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震災ウツを増幅する「復興のため…」という後ろめたさ

ストレス発散の場まで奪う“自粛”という圧力を押し戻せ

2011年4月21日(木)

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 震災ウツ――。またもや新しい用語が使われ出した。

 直接大きな被害を受けたわけではないのに、何となくやる気が出ない、何となく疲れやすい、何となく眠れない……。こうした「何となく調子が悪い」人が、東日本大震災が起きた3月11日以降に増えているのだという。

 「被災してもいないのに、調子が悪いだなんて。何を甘えたことを言ってるんだ!」

 実際に被災して、今も苦しんでいる方たちには、こんなふうにしかられそうな話ではあるが、被災した方々に心を寄せれば寄せるほど、気持ちがへこんでしまうのが、震災ウツ特有の症状でもある。

 毎日のようにテレビに映し出される津波の映像や被災した方々の様子。さらに余震に襲われるたびに、やるせない気持ちに襲われる。

 「あんなに大変な状況に置かれている人たちがいるのに、自分だけ楽しんでしまっていいのだろうか」

 「あんなに大変なのに、自分には何もできない」

 こうした申し訳ない気持ちや無力感から生じるイラ立ちが募っていくのだ。

ストレスが多い季節に重なる

 もともと3月はストレスの多い季節である。

 年度末で過労気味になる人や、人事異動などで急性のストレスにさらされる人も多い。木の芽時と言われるように、体調を崩しやすい時期でもある。

 昨年の3月は内閣府が「自殺対策強化月間」と指定し、「お父さん眠れていますか?」というキャッチコピーを掲げて、睡眠キャンペーンを行った月でもあった。

 「あれがたった1年前のことなのか?」と思えるくらい昔の話のような気がしてしまうのではあるが、内閣府担当大臣だった福島瑞穂氏が、新橋の駅前でサラリーマンたちにティッシュを配っていたと言えば、思い出す人も多いことだろう。

 ストレスの多い時期に重なった震災に伴うストレス。その雨に濡れてしまった人たちが、震災から1カ月以上たった今も、「何となく調子が悪い」状態から抜け出せずにいる。

 「がんばろう! ニッポン」という言葉を聞くたびに、「私はがんばっているのだろうか?」と妙なプレッシャーを感じ、被災者の方たちが聞いたら、「これ以上、何をがんばればいいのか?」と落ち込みやしないかと、ヒヤヒヤしたりもする。

 そこで今回は、「何となく調子が悪い」状態からの脱却法について考えてみようと思う。

夫のストレスがうつってウツ傾向になった友人

 数年前のことだ。友人が、「夫の代わりにウツになった」とぼやいていたことがあった。

 ウツといっても、正確にはウツ傾向。眠れない、だるさが抜けない、やる気が出ないといった症状が続くというもので、そのきっかけとなったのが夫の愚痴だったのである。

 とはいえ、愚痴そのものがストレスになったわけではない。愚痴を聞き、夫に共感するうちにストレスが伝染した。スピルオーバーという現象に陥ったのだ。

 実は、この現象こそが“震災ウツ”の正体だと考えられる。そこでまずは、夫のストレスがどうやって伝染したのかをお話しよう。

 「ダンナは昇進をきっかけに異動になった。異動先はずっと希望していた部署だったこともあって、最初はやたらと張り切っていたんだよね。それが半年たったころから、どうもストレス状態に陥っていたみたいで、毎晩、愚痴をこぼすようになったの。それまで愚痴なんてめったに言ったことのない人だったから、よほどストレスがたまっていたんだと思う」

 「で、ダンナは愚痴を言うと少しすっきりするみたいだったんだけど、正直な話、今度は聞いている私の方がストレスを感じるようになっちゃって。それである時、ついつい言ってはいけない一言を言ってしまったの。『そんなに愚痴ばかり言うんだったら、会社を辞めればいいじゃない』って。その瞬間、空気が凍りついた。最悪。言ってすぐに後悔したけど、もう遅かった」

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「震災ウツを増幅する「復興のため…」という後ろめたさ」の著者

河合 薫

河合 薫(かわい・かおる)

健康社会学者(Ph.D.)

東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。産業ストレスやポジティブ心理学など、健康生成論の視点から調査研究を進めている。働く人々のインタビューをフィールドワークとし、その数は600人に迫る。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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