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復興のため、電力消費特別税を導入せよ!

これが電力不足と被災地復興を両立させる道だ

  • 小黒 一正(一橋大学経済研究所),佐藤 主光(一橋大学経済学研究科・政策大学院)

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2011年3月25日(金)

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 去る3月11日に起きた東日本大震災による東京電力発電所の被災に伴って、首都圏を含む東電管轄地域において電力不足が生じている。電力供給を地区別に一定時間停止する計画停電(輪番停電)でしのいでいる状態だ。鉄道の乱れを含め、計画停電による混乱が広がっている。

 夏の電力不足は最大でピークの25%分に達するとの予測がある。仮に発電施設の復旧が遅れ、電力不足が長引くならば、今のような戦時体制に近い計画経済的な電力の配給制度を続けることは、経済的に測りしれない損害をもたらす。日本経済の見通しを不透明にし、市場からの不信を高めることになるだろう。経済の復旧・復興の阻害要因となって、日本経済の成長力を長期的に損ないかねない。

 このコラムでは、計画停電に代わる、かつ長期の節電に耐え得るスキームを試案として提言したい。このスキームは(1)電力の主な大口需要者と東電が、節電にかかわる自主協定を結ぶ、(2)家計を含む、この自主協定に参加しない需要者に対して課税する、という2つの柱からなる。対象地域は、激甚災害法の指定を受けた被災自治体を除く東京電力の管轄区とする。このスキームは電力不足が解消するまでの時限措置とする。電力不足の見通しが不透明であれば、取りあえず1年の時限措置として、必要に応じて延長する。

大口需要者と東電が電力需要/供給量について協定する

 第1の柱である自主協定は、以下のような取り決めとする。電力消費量のピーク時間帯を中心に節電の目標値を設定し、東電と大口需要者がその実施について協定を取り交わす。大口需要者は節電目標を遵守する。その代わり、東電はその分の電力供給を確約する。

 首都圏の鉄道各社、自動車などの大手製造業、サービス業ではデパートやコンビニエンスストアなどを協定の対象とする。協定は原則として、これらの大口需要者と東電とが個別に結ぶ。ただし、子会社を含む企業グループ単位で参加することも可能とする。経団連などが仲介してもかまわない。

 協定により大口需要者は電力利用に制限を受けるが、電力供給が完全に停止してしまうよりは経済的損失が小さくて済む。また、業種ごとの電力使用の違いを反映できるように、協定の内容は参加企業ごとに変えることができるものとする。一律・強制的なものではなく、自主的な協定であることが特徴である。

 協定を結んだ企業間で、電力の利用権を融通し合うことも「あり」にする。電力使用量の季節変動などに柔軟に対応するためだ。対価は伴わないが地球温暖化ガスの排出権取引に類似する仕組みと言えよう。

電力利用に特別税を課す

 第2の柱は、ある水準を超えた電力利用に特別税を課すことだ。東電が供給する電力の消費が、事前に定めた1カ月当たりの水準(節電目標)を超えた場合、超過分に対する消費税(国税)率を現行の4%から、50~100%にまで引き上げる。税込みの電力料金1.5~2倍に高める措置だ。これを「電力消費特別税」とする。

 一般に供給不足への対応としては、数量調整と価格調整が挙げられる。計画停電のような一律(かつ不確実)な数量調整より、利用者のやる気に働きかけて、その選択を尊重する価格調整の方が、限られた資源を有効に配分できる。需給のバランスを図るならば、価格メカニズムを利用することが市場経済の「王道」なのである。高い価格を払ってでも希少な資源を利用したいと考える人は、そうではない人よりも、その資源に高い利用価値を見出しているからだ。

 具体的な税率は、電気料金と電力需要との関係(価格弾力性)に応じて定めればよい。価格弾力性とは、価格が1%変化したときに、需要が何%変化するかを表す指標。価格弾力性が低いほど高率の課税が必要となる。

 生活必需品である電力の価格弾力性は一般に低いとされている。節電の仕方も十分に分からないかもしれない。そこで幾つかのモデル世帯を作り、課税によって電気料金が上がっても、概ね同じ電気料金で済むような節電方法を示す。併せて、このモデルでは電力消費が特定の時間に集中しないように配慮する。このモデルが家計の電力消費の基準となれば、消費者の負担の増加を抑えつつ、節電ができるはずだ。(最近流行の行動経済学ではこれを「ナッジ」という。)

 理論上は、電力消費がピークになる時間帯に絞って税率を引き上げることが望ましい。他の時間帯への電力消費のシフトをもたらし、電力供給への負荷を軽減できるからだ。実際、東電は、時間帯に応じて異なる電気料金を設定するプランを提供している。ただし、これを実行するには専用の電力メーターが必要となる。すべての利用者に適用することはできない。

 電力消費特別税は東電が供給する電力のみを対象とする。今後、東電管轄地域における電力の超過需要を満たすよう、電力会社が新規参入するかもしれない。この可能性を妨げないよう、(一層の電力自由化と合わせて)東電以外には電力消費特別税を課さない。

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