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震災の風評被害は自ら防ごう

企業や個人もできる情報発信

2011年4月1日(金)

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 被災者の方々の支援、そして、復興に向けた貢献、という意味で、企業として、あるいは個人として、さまざまな活動に従事されている方々も数多いと思う。

 そのうえで、ということになるが、今、民間セクターができる重要なことの1つは、風評被害をミニマムにするための対外コミュニケーションだ。

 日本を含めて、世界のどの国を取ってみても、他国の災害についてのメディア報道は、ひどい被害を受けた地域や人々の映像やリポートが中心となる。今回の例で言えば、津波の映像や、原発の建屋が壊れた部分の写真などだ。

 これは、実際には被害を受けていない部分も含め、その国や都市が、すべて機能停止しているかのような印象を与えることになりがちである。私自身、1985年にメキシコを襲った大地震の際に、そのことを痛感した。

考えが及ばなかった日本での反応

 同年9月19日朝7時過ぎに、太平洋岸で起こったマグニチュード8.1の大地震は、約400キロ離れたメキシコシティーにも長周期振動による大きな被害をもたらした。同市は、もともと湖だった場所を埋め立ててできたということもあり、公的病院や低所得者層向けアパートを含む500以上の建物が崩壊し、確認されただけで約5000人、住民登録をしていない人々などを含むと、おそらくはその数倍の人命が奪われた。

 当時、メキシコシティーに駐在していた私は、たまたま丘の中腹の地盤の良い場所に住んでいた。揺れはものすごく強く、感覚的にはいつまでも続くという感じだったが、収まった後は、普通にアパートのエレベーターで1階に降り、自分の車を運転してオフィスに向かった。

 丘を下っていくと、あちこちで建物が損壊している。日本と違って、木造の建物がないこともあり、火災はあまり起こっていなかった。一方で、なじみのある建物で、跡形もなくなったものもあった。

 運転しながら確認した限りでは、市内で、無事だった地域、建物もずいぶんとあり、信号がすべて停止していたにもかかわらず、交通もスムーズだった。その後、さまざまな苦労をするのだが、日常業務は継続した。

 ところが、日本では友人たちが、大きな被害を受けた地域、建物だけを報道で見聞し、さらに国際電話が半年ほどつながらないということもあって(当然、当時はネットでコミュニケートするという時代ではなかった)、いつの間にか、私は生死不明の状態で、おそらくダメだろう、ということになっていた。

 後から聞いてみれば、当然の反応なのだが、厳しい中でも普通に仕事をし、生活を続けていた自分からすると、「大丈夫だった地域、建物、人々を、海外メディアは好んで取り扱わない」「海外報道の多くは、当初に大きく被害を伝えた後に、復旧の状況をわざわざリポートしてはくれない」ということには、思いが至らなかった(ずいぶん時がたってからのドキュメンタリーなどは除く)。

 こうしたことが分かっていれば、さまざまな手段を通じて、本当に被害があった地域とそうでない地域、ビジネスや日常生活の中で不便が生じた部分とそうでない部分、を積極的にコミュニケートし、併せて自分の無事を伝えていたのだろうが……。

手をこまぬいていれば不要な“日本外し”が起きる恐れも

 3月27日付けの日経ビジネスオンラインの記事(「アメリカに放射能が来る」世界で吹き荒れるパニック報道)でも触れられていたが、今回の災害は、地震、津波と原子力発電所の問題が掛け算になっていて、誤解に基づく報道や、センセーショナルに扱うものも多くなっている。

 こうした中、報道される内容だけではなく、実際のビジネスの場面でも、海外各国で必要以上に保守的な行動が取られ、いわゆる風評被害が起こりつつあるように見える。

 日本貿易振興機構(JETRO)なども状況を把握しつつあるようだが、農産物や水産物だけでなく、日本からの工業製品にも「被曝していない証明書」を求められたり、あるいは日本からのコンテナ貨物の積み下ろしを港湾労働者が取り扱うのを拒否したり、といったことも発生している。

 今後、さらに海外からのツーリストの減少、日本への直接投資の手控え、といった事態も想定される。また、リスクマネジメントの観点から、多くの海外企業が、調達先の多様化を中心としたグローバル・サプライチェーンの見直しを始めている。この中で、全く不要な日本外し(ジャパン・パッシング)が行われるという事態もあり得ると思う。

 こういった3次、4次災害を極小化していくことが、今後の復興に向けて、大変重要な課題である。

コメント8件コメント/レビュー

この震災、原発事故を受けて予想されていた或いはそれ以上の風評被害が既に始まっている。この状況が今後さらに拡大することを懸念している。近年の衆愚政治とも呼ぶべき状態を憂慮しているところであったが、製造業に携わる身として同時に感じていたのは”衆愚経済”ともいうべき状況であった。巷では放射性物質などに関した馬鹿げた噂も飛び交っているがこの様な口コミで広がる所謂風評被害は今日の経済に日常的に存在しているものだと思う。少しでも安全性が問われる情報が伝わると過剰反応は広範に渡るため企業側もそれを見越したリスクマネージメントに躍起になり、不必要とも思えるレベルの安全対策を行う。正偽を見極める時間も意識もなく型通りのリスク回避の動きが脊髄反射的に起き、その状況を見て発せられた情報が正しかったのだという世間の認識が固定化される。多くの場合後に真偽が議論されることはない。これらの活動には相当のコストがかかっており、過剰かもしれないそのコストを消費者は価格の面で負担するか、企業の収益圧迫による賃金の伸び悩みという形か、いずれにしても支払うことになっている。安全性についての情報を自ら見極める為の情報収集や学習をせず、理解できていない誤っているかもしれない情報を気軽に広めてしまう自分自身の行動がどのような形で還ってくるのか冷静に想像力を高めて考える姿勢が各人に必要なのだと思う。専門的で理解できない情報も確かにあるが、得られた情報にどう対処するかについては義務教育レベルの知識があれば考えられることが山ほどある。不安は理解できるが自分の行動が社会にとりわけ被災者の方々にどの様な影響を及ぼすものなのか、想像力豊かに考える冷静さが求められると震災後の人々の行動を見て改めて感じた次第である。(2011/04/04)

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「震災の風評被害は自ら防ごう」の著者

御立 尚資

御立 尚資(みたち・たかし)

BCG シニア・アドバイザー

京都大学文学部卒。米ハーバード大学経営学修士。日本航空を経てボストン コンサルティング グループ(BCG)に入社。BCG日本代表、グローバル経営会議メンバー等を歴任。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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この震災、原発事故を受けて予想されていた或いはそれ以上の風評被害が既に始まっている。この状況が今後さらに拡大することを懸念している。近年の衆愚政治とも呼ぶべき状態を憂慮しているところであったが、製造業に携わる身として同時に感じていたのは”衆愚経済”ともいうべき状況であった。巷では放射性物質などに関した馬鹿げた噂も飛び交っているがこの様な口コミで広がる所謂風評被害は今日の経済に日常的に存在しているものだと思う。少しでも安全性が問われる情報が伝わると過剰反応は広範に渡るため企業側もそれを見越したリスクマネージメントに躍起になり、不必要とも思えるレベルの安全対策を行う。正偽を見極める時間も意識もなく型通りのリスク回避の動きが脊髄反射的に起き、その状況を見て発せられた情報が正しかったのだという世間の認識が固定化される。多くの場合後に真偽が議論されることはない。これらの活動には相当のコストがかかっており、過剰かもしれないそのコストを消費者は価格の面で負担するか、企業の収益圧迫による賃金の伸び悩みという形か、いずれにしても支払うことになっている。安全性についての情報を自ら見極める為の情報収集や学習をせず、理解できていない誤っているかもしれない情報を気軽に広めてしまう自分自身の行動がどのような形で還ってくるのか冷静に想像力を高めて考える姿勢が各人に必要なのだと思う。専門的で理解できない情報も確かにあるが、得られた情報にどう対処するかについては義務教育レベルの知識があれば考えられることが山ほどある。不安は理解できるが自分の行動が社会にとりわけ被災者の方々にどの様な影響を及ぼすものなのか、想像力豊かに考える冷静さが求められると震災後の人々の行動を見て改めて感じた次第である。(2011/04/04)

本筆者のご指摘通りマスコミは一番被害の大きい所の報道中心となっており、隠れた被害の少ない所の報道はあまり見受けられません。良い例が福島原発のトラブルの報道で、この報道を受け散った国民は原発アレルギーとなり、その運転は許さなくなるでしょう。原発は全て悪い、全廃すべしと!しかしある報道ではこの地震、津波に耐えた原発があり、無傷ではないもののクールダウンできているようです。その原発は福島の北にある女川原発です。ここも大きな津波に襲われていますが、津波への安全基準が高かく、一部損傷したものの安全にクールダウンができ、放射能の放出もなく、また女川市民の避難地としてもこの原発の広場が利用されているとの報道が一部にありました。なぜこの報道をもっと前面に押し出さないのでしょうか?現在の原発論争に極めて重要な問題を切り捨てています。原発は安全基準を検討することで十分使用できる可能性が出てきます。要因分離することが必要です。悪い面だけでなく、隠れた面も並行して報道すべきです。(2011/04/03)

おっしゃるとおりです。阪神大震災の時に大阪にいて感じたのですが、マスコミは点の情報しか伝えないです。見るほうはそれが全体だと思ってしまいます。マスコミも意識的に全体がどういう状況かを伝えてくれるといいのですが、そいう意識は皆無です。復興に関しても同様です。今回、道路の復興状況は大変大切な情報だと思うのですが、ぜんぜん報道されませんでした。さすがに2週間ほどたってから高速道路などの主要道路は復興具合が新聞にのるようになっただけです。今はインターネットというものがあるので、マスコミに頼らないで多くの人が自ら発信していくことで風評被害を少しでも防げるなぜひ皆で実行すべきです。(2011/04/02)

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行天 豊雄 国際通貨研究所名誉顧問