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関西に本社を移したりしない

損害保険ジャパン・櫻田謙悟社長が語る危機管理

2011年4月11日(月)

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 想定を超えた大災害が発生した際、経営者はどう動くべきか。東日本大震災は、多くの企業経営者に危機管理の重要性を改めて認識させた。企業の危機管理は、どうあるべきか。損害保険ジャパンの櫻田謙悟社長に聞いた。

(聞き手は蛯谷敏=日経ビジネス記者)

―― 東日本大震災の余波が今も続いています。今回の災害に対して、企業トップとして、どう対応しましたか。

櫻田 謙悟(さくらだ・けんご)
1978年早稲田大卒、安田火災海上保険入社。国際金融部門などを経て92年にアジア開発銀行に出向。帰国後、損害保険ジャパン、NKSJホールディングスの設立に携わる。2007年取締役常務執行役員、2010年7月から現職。

 櫻田 今回の震災を通して、改めて実感したのは、現場を知ることの重要性です。意思決定者が、決断するためには、可能な限りの情報を集める必要があります。その際に、最も重要なのは、現場を自分自身の目で確かめることです。

 震災が起きた3月11日、私は東京におらず、出張先の京都におりました。もちろん、あちらでも揺れたのですが、当初はその深刻さが分からなかった。その後、東北地方の惨状や首都圏の混乱ぶりの知らせを受けました。

 これは大変なことが起きたぞ、ということで、東京本社ではすぐに危機対策本部が立ち上がりました。私も、すぐに東京に戻るつもりでしたが、列車はすべてストップしていましたから、車や飛行機など、あらゆる手段を検討してもらいました。

 けれども、結局移動手段が確保できず、その日はホテルにとどまるしかありませんでした。部屋のテーブルに、固定電話や携帯電話を置いて、即席の対策室から指示を出しました。

 翌日、ダメもとで京都駅に行くと、新幹線が動いていました。そのまま、新宿の本社ビルに出向き、午前9時30分くらいにようやく危機対策本部に到着しました。

 ビルはエレベーターが停止中でしたから、社長室まで非常階段で上がりました。途中、壁がところどころ剥落しており、むき出しになったコンクリートを見たとき、「本当に大変なことが起きた」と感じたのを覚えています。

 東京で前日から指揮を執っていた幹部から、震災の報告を受けました。当社の東北地方の状況も含めて。そして、事態がおぼろげながら分かってきました。

 その時に、これは本社にいるだけではダメだと考えました。

―― 現地入りを考えたのですか。

 櫻田 先ほども申し上げましたが、想定外の緊急事態が発生した時、決断するために必要な情報を集めることが重要です。ところが、今回は上がってくる報告からでは、分からない、とてつもない状況になっているのだろうということは、直感的に分かりました。それを、実感するためには、自分の目で現場を見るしかありません。

 もちろん、周囲からは猛反対されました。トップがすぐに被災地に入るのは危険だということもありますし、現地の社員に対するパフォーマンスにとられかねません。かえって、現地スタッフの迷惑になるという、もっともな声もありました。

 しかし、想定外の緊急事態ほど、自分の目で確かめることが重要だという考えは揺るぎませんでした。それが、私にとっては最大のリスク管理だと考えました。

現地社員には視察を知らせなかった

 周囲を説得し、すぐに支社のある仙台市に向かう準備を整えてもらいました。ところが、ここでも移動手段に苦労しました。当初はヘリコプターで入ろうと思っていましたが、すべて埋まっている。それで、どんなルートでもいいからと、無理を言って検討してもらいました。

 現地の本部長にも、私が行くことは社員にくれぐれも知らせないようにとお願いし、あくまでも現地の情報収集が目的であると伝えました。

 結局、新潟県から車を借り、山形県を経由して仙台市に入りました。途中、給油待ちの自動車の大行列を目にしましたし、崩壊した家屋や建物が延々と並ぶ風景が続きました。本当にひどい状況です。言葉が出ませんでした。

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「関西に本社を移したりしない」の著者

蛯谷敏

蛯谷敏(えびたに・さとし)

日経ビジネス記者

日経コミュニケーション編集を経て、2006年から日経ビジネス記者。2012年9月から2014年3月まで日経ビジネスDigital編集長。2014年4月よりロンドン支局長。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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