「御立尚資の帰ってきた「経営レンズ箱」」

未曽有の危機だからこそ、明るく前向きでいこう

そうでなければ落ち着いて的確な判断も下せない

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2011年3月18日(金)

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 元気を出そうと思う。

 南極探検隊のスコットとアムンゼンの成否を分けたものは、リーダーの「明るさ」だったという話がある。(関連記事:「南極で生死を分けたリーダーシップ」

 同じ厳しい環境にあっても、基本的なスタンスが「前向き、かつ、明るい」方が、刻々変わっていく周囲の状況を落ち着いて判断し、的確な行動につなげていける確率が高いと信じている。

 航空会社で働いていた時、羽田で会議の準備中に、羽田沖でのいわゆる逆噴射事故があった。メキシコに駐在していた時には、公称で数千人、恐らく実際にはその何倍もの方が亡くなったメキシコ大地震に遭遇した。

 どちらの際も、本当に役に立つ人は、みな同じような「前向き、(大変な中でも)明るい、焦らず落ち着いていることが明らか」という共通点があった。

時間軸で異なるチームが必要になる

 ちなみに、緊急事態が次々と発生し、状況がどんどん変わるといった場合には、どんな人でも100点の判断はできない。従って、ちょっと時間がたってから、人の揚げ足取りをするのは至極簡単だ。

 残念ながら、そういう人たちも必ず出てくるのだけれど、「こういう状況で、揚げ足取りに精を出す暇があったら、何か人の役に立つことをしろ」、あるいは、「少なくとも邪魔はするな」、という感覚は、大部分の人々に共有される。

 そして、落ち着いた後で、誰がどういう振る舞いをしたか、という記憶は、後々まで残り、リーダーを選択する明確な基準として活用されることになる。これも、過去の経験からの学びだ。

 そして、何より、苦境を乗り切ったチーム、組織、共同体は、精神的なつながりを増し、より強固なものとなる。

 略奪も暴動も起こさず、大変な状況の中で、落ち着いて行動した日本人。そして、未曽有のマグニチュード9.0という今回の規模の地震に対しては不足だったとはいえ、グローバルに眺め渡すと、飛び抜けて高いレベルにあった耐震建築や防災の備え。

 海外メディアからは、日本と日本人を賞賛する声、そして「頑張れ」「あきらめるな」という声が、次々と聞こえてくる。

 今から9年後の2020年から振り返った時に、「本当に大変だったはずなのに、よくやった」という声を聞けるようにできるかどうかは、我々自身にかかっていると思う。

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著者プロフィール

御立 尚資(みたち・たかし)

御立 尚資

ボストン コンサルティング グループ日本代表。京都大学文学部卒。米ハーバード大学経営学修士(MBA with High Distinction)。日本航空を経て現在に至る。様々な業界に対し、事業戦略、グループ経営、M&A(合併・買収)などの戦略策定、実行支援、経営人材育成、組織能力向上などのプロジェクトを数多く手がけている。著書に『戦略「脳」を鍛える』(東洋経済新報社、2003年)、『使う力』(PHP研究所、2006年)、『経営思考の「補助線」』(日本経済新聞出版社、2009年)など。



このコラムについて

御立尚資の帰ってきた「経営レンズ箱」

コンサルタントは様々な「レンズ」を通して経営を見つめています。レンズは使い方次第で、経営の現状や課題を思いもよらない姿で浮かび上がらせてくれます。いつもは仕事の中で、レンズを覗きながら、ぶつぶつとつぶやいているだけですが、ひょっとしたら、こうしたレンズを面白がってくれる人がいるかもしれません。
「経営レンズ箱」】2006年6月29日〜2009年7月31日まで連載

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