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今回の震災復興は従来のやり方が通用しない

「キャッシュ・フォー・ワーク」日本版の提言

  • 永松 伸吾

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2011年3月29日(火)

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 3月11日に発生した東日本大震災──。地震、津波という自然災害に原発事故という社会災害が重なり合う未曽有の事態は、これまで社会や企業が前提としてきた安全の常識を次々と覆した。それに伴って、3月11日を境に新たにどのような常識が形成されていくのか。新たな常識を踏まえて社会や企業活動の安全マネジメントをどう変えていかなければならないのか。

 このコラムでは、自然災害と事故などの社会災害の両方に精通した防災や危機管理のプロを育成する場として日本で初めて誕生した関西大学社会安全学部の教授陣が、社会や企業の安全マネジメントについての新たな考え方や具体策を講義していく。

 初回に登場するのは、同学部で災害後の経済復興のあり方や災害を軽減する“減災”を実現する経済システムについて探究する「災害の経済学」を教えている永松伸吾准教授。今回の大震災の復興には従来のやり方が通用しないと指摘し、これまでとは異なる発想で新しい復興の道筋を考えることが必要だと主張する。その一例として、被災者を復興事業に活用する「キャッシュ・フォー・ワーク」の日本版を提言する。

 3月11日に東日本を襲った巨大地震を発端とする今回の大災害は、これまで日本で起きた災害とは全く異質のものである。被害の範囲が広すぎて、いまだに全容を把握できていない。発生後の対応でも、例えばがれきの撤去やライフラインの復旧など、いずれも阪神・淡路大震災の時よりも遅れている。

 災害を研究している我々にとっても驚きだったことの1つは、東日本一帯が一時期、深刻なガソリン不足に陥ったことである。最大の原因は東日本の製油施設や油槽所が被災したことだが、一般市民が買いだめに走ったことにより、首都圏でもガソリンが足りなくなった。

 それに伴って、被災地の支援に向かう人々が現地に行くための燃料を調達できないという事態が生じた。今はかなり解消してきたものの、それでもガソリンが被災地に十分に行きわたっているわけではないようだ。

従来の災害支援の前提が当てはまらない

 我々災害の研究者がこれまでの災害で対策を検討する際には、被災地の周囲は全く被災しておらず、災害が日本全体の社会経済には影響を与えないという前提を置いてきた。

 これは、国際経済学で言うところの「小国の仮定」(ある国の経済活動は国際的な商取引の価格には影響を及ぼさない程度に小さいという仮定)のようなものである。被災地は、ほかの地域に全く影響を及ぼさず、だから被災地の周囲から多くの物資を調達できると考えてきた。

 ところが、被災地の周囲にも影響が及んでいる今回の災害では、この仮定は明らかに当てはまらない。不足しているのは、ガソリンだけではない。救援物資も足りなければ、現地で支援に当たるボランティアも全く足りていない。

 「復興の費用を賄う財源も足りない。だから増税が必要だ」。消費税の税率引き上げによる増税にあれほど及び腰だった民主党政権の要人たちですら、こうした主張を公然と口にし始めている。

 そもそも災害の復旧や被災地の復興に必要となる資材や人員、資金などがどこまで充足されるのか。

 例えば、被災したインフラなどの復旧工事を担うことになる建設業。日本の建設市場の規模は、阪神・淡路大震災が起きた1995年の約半分。建設業の就業者数は当時の4分の3まで減少している。さらに、東京電力の福島第1原子力発電所の事故によって、今回は電力が大量に不足する事態まで起きている。

 通常は、大規模な災害が発生した後は大規模な復興事業が行われるので、それによって経済が成長することが期待される。だから、災害の発生直後に一時的に日本企業の株式や国債が売られても、それは短期的な現象にとどまる。

 だが、今回はそうならない可能性がある。東電が計画停電に踏み切り、企業の事業活動に大きな支障を来しているからだ。そのため、日本経済が復興に伴って成長することは疑問視される。

 そうした中、復興の費用を賄うために国債を増発すれば、金利が上昇して国債の利子を支払う負担が政府に重くのしかかる。財務省によれば、金利が1%上昇するだけで、国債の利払いは年間約3兆円も増加する。

 多くのエコノミストは復興需要に期待し、楽観的な見通しを立てる。一時的に日本の経済成長は失速しても、やがて発生する復興需要によって経済は成長軌道を回復するというわけだ。だが、今回の震災のようなかつてない規模の災害からの復興事業は、困難を極めるだろう。建設市場の規模が縮小し続け、建設業の従事者が減少していることからも、相当な時間がかかることは間違いない。

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