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「放射能」でなく「放射線」の正体を知ろう

正しく怖がる放射能【1】

2011年4月12日(火)

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 世の中には「放射能」について平易に書かれた良書がたくさんあります。でもあえてここで、新しい解説を書こうと思ったのには訳があります。それは、大半の本が「放射能」というものありきとして、つまり「放射能前提」で書かれているのが良くないと思ったからです。

 なるほど、よく読むと正しいことが書いてある。けれども、しょっぱなから「放射能」に馴染みのない人には、いつまでたってもピンと来ない、よく分からない話が続くことになってしまいます。やれα(アルファ)線だ、β(ベータ)線だといわれても、宇宙人の言葉のようで実感が湧かなければ、読んだ後、内容が身につきません。

 テレビや新聞など大半の報道機関は、何か「当たり前」のような顔をして「プルトニウムから放射されるアルファ線」とか「ベータ線熱傷」などと言ったり書いたりします。しかし正直なところ、テレビのアナウンス原稿を作った人も、それを読み上げているアナウンサーも、「アルファ線」の実体が何か、「ベータ線熱傷」の「ベータ線」が何ものか理解しているか定かでありません。

 よく分からずに書かれた内容を、よく分からない人が読んで、正確に内容が伝わるわけがない、当たり前です。結果的に大半の視聴者には、お経のようにちんぷんかんぷんなイメージだけが残る。原発事故の直後はそういう放送や報道を数多く目にして、当初は出来る範囲で訂正をしようと思い、生放送で喋っているおかしな内容をツイッターでの修正を試みたりもしました。

 基礎のないところに応用の話をしても、土台がありませんから混乱に混乱を重ねるだけです。しかし皆が気になるのは緊急性の高い話題で、基礎的な内容だけ講釈しても右から左に抜けて残りません。今、気をつけるべき問題を扱いながら、基礎からおさらいし直すような、そういう「放射能の話」が必要だと思いました。そこで「今を生き延びるために必要」な科学の基礎的な内容を、数回かけて補ってみたいと思います。

 直接のご指摘やご質問があるようでしたら、私のツイッターにいただければ、お答えできるものがあると思います。よろしくお願いします。

「お勉強」と思えばリスクへ一直線

 皆が知りたいのは「情報」だ、「お勉強」は必要ない、という、なかなか度胸のあるコメントを目にしました。が、必要な事を整理もせずに情報を「判断」出来ると思うのは慢心というものです。そういう人から順に、無用なものを恐れ、必要な判断ができず危険にまっしぐらに近づいてゆくのが目に見えるような気がします。少なくとも物理の学生実験指導などすると、そういう実例を目にします。そもそも「お勉強」などと思った時点で、リスクに向かってまっすぐに直滑降しているようなものです。

 以下では、私が2002~03年度、東京大学工学部システム創成学科(旧原子力工学科)の3年生で担当した物性物理の入り口に、被曝量など保険物理の内容を加えて、必要なら中学高校の内容も補いながら、当たり前のことを当たり前に書くようにつとめて準備してみます。どんな最新情報が来ても理解のもとになる基本ですが、何かセンセーショナルな内容が書いてあるわけではありません(前回は「これから・・・」という序文相当の部分でした)。スキャンダルがお好きな向きにはお勧めしません。まじめに自分や家族の身を守るつもりのない方にはほとんど役に立たない基礎情報です。

 さて、放射能の話で誰もが気になるのは「健康」ですね。自分や家族、あるいは仲間の身体が放射能によって影響を受けたりしないか、「放射能」は目に見えないと言われるので、とても不安になります。そこで、私たち自身の身体から出発して、放射能を考えてみましょう。

「核」は我らの中にあり

 私たちの体を考えてみましょう。人間の体は器官から出来ています。頭、手足、目玉や耳といった外から見えるものもあれば、心臓、肝臓、肺、胃腸や脳など、体内で活動する臓器もある。この器官はすべて細胞が集まって出来ています。人間に限らず、生物の身体はすべて細胞が集まって成立しているものです。

 この細胞を1つ取り出してよく調べると、細胞の中に核と呼ばれるものがあり、その中に遺伝子が入っています。遺伝子の全体をゲノムと呼ぶこともあります。実際には細胞の核の中に染色体と呼ばれるものが入っていて、この染色体をよく解きほぐしてみると遺伝情報が書き込まれた巨大な分子だということが分かるわけです。すべての細胞はこの遺伝情報が書き込まれた遺伝子の中から、必要な部分を読み出して、私たちの身体を常に作ったり修繕したりしています。

 例えば指先に怪我をしたとき、消毒して薬を塗ってしばらくそっとしておくと傷が治っています。これはその部分で適切に細胞が遺伝情報を読み出して、元と同じ器官を修復するように働いているわけですね。指先の怪我を治そうと思っても、細胞は間違ってそこに、心臓や肝臓を生えさせたりはしません。心臓や肝臓を作るために必要な情報も、まるで巨大な辞書か電話帳のように、私たちのすべての細胞内のゲノムの中に収められていますが、普通は正しく情報が読み出されて、器官が正確に修復、再現されます(これがうまくいかなくなる1つのケースがガンにほかなりません)。

コメント86件コメント/レビュー

記事のみならず、コメントをつけてらっしゃる多くの有識さに心打たれました。あとは、この知的態度をどう社会の動きに効果的につなげていけるのか。”狼が来た”の回避に繋げることができるのか。真剣に考えたいと思いました。(2011/05/17)

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いただいたコメント

記事のみならず、コメントをつけてらっしゃる多くの有識さに心打たれました。あとは、この知的態度をどう社会の動きに効果的につなげていけるのか。”狼が来た”の回避に繋げることができるのか。真剣に考えたいと思いました。(2011/05/17)

私にとっては知っている内容ばかりでしたが、読むべき内容であり、今出すからこそ読まれる内容だと思います。個人的にはもう少し読みやすくできないものかなと思う部分もありますが、所詮好みの範疇。友人にも一読を勧めるつもりです。自分でここまで説明するのは大変なので・・・▼惜しむらくは、このレベルの解説本は過去にもありつつ顧みられなかったこと。興味がある今だからこそ読まれるのかもしれないという点で、今この文章を公開することの意義は深いと思います。なるべく早い完結を望みます。世間の興味が失われないうちに。(2011/04/18)

>原発から脱線しますが、アメリカはウランもプルトニウムも日本に住む民間人の頭の上に落として試してみた、ということでしょうか。そうですよソ連に対するパフォーマンスが第一で、実験は「ボーナスだった」らしいですけど。それを作るために使った、放射能を含んだ排水はこっそり川に垂れ流しました。(2011/04/17)

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