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一流演奏家の「言葉の裏」を読む

ベルリンで活躍するバイオリン職人

  • 安西 洋之,中林 鉄太郎

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2011年4月13日(水)

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 昨年10月より「ローカリゼーションマップ」の連載がスタートした。サブタイトルは「異文化市場で売るためのモノづくりガイド」。翻訳やソフトのローカリゼーション産業やコンテンポラリーアートも取りあげたが、基本的にはモノが中心だった。

 この4月からマイナーチェンジして新しい連載が開始する。「新ローカリゼーションマップ 海外を目指す人に贈るガイドブック」。モノもとりあげるが、人やサービスも対象にしていく。旧連載の最終回でも触れたが、結局のところ、ローカリゼーションに際して、人の考えや判断を見極めることが、きわめて重要なテーマだからだ。しかし、それを信条や思いという抽象的なことだけではなく、目にみえ、カタチのあるものを通じて伝えていきたいと考えている。

 第1回目は、ベルリンで弦楽器の修理・修復に取り組んでいる茅根健さん、31歳。この記事は、特に、この春、新社会人となった方たちに贈りたい。

カルテットとの運命的な出会い

安西:まずはバイオリン職人になった経緯を教えてください。そもそも大学はドイツ語学科で、オーケストラのメンバーでしたね。

茅根健さん

茅根:はい。大学卒業後、東京在住のアメリカ人楽器製作家のルイス・カポラレ(Louis Caporale)氏の下で2年ほど楽器製作の基礎を学びました。2004年にイタリアのパルマに渡り、巨匠の一人でもあるレナート・スコロラヴェッツァ(Renato Scrollavezza)氏の下で研鑽を積みました。シカゴの楽器店で出会ったカルテット(バイオリン2丁、ビオラ1丁、チェロ1丁のセット)が、レナート氏の下で学ぼうと思ったきっかけです。

安西:音ではなく、造形に惹かれたのですね?

茅根:カタチへの一目惚れでしたね。レナート氏のカルテットを見た瞬間、意識がそちらに引っ張って行かれるのが自分でも分りました。ディテールは決して綺麗ではないのですが、楽器として、全体の調和が非常に素晴らしかったのです。楽器1つだけでも並大抵ではありませんが、彼の作品はカルテットとしてもバランスが取れているんです。

 しかし、レナート氏の下での最初の2年間、何をしても認めてもらえませんでした。ショックでしたね。それこそ、日本で学んできたことを片っぱしから否定されました。それでも根気強く彼の下に通い続け、3年目くらいからでしょうか、彼の意見がポジティブになってきたのは。そのころからですか、もっと色々なことを知りたい、古い楽器に触れてもっと知識を深めたい、音楽家とのコンタクトを広げたい、と思い始めたのは。それで、イタリアを去ることを考え始めたのです。

安西:認められはじめたのに、イタリアから出たいと思ったのは、いわばステップアップの可能性を感じ取ったからなのでしょうね。

茅根:ええ。2008年に入ってすぐ、友人を介して知り合ったオランダの工房で2カ月ほど修理・修復の仕事を勉強させてもらうことになりました。その後も断られることを覚悟で、飛び込みでオランダやイタリア、ドイツなどで短期間ながら工房を転々としました。1年ちょっと、そういう旅を続けました。

安西:その旅も終えて、落ち着くことを考え始めたと。

ベルリンを活動拠点に据える

茅根:ベルリンの工房で雇ってもらえることになり、半年の試用期間を経て2009年11月に正式に職人として雇われました。そこで1年間働きました。今年の1月からは、同じくベルリンのアンドレアス・ケーギ(Andreas Kägi)氏のもとで修理・修復の専門家として働いています。アンドレアス氏はドイツ楽器製作者協会の会長を長年にわたり務めているので、そんな彼の下で働いていることを非常に誇りに思っています。

ベルリンの工房

安西:今の工房について、もう少し詳しく教えてください。

茅根:アンドレアス氏自身はスイスの出身ですが、工房(Geigenbau Andreas Kägi)の設立は約30年前のことで、ベルリンでも古株の部類に入ります。顧客には歴代のベルリンフィルのメンバーをはじめとする一流の演奏家が多くいます。他に例を挙げれば、ワディム・レーピン(Vadim Repin)氏、ベルリンを拠点に世界的に活躍するアルテミス・カルテット(Artemis Quartett)、ペーターセン・カルテット(Petersen Quartett)の第一ヴァイオリン奏者やベルリン放送交響楽団の第一コンサートマスターもいます。日本人では元ベルリンフィル・コンサートマスターの安永徹氏や五嶋みどり氏などです。

安西:30年で古株とは意外ですね。二代目、三代目という工房がないのですか?

茅根:100年以上、同じ看板の工房というのも存在します。ただ、そういった工房は減少傾向にあります。また、看板はそのままでも、経営が変わっているケースがかなり多いんです。例として、ハンブルグにあるヴィンターリンク(Winterling)という工房が挙げられますね。要するに、家業としての工房は少なくなっているということです。

安西:なるほど、「古株」と呼ばれるのは、そういう背景があるのですか。

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