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震災の被害を拡大した「想像力の欠如」と「平成の大合併」

津波の脅威から解放されるまちづくりのモデルを示す

  • 河田 惠昭

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2011年4月7日(木)

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 3月11日に発生した東日本大震災──。地震、津波という自然災害に原発事故という社会災害が重なり合う未曽有の事態は、これまで社会や企業が前提としてきた安全の常識を次々と覆した。3月11日を境にどのような常識が新たに形成されていくのか。それに応じて社会や企業活動の安全マネジメントをどう変えていかなければならないのか。

 このコラムでは、自然災害と事故などの社会災害の両方に精通した防災や危機管理のプロを育成する場として日本で初めて誕生した関西大学社会安全学部の教授陣が、社会や企業の安全マネジメントについての新たな考え方や具体策を講義していく。

 今回登場するのは、災害研究の第一人者としてさまざまな提言をしてきた河田惠昭教授。社会安全学部の学部長を務める河田教授は、近著『津波災害─減災社会を築く』(岩波新書)で、大津波による被害について警鐘を鳴らしていた。今回の大震災の特徴について独自の分析を示すとともに、大津波の脅威から解放されるまちづくりを提言する。

 今回の大震災には、「巨大自然災害」「巨大難対応災害」「巨大社会災害」の大きく3つの側面がある。このうち、難対応災害と社会災害は聞き慣れない言葉だろう。

 難対応災害とは、災害が発生した直後の対応が困難で、その結果、被害が拡大してしまったことを指す。

 一方、社会災害とは、災害のうち必ずしも地震や台風などの自然現象に起因するものではなく、事故などの人為的な要因から引き起こされる災害である。いずれにしても、生活被害や経済的な被害が大規模かつ長期化する特徴を持っている。

 まず、自然災害としての特徴を見てみよう。まずはスーパー広域災害だ。大地震と大津波で犠牲者が出たところは、47都道府県のうち、約4分の1の12都道県に上っている。これだけ広範囲に及ぶと、地方自治体だけで被災者の救助や保護などに当たるのは不可能だ。国の全面的なバックアップが欠かせない。

 次は複合災害だ。地震に津波、そして原子力発電所の事故というトリプルパンチに見舞われ、被災地にある工場や農水産物の産地での生産活動がストップした。さらに物流網の寸断や電力供給の不足などによって、生産活動の停止が長期化している。この間接的な被害は、被災地だけにとどまらず、日本全国や海外にも波及している。

 そして長期化災害。道路や鉄道、電気、電話、上下水道など、いわゆる地域や都市の生命線と呼ばれるライフラインが長期にわたって機能不全に陥り、その多くは今なお復旧の見通しが立っていない。

防災施設はそれぞれの機能を果たしたが……

 次は巨大難対応災害としての特徴だ。まず大規模津波災害が挙げられる。非常に大きな津波が襲来して被害が拡大した。

 もっとも、ここで1つ指摘しておきたいことがある。津波警報や避難勧告を出しても、実際に避難する人は非常に少なく、それが被害を広げたという点だ。これは日本に限った話ではない。2010年2月に起きたチリ沖地震でも、168万人に対して避難の勧告や指示が出されたが、それで避難したのはわずか6万4000人。対象者の3.8%にとどまった。

 なぜか。原因の1つとして、想像力の欠如がある。今回の大震災では、海岸から5~6キロ離れた内陸部まで津波が押し寄せた。こうした事態をあらかじめ想定するのは難しい。だから、十分な予防策が講じられているわけもなく、津波による被害は非常に大きなものになった。

 社会脆弱災害という特徴もある。被災地では高齢化が進んでいて、在宅で介護を必要とする高齢の方が数多く被災された。この点も影響しているのだろう。今回は、屋外よりも家や職場、あるいは車の中という屋内の空間で被災されている方が非常に多い。

 そして対策不全災害である。例えば津波による被害を防ぎきれなかったのだから、防波堤などの防災施設が十分だったとは言えない。

 しかし、防ぎきれなかったからと言って、メディアが展開しているような、「効果は0か100か」という議論に陥ってはならない。例えば、「津波を防げなかったから防波堤はなくてもよかった」ということにはならない。防波堤をはじめとする防災施設はそれぞれが機能を果たし、被害を軽減している。

 国や自治体の財政がひっ迫している現状も考慮すると、今回の地震や津波の規模に応じて防災施設を新設するよりも、現存する防災施設を維持管理して、災害時に全壊しないように補強して活用する重要性が改めて明確になったと私は考えている。

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