求めているとか? そういった問題もあるんじゃないですか?」
「いやぁ〜、そういうことよりも、何というか、“ある種のパワハラ”が結構あるんです」
「“ある種のパワハラ”、ですか?」
「ええ。第三者からすると、それがパワハラになるのかと、クビを傾げたくなるものもあるんですけど、本人的にはパワハラ、だと。上司もそういうつもりで言ったんではない、と思うんですけど……」
これは、相談を受けた会社の方とのやり取りである。
“ある種のパワハラ”と真のパワハラとの違い
“ある種のパワハラ”。何とも微妙な言い回しだ。
パワハラにはさまざまな問題があり、当事者を死に追い詰めるほど問題が深刻化しているケースもある。だから、かなり言葉を選んだ結果、“ある種のパワハラ”という表現になったのだろう。
パワーハラスメント(=パワハラ)は和製英語であり、欧米では「モビング(mobbing)」あるいは、「モラルハラスメント(moral harassment)」と呼ばれる。以前、このコラムでも書いたが、欧米では明確にモラハラを定義し、それに関する法律や処罰まで作っているが、日本には、パワハラの明確な定義すらない(地方自治体では独自に定めているところも一部ある)。
ただし、一般的には仮の定義が使われている。次のようなものだ。
「職場において、職権などの力関係を利用して相手の人格や尊厳を侵害する言動を繰り返し行い、精神的な苦痛を与えることにより、その人の働く環境を悪化させたり、あるいは雇用不安を与えること」
昨年度から厚生労働省が労災認定基準を見直し、ストレスの要因となる職場の出来事として「違法行為を強要された」「ひどい嫌がらせ、いじめ、または暴行を受けた」などの項目を追加し、それまで闇に葬られていた悪質なパワハラに厳罰を科すようにもなった。
私自身、上司のパワハラが原因でメンタル不全に陥ったり、会社を辞めたりした方たちに何度もお会いしているので、この件に関しては慎重に扱わなくてはならないことは十分に承知している。
それでも、悪質なパワハラではなく、冒頭の男性が言ったような、“ある種のパワハラ”が、やたらと増えているように感じられてならない。
執拗にしかったり嫌がらせを繰り返したりして、当事者を追い詰めるパワハラとは一線を画す、上司の一言。
「本人は人格を否定されたとか、尊厳を傷つけられたって言っているけど、たぶんそういう意味で言ったものではないと思う」といった上司の言動。
これが、“ある種のパワハラ”である。
そこで、今回は、この“ある種のパワハラ”について、考えてみようと思う。
なお、念のために繰り返すが、今回取り上げるのは、あくまでも“ある種のパワハラ”である。真のパワハラ問題については、関連記事:“上司”が“仕分け人”に変わる瞬間をご覧いただきたい。
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博士(Ph.D.、保健学)・東京大学非常勤講師・気象予報士。千葉県生まれ。1988年、千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。気象予報士としてテレビ朝日系「ニュースステーション」などに出演。2004年、東京大学大学院医学系研究科修士課程修了、2007年博士課程修了。長岡技術科学大学非常勤講師、東京大学非常勤講師、早稲田大学エクステンションセンター講師などを務める。医療・健康に関する様々な学会に所属。主な著書に『「なりたい自分」に変わる9:1の法則』(東洋経済新報社)、『上司の前で泣く女』『私が絶望しない理由』(ともにプレジデント社)、『







