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「失敗したくない…」と部下の手柄を横取りした男の末路

ストレス対処力が漠然とした不安を跳ねのける

2011年3月10日(木)

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 いったい世の中のいかほどの人が、清廉潔白だと胸を張れるのだろうか?

 「生まれてこの方、私は1度たりともインチキをしたことはない」と豪語し、「絶対に不正はしたことはないし、これからも絶対にしない」と言い切れるのか?

 私は残念ながら、「今まで、1回もインチキをしたことはありません。清廉潔白を貫き通してきました」と胸を張れる自信はない。

 かといって、「はい、実はあの時……」と明確に答えられるような不正をしたことがあるわけでもない。小さいインチキはあったかもしれないし、なかったかもしれない、というのが正直な答えだ。

 大相撲の八百長問題。予備校生のカンニング──。

 悪いことは悪い。やってはいけないことはやってはいけない。そんなことは分かっている。でも、あの異常なまでに過熱した報道ぶりは何なのだろう。あそこまで“犯人”たちを追い詰められるほど、世の中の人は果たして清廉潔白なのだろうか。

 もし、この取り組みで負けて十両から転落したら……。
 もし、この試験で失敗して不合格になったら……。

 そんな不安にさいなまれた時、「インチキすればいいじゃん。ばれなきゃ大丈夫だよ」と、“不正”の誘惑は甘いささやきとともに触手を伸ばしてくる。

 だって、負けて幕下になったら給料はゼロでしょ?
 だって、2浪はできないでしょう?

 失敗した時の不安。失敗した後に待ち受ける生活への不安。想像するだけで、「失敗できない。したくない」とプレッシャーがどんどん強まっていく。

 当然ながら、悪いことは悪いし、不正は不正だ。それを正当化しようなんて気はさらさらない。でも、最初から悪いことをしてやろうとか、はなからたくらんでいた不正ではなく、不安な気持ちをどうにか払拭したくて、プレッシャーからどうにか解放されたくて、ついつい“不正”の誘惑に屈してしまう。その可能性は、いかなる人にとっても「ゼロ」とは言い切れないのではないだろうか。

 不安という感情は、時に人の目を曇らせ、たどってはいけない道を進ませ、渡ってはいけない橋を渡らせてしまう魔物だ。

 そこで今回は、“不安と不正”について、考えてみようと思う。

不況によるネガティブな感情が不正の引き金に

 まずは興味深い調査結果を紹介したい。

 リーマンショックに代表される世界的な経済危機が起きて以降、組織で不正を働く人が急増したという、なかなかショッキングな調査結果だ。

 調査を実施したのは、米国の公認不正検査士協会(ACFE:Association of Certified Fraud Examiners)。2008年の初めから2009年の初めにかけてCFE(不正検査士)が遭遇した不正のレベルをそれ以前と比較することを目的として、米国在住のCFE6000人を対象にアンケートを行った。

 その結果、何と実に半数以上が「過去1年間に不正の件数が以前より若干、もしくは大幅に増えた」と回答したのだ。不正は、経費による私物購入のような小さなものから、何カ月あるいは何年にもわたって行われた不正請求のような大きなものまで、多岐にわたった。

 また、不正が増えた理由については、「景気が悪化したことで、将来への金銭的な不安によるプレッシャー」(49.1%)、「企業側のレイオフによる士気の低下・違法行為の正当化」(23.7%)、「組織内のコスト削減により不正防止策の減少」(27.1%)といった回答が得られた。これらの回答からは、将来に対する不安感が不正と深く関係している可能性が示唆される。

 不景気になると将来への不安感が高まるだけでなく、「自分も仕事を失うかもしれない」とプレッシャーが強まっていく。それに伴って、だからといって何もできない自分に対する無力感や悲壮感も広がる。

 さらに、実際にレイオフを行った組織に勤める人たちは、「会社だって自分たちを粗末に扱ってるんだから、こっちだってインチキしても構いやしない。信頼関係を壊したのは、会社の方なんだから」などと考え、以前は思いも寄らなかったような不正行為を正当化する姿勢を強める。そんな傾向があるというわけだ。

コメント54件コメント/レビュー

大震災後にこれを読みました。「我慢強い。」私たち。がんばりましょう。河合さんは今年の初め「HOPE」についても書いていらっしゃいましたね。内なる力。私たちには明日がやってくる。(2011/03/13)

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「「失敗したくない…」と部下の手柄を横取りした男の末路」の著者

河合 薫

河合 薫(かわい・かおる)

健康社会学者(Ph.D.)

東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。産業ストレスやポジティブ心理学など、健康生成論の視点から調査研究を進めている。働く人々のインタビューをフィールドワークとし、その数は600人に迫る。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

大震災後にこれを読みました。「我慢強い。」私たち。がんばりましょう。河合さんは今年の初め「HOPE」についても書いていらっしゃいましたね。内なる力。私たちには明日がやってくる。(2011/03/13)

いい話でした。読んで元気をもらいました。(2011/03/11)

河合さんに我が社の経営をやって欲しい。我が社では、部下の手柄を横取りすることこそ、マネージャとして重要な能力と評価される。手柄の横取りを悪だと思う人はマネージャ適性が無いと判断され、管理職には昇進できない。部下を馬ニンジン詐欺で釣って走らせては蹴落として横取りし、部下に代理戦争をやらせ、部下を踏みつぶす、それらが躊躇無くできることこそ、我が社では管理職として重要な能力である。それでも1兆円企業としてやってゆけるのだから、誰も困らない。こんな経営哲学を河合さんに変えて貰いたい。(2011/03/11)

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