• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

放射能という“目に見えない恐怖”がもたらすストレスの脅威

市民が知りたい情報を伝えられないメディアの責任

2011年4月14日(木)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

 「はっきり言って、もう放射能のおかげで家族崩壊です。ストレスでおかしくなりそうですよ」

 こう切り出したのは、大手商社に勤める大学時代の知人の男性である。

 「被災している方のことを考えると、こんな不満はささいなものだと非難されるかもしれませんが」と彼は前置きしたうえで、次のように語った。

 「私には来月に5歳になる息子と、2歳半の娘がいます。娘は未熟児だったんで、いまだに同じ年の子供よりも体が小さい。だから妻は余計に、神経質になってしまいまして。水は買い占めるわ、大変でした。換気扇も絶対に回しません。息子も2時間以上は外出させないので、サッカーの練習にしても、終わっていなくても2時間たつと強制的にやめさせるんです」

 「僕は正直、やりすぎじゃないかって思うんです。息子だって、周りの子供たちはまだ練習しているのに、なぜ自分だけ帰らされるか分からない。子供なりに戸惑っている。でも、妻は『この子のことを守れるのは、私しかいない。周りから何と言われてもいいの』と一点張りで、何か僕が言おうものなら、たちまちけんかになってしまうんです」

あからさまにトーンダウンした放射能に関する報道

 実は、この話を知人から聞いたのは、先週の金曜日(4月8日)のことである。

 先週といえば、原発事故の発生当初は過剰なまでに恐怖心をあおり立て、その後は手の平を返したように、「大丈夫。問題ない」という言葉を繰り返したメディアが、放射能に関する報道熱をあからさまにトーンダウンさせていた時期である。

 それまでで最大の余震が襲来した木曜日の夜でさえも、「原発に異常はない」という報道を繰り返すばかりだった。

 そして月曜日。震度6弱の余震が福島を襲った。その数時間前には、福島第1原子力発電所の周囲20キロの圏外で新たに「計画的避難区域」を設定すると枝野幸男官房長官が発表した矢先の出来事だった。余震の直後にも、東京電力、原子力安全・保安院の会見が立て続けに行われたが、「問題なく、冷却注水も再開されている」とのことだった。

 火曜日には、チェルノブイリと同じレベル7まで引き上げるとの報道もあった。

 ところが、「で、ここで暮らす私たちへの影響は? やはり問題ないのか?」という類のものは数週間前に比べると明らかに少ない。「なぜ、今さら?」「説明が足りない」といった批判は報道されてはいるが、“目に見えない脅威”そのものに関する情報は、明らかに少ない。これが報道疲れによるものなのかよく分からないが、どうにも伝える“熱”を失っているように思えてならないのだ。

 原発の現在の状況は、当初やたらと言われた『最悪のシナリオ』ではないのかもしれない(何が最悪のシナリオなのか、最後まで分からなかったが)。しかし、少なくとも原発の状況は何ら改善されたわけでなければ、“放射能”という、目に見えない恐怖がなくなったわけでもないはずである。

根拠なき不安から高まるストレス

 むしろ時間の経過に伴って、不安感による心理的ストレスは高まっているのではないだろうか。

 地震、津波、原発、風評と4重もの被害がのしかかっている福島の方たちはもとより、「被災している方のことを考えると……」とためらいながらも、放射能という目に見えない恐怖に翻弄されている人たちがいる。

 特に子供を持つ女性の見えない敵への根拠なき恐怖心は、かなり高い。世間の放射能に対するある種の“慣れ”が、余計にそういった根拠なき恐怖に苦悩する方たちのストレスを高めているようにさえ思える。

 そこで、今回は、目に見えない恐怖について、考えてみようと思う。

コメント102

「河合薫の新・リーダー術 上司と部下の力学」のバックナンバー

一覧

「放射能という“目に見えない恐怖”がもたらすストレスの脅威」の著者

河合 薫

河合 薫(かわい・かおる)

健康社会学者(Ph.D.)

東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。産業ストレスやポジティブ心理学など、健康生成論の視点から調査研究を進めている。働く人々のインタビューをフィールドワークとし、その数は600人に迫る。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント投稿機能は会員の方のみご利用いただけます

レビューを投稿する

この記事は参考になりましたか?
この記事をお薦めしますか?
読者レビューを見る

コメントを書く

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

面倒くさいことを愚直に続ける努力こそが、 他社との差別化につながる。

羽鳥 由宇介 IDOM社長