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大震災 孤立して諦めかけた私を救った“声の力”

何気ない一言で人のつながりは生まれる

2011年3月17日(木)

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 分かっているつもりでいても、自らが体験しないと分からないことがある。

 今、思えば……、東京で暮らす私たちにとって、阪神・淡路大震災の恐怖と混乱と悲しみは、人ごとだったような気がしてならない。リアリティーがあるようでなかった。いや、私たち、ではなく、私、と言い変えよう。私は分かっているようで分かっていなかったのだ。

 3月11日金曜日の午後2時46分。東北地方太平洋沖地震が起きた時、私はJR水戸駅のホームにいた。

 東北地方の震源地近くに比べれば揺れは大きくなかっただろう。それでも、水戸駅は一瞬にして機能不全とパニックに陥った。

 生まれて初めて、死ぬかも、と思った。

 幾度となく阪神・淡路大震災の映像を見て、地震の怖さが分かっていたつもりだった。だが、土煙が上がり、目の前の建物が大きく横に揺れ動いて、線路に振り落とされそうになり、改めて自然の猛威を思い知った。

 阪神・淡路大震災が起きてから10年目を迎えた時のことだ。当時の神戸市の市長さんが、「私たちを救い、再び立ち上がる力をくれたのは、人、でした」といった内容を語っていたが、今回、初めてその「人」の意味が分かったように思う。

 少しばかり大げさで、飛躍してると思われてしまうかもしれないけれど、「死ぬかも」という思いがよぎった瞬間に感じたことは、まさに市長さんが言った言葉の真意だった。

 そこで今回は、うまく書けるかどうか自信がないのだが、水戸駅で遭遇したこと、そこで出会った人々、これまで私が「人」にとって大切だと考えてきたこと――。そんないくつかの点が結びついた出来事を、できる限りありのまま書きつづろうと思う。

 これは単なる地震ドキュメントではなく、「人」とは何かという、かなり壮大なテーマの枠組みで、読んでいただければ幸いです。

ホームに落ちそうになった私を引き上げてくれたおじいさん

 まずは、当日の状況からお話ししよう。

 11日の金曜日。水戸駅近くのホテルで講演会を終えた私は、改札口まで担当者に送っていただき、午後2時35分ごろに改札口を通った。
 
 2時50分発の電車まで、少しばかり時間があったので、駅構内のお土産屋さんで、水戸の梅ドラ焼きを1つと飲物を買って、ホームに下りた。

 乗車車両は4号車。切符を片手に持ち、乗車口の前に並ぶ。隣には70代くらいと思われるおじいさんが立っていた。

 「間もなく電車が参ります」とのアナウンスが入るやいなや、カタカタとホームが揺れ始めた。

 新幹線のホームなどでは、電車がホームに入ってくる時に軽い振動と風を感じることがあるが、「常磐線の特急も結構、飛ばしてくるんだなぁ」などと、のん気に思っていた。

 ところが、である。

 次第に振動にうなるような音が加わり、ホームの柱が大きく横に揺れ始めた。

 「地震だ!」と叫ぶ声があっちこっちから上がり、私は思わず隣に立っていたおじいさんの腕につかまってしまったのだ。

 その途端に土煙が舞い上がり、天井から大きな破片や砂がホームに激しく落ち始め、隣のビルのガラスが割れ落ち、天井が傾き、ホームから線路に投げ出されそうになった。

 近くにいた年配のご夫婦が、「こっちに来ないと線路に落ちるぞ!」と声を上げ、腕をつかんでしまっていたおじいさんに、「移動しましょう!」と手を引っ張られて、私も動き始める。

 ところが、さらに揺れが激しくなり、動くに動けない。腰をかがめてうずくまらないとホームから線路に投げ出されそうになるのだ。

 そこで、左手で地面を押さえ、右手で壁を必死につかまえて、何とか階段下のホーム中央まで移動した。

 「地震は長くても1分」と教わっていたように思うのに、ちっとも揺れが収まらない。揺れていた看板がはずれて落ち、悲鳴を上げた女性の声が響きわたる。

 「私、ここで死んじゃうのかも……」──。マジでそう思ったのだった。

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「大震災 孤立して諦めかけた私を救った“声の力”」の著者

河合 薫

河合 薫(かわい・かおる)

健康社会学者(Ph.D.)

東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。産業ストレスやポジティブ心理学など、健康生成論の視点から調査研究を進めている。働く人々のインタビューをフィールドワークとし、その数は600人に迫る。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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