2月上旬、新装開店を数週間後に控えたダイシン百貨店。4階のペット用品売り場では、地元の女性がペットフードを買い込んでいた。
カートには、ペット用の缶詰が山のように積まれている。ネコを13匹飼っていることから、このデパートで月に4万円程度、ペットフードを買っているという。
「だって、どこより品物が揃っているでしょ。ここに来ればすべて事足りるから」
「買い物難民は絶対に出さない」
確かに、見回す限りペットフードが並んでいる。「国内の商品はすべて仕入れる」(幹部)。だから、ネコ用のフードだけでも約600種類に上る。
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これほどの膨大な品揃えになったのは、「客が欲するものはすべて並べる」という方針を徹底したからだ。破綻寸前だったダイシン百貨店は、5年前に現社長が就任すると、「半径500メートルを100%顧客にする」というスローガンを掲げた。デパートとしては異例の方針だ。だが、ダイシンは徹底して地元にターゲットを絞り込み、1人の小さな声もすくい上げてきた。
超小商圏デパート――。
この、かつてないコンセプトは、他に例のない強い業態を築き上げた。
地元は高齢者が多く、客層も50歳以上が7割を占める。だから、食品の売り方にも「個別対応」を取り入れている。惣菜や刺身は、老人はたくさん食べられない。だから、小分けにして売る。魚は三枚に下ろし、一切れずつでも売る。刺身も、客の要望に対応して切る。
1人たりとも見捨てない。そして要望に応えていく。
そうしていると、ペットフード売り場は品物があふれかえった。歯ブラシも約300種類を揃えている。

現在、合計18万品目にも上る商品を扱う。2月25日に新館がオープンしたが、建物の半分を建て直しただけ。残りの半分は、これから建て替えて、来年に全館オープンする。現在、売り場が半分になってしまった状況だが、「商品点数は減らさずに営業している」(幹部)という。
半分ずつの建て直しは効率が悪い。それでも、ダイシン百貨店がなくなれば、地元の老人が行き場を失いかねない。
「買い物難民を出したくなかった」(幹部)
住民の「ここに来れば、目当ての商品が必ずある」という安心感を、一時的にでも失ってはいけないという経営判断だ。
しかし、客の声をすべて受け入れるマーチャンダイジング(商品政策)は、在庫膨張といった財務悪化の危険を伴う。かつてダイシン百貨店が危機に陥ったのも、ずさんな在庫管理が主因だった。
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